42話 襲来?

 結局、その日は大事をとって休むことになり……。


 そのおかげか、翌朝起きたらスッキリしていた。


 というわけで、スローライフを目指してがんばろー……日本語おかしくない?





 というわけで、遅れた分の仕事をしていると……。


「な、なに!?」

「きゃっ!?」

「こ、これは……?」


 突然、物凄い爆発音が響き渡る!

 事故か!? 火事か!?


「都市の入り口の方です!」

「行きますわ!」

「ま、待って!」







 館を出て、走っていると……。


「ギャァぁぁぁ——!!!」


 そして、叫び声が……ライル兄さん?


「な、なんですの!?」

「魔物かな!?」

「わかりません! しかしライル様がやられるほどの魔物とは……」

「リン! 行くよ!」

「ええ!」

「危なそうだね。シルクは……」

「私も行きますわ!」

「……うん、そうだね」


 ライル兄さんが生きていれば、傷を癒してもらわないと……!






 俺たちが都市の入り口に近づくと……。


「ぐはっ……」

「つ、つえぇ……」


 ベアとレオが地面に倒れている——ところどころに火傷を負って。


「二人とも! 何かあったの!?」

「あ、主人よ……物凄い強い女が……逃げるのだ……グフ」

「ボ、ボス……奴の狙いはアンタだ……今、ライルさんが押さえて……早く逃げ……グフ」


 そのまま、門をくぐると……。


「マ、マルス……」


 切り傷だらけの兄上が、ヨロヨロと歩いてくる。


「ライル兄さん! 平気ですか!?」

「に、逃げるんだ……すまん、不甲斐ない兄貴で……グフ」


(ライル兄さんが、こんなにボロボロになるなんて、ライラ姉さんのお仕置きを食らった時くらいしか……あれ?)


 俺は、この時点で答えが出ていた。

 でも、それを認めたくはなかった。

 いや、会いたいとは思った。

 でも、それは今じゃない。

 その時、俺の頭の中には——使徒襲来のテーマ音楽が流れていた。


「ふふ、いたわぁ——マルス」


 俺が恐る恐る顔を上げると……魔女がいた。

 違った——ライラ姉さんが見たことない顔で微笑んでいた。

 相変わらず、ハリウッド女優のようなスタイルと美貌の持ち主。

 その姿は黒のローブと帽子をまとい、ニヤァと笑っている。

 つまり、結局は——魔女だった。



「ね、姉さん?」

「シルク様! 避難します——失礼!」

「へっ? きゃあ!?」


 シルクを抱えて、リンが飛び去った瞬間に——。


「ファイアーボール」


 ゆっくりとだが……火の玉が、俺に向かって飛んでくる。


「アクアウォール!」


 水の壁を出現させ、それらを溶かす。


「まあ! 寸止めするつもりだったけど……本当だったのね」

「姉さん! いきなり何するのさ!?」

「ふふ、マルス……この姉さんに隠し事するなんて——お仕置きが必要ね?」


 その瞬間、俺の脳裏に蘇る。


(姉さんは優しい——普段は。ただ、嘘が嫌いで……怒ったら修羅と化す)


 何より、ブラコンである前に——魔法バカである。


「ヒィ!?」

「待ちなさい!」


 俺は逃げようとしたが……。


「ちょっと!? なんで門が閉まってるの!?」


 引き返したら、すでに門が閉じられていた!


「マルス様ー! 頑張ってくださいませー!」

「マルス様! 気の済むまでお相手してください! 都市に被害が出ないように!」

「マルス! ファイトだ! ライラ姉さんを止められるのはお前しかいねえ! 安心しろ——骨は拾ってやるぜ!」

「この……薄情者〜! 開けてよぉ〜!」


 その時——。


「マルス? どうして逃げるの?」

「ヒィ!? ね、姉さん! 違うんだ!」

「何が違うの? ねえ? 教えて?」

「えっと、俺は魔法を使えるけど、それは嘘をついていたわけではなくてですね……」

「そんなことはどうでもいいわ——遊びましょ?」


 その目は虚ろで、とても話を聞いてくれるようには見えない。

 まるで、ヤンでる人の顔だ。


(に……逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ——ていうか逃げらんないよぉ〜!)


「く、糞オォォォ——!! わかったよ! やりたくないけど相手するよ!」

「まあ! そう来なくちゃ! ウインドスラッシュ」

「アースランス!」


 風の刃を土の槍で相殺!


「ファイアーアロー」

「ウォーターアロー!」


 次々と魔法を、魔法で相殺していく!

 姉さんは数少ないダブルだ。

 風と火を高いレベルで使えると言っていた。

 それにしても……。


(詠唱が速くない? 威力も俺と変わらないの!? 俺のチートって何!?)


 あの天使が嘘をついた!?

 ……いや、違う——練度がまるで違うんだ。

 相手は約二十年、俺は約二十日……そりゃ、違うわ。


「ふふ……楽しいわぁ——どんどんいくわよ?」

「……いいですよ、好きなだけ相手します」





 その後、次々と魔法を撃ち合い……。


「いいわ……凄くいい……マルス、最高の気分だわ」

「そうですか。俺は全然ですけど」

「ふふ、そんなこと言わないで———これで終わりにするから」


(姉さんの空気が変わった——大技がくる)


「わかりました。では、お好きにどうぞ」

「嬉しいわぁ——フレア」

「嬉しくないです——アイスヘル」


 大玉転がしほどの火球と、氷塊がぶつかり——爆発する!








 ……イテテ。


 風圧で飛ばされた……。


 そうだった……冷たいモノと熱いモノがぶつかったら爆発するんだった。


「マルス」

「ヒィ!?」

「すごいわ! マルス!」

「へっ? ……いつもの姉さんだ」

「もう! なんで言ってくれないの!?」

「わ、わかったから! 苦しいから!」


(おっぱいに殺される! く、苦しい……!)


 ……あぁ、意識が飛んでいく。


 ……悪寒の正体は……これだったんだね。


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