第32話 ラブコメ回?
……待て待て、色々ありすぎる。
「えっと……」
俺は王都を出る前に婚約破棄されて……。
それは俺のせいであって、シルクには落ち度は全くない。
故にオーレンさんは、俺とシルクを婚約破棄をして……。
うん? それで、なんで再び婚約させようとするの?
というか、シルクが相応しくないってどういうこと?
「そのですね……」
「い、嫌ですの!?」
「ま、待って! ねっ!?」
ちょっと待て! 俺、今更だけど……こんな可愛い子と婚約者だったの!?
顔を近づけて迫ってくるシルクは……とても可愛い。
「じー……」
「マ、マルス様?」
ぱっちりした透き通る青い目、その丁度よく丸みを帯びた輪郭。
銀髪は丁寧に整えられ、キラキラと光っているかのようだ。
体型も出るところは出て、引っ込むところは引っ込んでるタイプだ。
つまり……前世では、お目にかかけれないレベルの美少女だ。
おっぱいも大きいし、おっぱいも大きい……大事なことなので二回言います。
「うぅー……恥ずかしいですわ……」
「ま、まずは説明を要求します! オーレン殿!」
「ああ、そうですな。シルク、座りなさい」
「は、はい……」
そう言って、俺の隣に座る。
あれ? さっきはオーレンさんの隣だったのに?
しかも、なんか近いんですけど?
甘い香りがするんですけど?
もっと言えば——腕を組まれてムニュンってなってるんですけど?
「では、簡潔に説明しましょう。国王陛下に頼まれまして……マルス様が、この地で何か実績を残したなら婚約破棄を考え直してくれと。さらには。この私に頭を下げようしたので、流石にお止めしましたがね」
「ロイス兄さんが……そうでしたか」
ロイス兄さん……昔から俺に厳しくて、いつも小言を言われてたっけ。
でも、今ならわかる……きっと親代わりのつもりで厳しく接していたんだろうなぁ。
今度会ったら、きちん謝らないと。
だって、俺のために頭を下げようとしてくれたんだ。
「今考えると……国王陛下は、マルス様を信じていたのでしょうね。いやはや、私もまだまだですな」
いや、それはないかと……めっちゃ、怒られてたし。
「ハハ……ソウデスカ」
「そして、この短期間の成果でわかりました。シルクの見る目が正しかったと。シルク、すまなかったな」
「ふふ、わかってくださいましたか」
「ああ、我が娘ながら見事だ。これなら、娘を任せられる」
何がなんだがさっぱりわからないが……とりあえず、俺は流されるままにしようと思う。
だって……俺だって、出来るならシルクに側にいて欲しいし。
「それで、どうですかな?」
「えっと……シルク」
「は、はぃ」
「その……また、よろしくね」
だ、だめだ……! 前世も含めて俺の恋愛スキルは皆無だった!
少しも気の利いたことが言えない!
「はいっ! うぅー……」
「な、泣かないで! ねっ!?」
「グス……」
ど、どうすれば正解!? 助けて! ○ラエもーん!
「ほら、マルス様」
「リンえもん!」
「はい?」
「い、いや!」
「そこは、頭を撫でればいいのですよ」
「な、なるほど……」
泣きじゃくるシルクの髪を優しく撫でる。
うわぁ……きめ細かで、傷みなんか一切ない。
サラサラで、ずっと触っていられるや。
「あ、あのぅ……もう、大丈夫ですから」
「おっと、ごめん。つい触り心地が良くてさ」
「……たまにならいいですわ」
あれれー? やっぱりおかしいぞー? 普段なら、ツンツンされるのに……。
「コホン!」
「ご、ごめんなさい!」
そうだった! 父親の前だった!
「いえ、仲直りしたならいいのです。少し複雑ですが……さて、では私は帰るとしましょう」
「えっ? 泊まっていかないのですか?」
「ええ、色々見たい気持ちもありますが……本来の視察担当はライル様ですから。先ほども言いましたが、私は婚約者に相応しいか確認に来ただけなので。まさか、その逆のことを思うとは思いもしませんでしたが」
「ですが、一泊くらいは……シルクもいますし」
「ありがたいのですが、私も領地を長く空けるわけにはいかないのです。何より、私は恥ずかしい。自分では知らず識らずのうちに、民や奴隷を見下していたのかもしれません。マルス様のようにはいかないと思いますが、私も色々とやってみようと思います」
「貴方がやってくれるなら、これほど心強いことはありませんね」
「それと先程も申しましたが、シルクは置いていくのでどうかよろしくお願いします」
「……はい?」
ん? 今、なんて言った? そういや、さっき置いていくとか聞いたような。
色々ありすぎて、追いつかないよぉ〜。
「シルク、我が家の者として恥ずかしくないように。何より、強力なライバルがいるんだ。今のままでは、彼女に負けてしまうだろう?」
その視線は、リンに向けられていた。
「いえ、ご安心下さい。私は、シルク様を応援してますので」
「私はリンと仲良しなのですわっ! た、たしかに羨ましいですけど!」
「なるほど、それは良かった。では、どうする?」
「やりますの! もう——マルス様から離れません!」
「お、お、落ち着いて!」
ギャァ——!? 押し付けないでくれぇ!
「そういうわけなので、よろしくお願いします。ご安心下さい、シルクには私の教えを叩き込んであります。きっと、マルス様の力になってくれるかと」
「わ、わかりました。責任を持って預からせて頂きます」
「ええ、お願いします。私の、たった一人の娘ですから」
そうだった……早くに妻を亡くしたこの方には、シルクと後継のお兄さんしかいない。
その後、門の前にて見送りをする。
「オーレン、兄貴によろしくな」
「ええ、ライル様」
「お父様に万が一などないと思いますが、気をつけてくださいね」
「ふふ、そうだな。ああ、気をつけよう」
そうだった……この人は剣も魔法も使えるハイスペック人間だったね。
本来、護衛なんかいらない人だよね。
「さて、マルス様……少しお耳を」
「え、ええ……なんですか?」
「あんなことは言いましたが、これは話が別です——結婚するまでは手を出してはいけないですからね?」
「は、はいっ!」
その声は低く、地の底から聞こえるかのようだった……おしっこちびるかと思った。
オーレンさんを見送ったあと……。
「マルス様? 何を言われたんですの?」
可愛らしく、首をコテンとかしげるシルクを見て……。
はぁ……これはこれで、中々大変そうだなぁ……とほほ。
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