第14話 三人の仲間ができました

 ……なんか、俺がさせてるみたいで嫌だなぁ。


「リン、その人達は……なんで土下座してるの?」


「私はしない方が良いと伝えたのですが……どうしてもと言うので」


「そっか……うん、とりあえず立とうか。君たちのことを教えてくれるかな?」


 俺がそう言うと、三人が一斉に立ち上がる。

 全身が薄汚れていて、少し臭いけど……彼らだって好きでそうしてるわけじゃない。

 そうだった……お風呂問題もあったね。


「じゃあ、君から行こうか」


「は、はいっ! わたしは犬族の獣人です! 貴方様のおかげで、少しだけ元気になりました! ありがとうございます!」


 元気よく挨拶してくれたのは、セミロングの白髪で、犬耳の少女だった。

 可愛らしく人懐っこい顔をして、尻尾を振っている……可愛い。

 多分、年齢は俺より少し下かな? 身長は150前後ってところか。

 うむ、素直そうないい子だ。


「あれ?名前は?」


「な、ないです……ごめんなさい」


「マルス様、奴隷には名前がありませんから」


「あっ、なるほど。まだ、誰も買い取ってないってことか」


「あ、あのぅ……」


「ああ、ごめんね。リン、確認するけど……この三人は君が見込んだんだよね?」


「ええ、私自身の目で見て、使えると判断しました」


「なら、問題ないね……ひとまず、君たちは俺が買い取るから」


「ふえっ?」

「お、俺を……?」

「ほ、ほんと……?」


「うん、とりあえずね。じゃあ、犬耳の君は——シロだ」


 尻尾と髪が白いし、犬と言ったらこれかな……流石にポチとかじゃ可哀想だし。


「シロ……わたしの名前……うぅ……嬉しいよぉ」


「ふふ、良かったですね。これから、私が指導しますからね?」


「は、はいっ! よろしくお願いします!」


 ふむ……どうやら、自分の後継者に選んだのかな?

 見た目は細っこいし、弱そうだけど……そういや、リンも最初はそうだったっけ。


「えっと、次は……背の高い君だね」


「俺は獅子族の者で御座います! お腹いっぱいにしてくれた貴方に感謝を!」


 二メートル近い身長に、痩せてはいるが引き締まった身体。

 金髪は量が多くボサボサで、まるでたてがみのような感じに見える。

 顔は精悍で、彫りが深いナイスガイって感じ。


「そっか、少しでも元気になって良かったね。じゃあ、君の名前はレオだね」


 ウンウン、ライオンといったらこれしかないよね!


「あ、ありがとうございます! オォォォ——!」


「うわっ!?」


「貴方——静かに」


「す、すみません……」


「いえ、嬉しいのはわかりますから」


「は、はぃ」


 すごい雄叫びだったなぁ……それにしても、レオがブルブルしてる?

 俺が来る前に何かあったのかな?


「じゃあ、最後は君だね」


「ひゃ、ひゃい! イタッ!?」


 ……今、舌を噛んだね。ドジっ娘かな?


「はい、落ち着いて。君は?」


「え、えっと……兎族の者です……昨日は、ご飯をありがとうございました……」


 ……リンを疑うわけじゃないが、この子で平気か?

 気弱そうだし、目を合わせないし……いや、リンを信じよう。


「いえいえ。じゃあ、君はラビだね」


「ラビ……わたしの名前……うわーん!」


「ふふ、良かったわね。貴方には期待してる」


「が、頑張りましゅ!」


 長さのある青い髪の女の子で、長いうさ耳が特徴的だ。

 身長も小さいし、多分十歳くらいだろうね。

 多分、将来は美人さんになりそうな顔立ちだ。

 ……噛んだことはスルーしておこうね。


「この三人が、私が選んだ者です」


 ……その瞬間、俺の頭の中でファンファーレが鳴る。


「仲間ができました! テレレレッテッテレー!」

「はい?」

「ごめん、リン。どうしても言いたかったんだ」

「そ、そうですか」


 視線を感じたので見ると……。


「変な人……」

「変わったお方のようだ……」

「びっ、びっくりしたぁ……」


 仕方ないじゃない……こちとらドンピシャ世代だったんだから。


「コホン! では、このメンバーで出発しようか」

「貴方達、説明はしたから平気ね?」

「ぼ、僕は匂いを感じたり、食材を集めます!」

「俺は後ろにいて、いざという時はマルス様を身を呈してお守りする!」

「わ、わたしは、音を聞きましゅ! あと、気配を察します!」


 なるほど……役割分担って感じかな。

 ゲームでも、バランスが大事だし。






 その後、軽食を食べ……森の中へと入っていく。


「こ、怖いよぉ〜」

「大丈夫ですよ、私が付いてます」

「この感じ……久々だせ」

「うぅー……何も出ないといいなぁ……」

「いや、出ないと困っちゃうからね?」


 シロとリンを先頭に、俺とラビ、後ろにレオが一列に並ぶ。


「リン、いざという時はどうするの?」


「私がマルス様を担いで走ります。レオは二人を抱いて走ります。この人数なら、いざという時逃げるのも楽ですから」


 なるほど、それもあってこの編成なのかも。





 その後……進んでいくと。


「あっ、これ食べられますよ?」


「なるほど、では持っていきましょう」


「俺には、只の草にしか見えないけど?」


 どう見ても、その辺に生えてる雑草みたいだ。


「この子の鼻は、おそらく私より効きます。大丈夫ですよ」


「ま、間違ってたらごめんなさい」


「ううん、俺の方こそごめんね」


「あっ——言ってた通りだぁ」


「うん?」


「や、優しい方だって……奴隷にも、ふつうに接するって」


「リン?」


「私は人柄をお伝えしただけです」


 何を言ったか知らないけど……むず痒いなぁ。



 その後も、その子は色々な物を見て……食べられると言って、採取していく。


「なるほど……」


 犬族は嗅覚が優れているから、食べられるモノが感覚的に判別できてるのかも。


「あっ! き、来ちゃいますよ!」


 ラビがそう言った後、すぐにガサガサという音がする。


「各自! 戦闘態勢へ!」


 そして……ゴブリンと、オークが現れるが……。


「シッ!」

「オラァ!」

「ウインドカッター」


 次の瞬間には、敵は全滅していた。

 リンが斬り込み、レオがブン殴り、その隙に俺が魔法で仕留めていく。

 理由は簡単で、事前に戦闘準備をすることが出来たからだ。

 はっきり言って、俺に不足しているのは戦闘経験だ。

 魔物や獣が出ればびびって、手元が狂いそうになるし……。

 でも、先にわかっていれば、少しはマシになる。

 さらには、レオが隣にいることで安心感がある。


「なるほど……」


 リンの狙いがわかってきたかも。

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