48話 戦い
準備を済ませたら、門の前に集まる。
「マルス様、この面子のわけは何ですの?」
「リンとレオは護衛で、ラビは勉強のため。あとは、俺とシルクが獣人族と仲良くしてるのを見せることかな」
「了解いたしましたわ。じゃあ、ラビ」
「は、はいっ!」
「私が教えますから、しっかり覚えますのよ?」
「はいっ!」
「オレは二人を守ればいいんすね?」
「では、私はマルス様の護衛をしますね」
「うん、お願い。まあ、問題は起こらないと思……ナンデモナイ」
「「「「????」」」」
四人が不思議そうな顔で、俺を見つめている。
(だって……どう考えてもフラグになるとしか思えないし)
もしかして……この考えこそがフラグ?
いや、そんなことはないはず!
不安を打ち払って、俺たちは都市を出発するのだった。
やっぱり——フラグだったァァァ!
ラビが、何か叫び声が聞こえるって言うから行ってみれば……。
「ゲギャ!」
「フゴッ!」
「ゴァ!」
村々を回って顔見せをしていたが、そのうちの一つが襲われているようだ。
ゴブリンにオークの群れ、それにホブゴブリン。
それらが二メートルある柵を越えようとし、村に入り込もうとしている。
(もう〜! 仕方ない! やるしかないよね!)
「レオ! 二人を頼んだよ!」
「へいっ! シルクさんにラビ! オレから離れないように!」
「リン! 行くよ! 俺の守りは任せるよ!?」
「はい! それが私の使命ですから!」
馬から降りて、リンと共に駆けていく!
「だ、誰か!?」
「数が多すぎる!」
(……衝撃波の強い魔法は使えない。村人を巻き込んじゃうね)
オリジナル魔法……これかな。
「ガトリングストーン」
名前の通り、連射式のように石の玉が飛んでいく!
「ゴキァ!?」
「グヘェ!?」
それらが、村に入り込もうとした魔物を貫いていく。
これで、ひとまずは安心だね。
「だ、誰だ!?」
村の一人が、俺に向けて声を上げる。
「リン! 説明してくる! 時間稼ぎをして!」
「了解です!」
リンが向かうのを確認し、村人に話しかける。
「貴方は責任者ですか?」
「は、はい! この村の村長です! あっ、貴方様は?」
(良かった、一応貴族の服を着ておいて)
「私の名前はマルスと申します。この地で、新しい領主を務めています」
「あ、貴方様が! ヨル殿から話は聞いております! ありがとうございます!」
(……うん? 俺は、特に何もしていないんだけど? まあ、話が早そうで助かるね)
「ただ今、顔見せを兼ねて挨拶をして回っているところです。とりあえず、あいつらを消しますので、村人には村の中央に集まるように指示してください」
「わ、わかりましたっ!」
俺はすぐさまに引き返して、リンの元に向かう。
さすがはリンだね、ほとんどの魔物がいなくなってる。
ん?……あれは?
何やら、フードを被った奴が数体いる。
「シネッ!」
「なっ!?」
そいつは、火の玉——魔法を放った!
「マルス様! スカルメイジです! 物理攻撃が効きません!」
「なるほど……あれがそうなのか」
「シネシネシネ……」
ブツブツと怨念を垂れ流しながら、魔法を放ってくる。
(魔法に弱く、魔力が使えない獣人の天敵ってやつだね)
「リン、俺の後ろに。たまには守らせてね?」
「マルス様……ふふ、そうですね」
すると……一斉に魔法を放ってくる。
「「「「「シネ!」」」」」
「死ぬのはそっちだよ——
俺の正面に、風と火の複合魔法による炎の竜巻が発生する。
それらが敵の魔法を飲み込み——奴らを包み込む。
「ァァァ!」
断末魔の叫びが聞こえ、それが収まった時……魔石だけが残っていた。
「うん、成功だね」
「す、すごい威力ですね……跡形もなく」
「ふふふ、日々進化しているのだよ」
すると、シルク達もやってくる。
「怪我はありませんの!?」
「ええ、大丈夫ですよ」
「うん、平気だよ。ただ、村人の中にはいるかもしれない」
「ほっ……良かったですわ。そうですわね、では行くといたしましょう」
その後、シルクが怪我人を治療していく。
ラビは、そこに包帯を巻いていく。
癒しの力とて万能ではないから、きちんとした処置が必要らしい。
「あ、ありがとうございます!」
「いえ、私はマルス様の命に従っただけですわ」
「マルス様!ありがとうございます!」
「ちょっと!?」
「ふふ、これで良いんですわよ」
(……うーん、むず痒い)
怪我人はシルク達に任せて、五十代くらいに見える村長に話を聞く。
ちなみに、リンとレオには周辺を警戒してもらっている。
「えっと、何があったんです? 普段から魔物が出るんですか?」
「い、いえ、定期的に兵隊の方が巡回してくださるので……」
(ほっ、良かった。兄上やヨルさん達がサボっていたわけではないと)
「それでは、いつもと違うと?」
「ええ、そうなのです。ついこの間、討伐をして頂いたので……まだ、出るタイミングではないと思いますし、ホブゴブリンやスカルメイジが出ることなんて初めてです」
(……うーん、原因は何だろう? 帰ったら、姉上に相談しないと)
「わかりました。ひとまず、巡回回数を増やすようにしますね」
「おおっ! ありがとうございます!」
「いえいえ、これも私の仕事ですから」
「噂などあてになりませんな! こんな素晴らしい方なんて! やっぱり、ヨル殿の言ってた通りです!」
「えっと……何を言ったので?」
「少しの間、税金を安くしてくださるとか! さらには、少しですが食糧まで頂きまして……マルス様は素晴らしい方だから、もう少し待ってほしいと言われました」
「そうだったのですね」
「ええ! マルス様なら、必ず辺境改革をするからと! 我々もそれまで頑張ります!」
「……ええ、わかりました。私に出来ることをやりますね」
(……そんなの、一言も聞いてないよ……なんか、嬉しいね)
その分のプレッシャーや、めんどくさい部分はあるけど……。
それでも……頑張ろうって思わされちゃうよね。
やれやれ……それでも、スローライフの夢は諦めないけどね!
諦めたら、そこで試合は終了とも言うしね!(byタプタプ先生)
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