47話 考察の結果?

 翌朝……俺が二度寝をして、惰眠を貪っていると……。


「うぎぁぁぁぁ——!!」

「うわぁぁ!!」


(なに!? 何事!?)


「マルス様、おはようございます」

「あっ、リン……おはよう。ところで、今のは?」

「どうやら、ライラ様が起きないようで……家臣達がライル様にお願いしたそうです」

「……なるほどね」


(俺とは違う意味で、姉さんの寝起きの悪さは半端ない)


「おそらく、魔法をくらったのかと」

「そっか、まあ平気だよ。ライル兄さんだし」

「そうですね」


 大体これですんでしまうのが、我が兄であるライル兄さんです。





 その後、朝食を食べ終え、部屋でのんびり考えことをしていると……。


 シルクが部屋へ入ってくる。


「マルス様、お出かけをいたしましょう」

「シルク?」

「調査を行いたいと思いますわ」

「うん?」

「ライラ様が仰ってましたわ。『私は調べ物をするから、マルスは現地で確認をして来て』だそうです」

「とほほ……やっぱり、そうなったよね」

「では、私は護衛としていきますね」

「ほら! いきますわよ!」

「うぅ……やだよぉ〜お家に居たいよぉ〜」

「昨日のやる気はどこへ?」

「うん、寝たら忘れた」

「もう! マルス様!」

「は、はいっ! 行きます!」


 渋々ながら、俺は調査へと向かうのだった。

 でも……ヒートの魔石を作っておいて良かった!




 まずは、庭にいる二人に声をかける。


「レオ、ベア、時間ある?」

「ああ、主人よ」

「へい、ボス」

「実は、二人に頼みがあって。獣人達に聞いて、俺の風呂とかに入ったら状態が良くなった人ととかいるかをね」

「ふむ……」

「は、はぁ……」

「うーんと……肌が綺麗になったとか、元気になったとかかな」

「うむ、理由はよくわからないが……。わかった、それを聞けば良いんだな?」

「そういうことです」

「へい、了解です」


 二人を送り出したら、俺達は人族が集まっている広場に行く。


 そしてみんなに聞こえるように……。


「はーい! みなさーん!」

「あっ! マルス様!」

「ありがとうございます! あったかいです!」

「我々にまで……感謝いたします!」

「いえいえ! これも皆さんが税金を納めてくれるからです!」


(どうやら、気に入ってもらえたみたいだね)


 昨日寝る前に魔石にヒートを込めて、ヨルさんやマックスさんに配ってもらった。

 お陰で、今朝は二度寝をしても許されたってわけですね。


「皆さんに質問があります! 俺のお風呂に入って体調が変わった人はいますか!?」


 ざわざわ……。


「おい、どうだ?」

「いや……まてよ……便が良くなったような……」

「そういや、母ちゃんが肌の調子が良いとか……」

「元気が出たやつもいるぜ?」

「でも、それってお腹いっぱいになったからじゃ?」


(なるほど……似たようなことはあったと。ただ、これじゃ良くわからないなぁ)


「そういうことですか」

「リン?」

「どういうことですの?」

「彼らは生活が改善しました。食事、休憩、希望によって。それのおかげだと思って、特に気にしなかったのでは?」

「あっ——なるほど!」

「一応、説明がつきますわね」




 その後も聞き取りをして……一度、館へと戻る。


「レオ、ベア、どうだった?」

「なんか、体調が良いとか」

「ただ、それがお風呂なのかはわからないと」

「まあ、そうだよね」

「ですが、可能性はあるかと思いますわ」

「ええ、そうですね。こんなに数が多いですから」

「そうだね……よし、とりあえず姉さんに報告するか」




 リンとシルクを連れて、姉さんの部屋に行く。


「あら、来たわね。それで、どうだったの?」

「実は……」


 一連の聞き込みを説明すると……。


「なるほどねぇ……面白いわね。じゃあ、質問ね……マルスは畑を耕したり、水をあげる時に何か特別なことはした?」


(特別なことかぁ……特にしてない気もするけど)


「強いて言うなら……元気になーれとか、大きくなーれとか思ってましたね」

「……そう……いや、でも……魔法とは元来そういうものよね……」


 ライラ姉さんはブツブツ言いだした。

 こうなるとなにも聞こえないので、しばらく待ってみると……。





 2分ほどで、姉さんが帰ってくる。


「まずは、魔法とは出す前のイメージが大切だと言われてるわ」

「ええ、そうですね」

「マルスは、作物が育つ過程を知っているの?」

「まあ……これでも書庫の虫でしたし」

「もしかしたら、その知識が作用したのかもしれないわ。あとは、純度の高い魔力ということかしら。ただの下級魔法の威力も高いし」


(……なるほど。農地の成長が早かったのは、俺の前世の知識によるかもしれないのか。あと、お風呂とかも……前世の温泉をイメージして魔法を使っているね)


「では、マルス様以外には使えないと?」

「どうかしらね? 私も試してみるわ。マルスほどじゃないけど、それなりに魔力純度も高いし知識もあるから」

「いや、そんな長居はできないんじゃ?」

「平気よ、まとまった休みを取ったから。少なくとも、冬の間くらいは」


(……あちゃー、兄さんが頭を抱えそうだね)






 その後、部屋に戻ると……。


「そういえば……マルス様、村々に訪問はしましたか?」

「へっ? ……してないよ?」

「……はぁ。仕方ありませんわね。マルス様は、この一帯の領主なのですよ?」

「えっ? この都市だけじゃないの?」

「ええ、小さい村々のまとめ役でもあり、税金を納めてもらわないといけません。というか、ヨルさんたちは見回りをしていると言っていましたわ」

「そ、そうだったんだ」

「マルス様も、一度は見回りに行ったほうがいいかと思いますわ。為政者の顔もなにもわからないと、民も不安になりますから」


(俺ってば、全然ダメだなぁ……そうだよね、顔もわからん奴とか怖いよね)


「なるほど……そっか、顔見せってことだね」

「ええ、そういうことです。土産物なんかあると、関係性が良くなるかと」

「土産物……ヒートの魔石は?」

「……少し贅沢ですが、マルス様の魔力ですし……喜ばれますわね」

「昨日、嫌ってほど作ったから数はあるし……今から行こうかな」

「あら、珍しいですね」

「まだ寒いから早い方が良いからさ」

「ふふ、相変わらずですわね」

「別に普通だよ。さて、そうと決まれば行こうか」


リンとシルク、それにレオとラビを連れて行く。


(人族と獣人族が仲良いところを見せるチャンスでもあるし)


 俺たちは、すぐに出かける準備をするのだった。

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