第26話 最後の決闘

「こ、こんなの……イカサマだ!」




 決闘に敗れ、ボロボロになったボーボが、クロナに向かって叫んだ。


 俺も同感だ。でなければ、あんなに都合よくスマンソ神が揃うわけがない。




「イカサマ……それは、あなたがしたことでしょう? ボーボ・ボーイ?」




 クロナはしかし、不敵に笑う。


 そして、ボーボのデュエル・バンドにセットされたカードを抜きだした。




「あ、ああ!?」




「モンチャーカードを場にセットすることは不可能。だけど、どうしてあなたの場には、そのモンチャーカードが、セットされているんでしょうね……、ボーボ・ボーイ?」




 なるほど……、あまりにも出来すぎと思われた初手には、そういうカラクリがあったか。


 ……これが人類最強のデュエリストの正体か。


 素直にクソです。




「ぐ、っく……くっそー!!! 覚えてろよー!」




 ボーボは尻尾を巻いて逃げた。




 その背中を見送ってから、クロナは口を開いた。




「さて、それでは……次の相手は誰かしら?」




「クロナよ、我もそろそろ暴れさせるがよい」




「私も、このまま見学は嫌ですよ」




「すっげーだぞ!」




 そして、ハナ、アオイ、アカリと続いた。




「くそ、イカサマ野郎を倒したくらいで、調子に乗るんじゃねぇぞ!」


「野郎ども、デッキの準備はいいな!」


「応とも!」




 ギャラリーどもははしゃいでいた。




「ふん、まどろっこしい。……全員まとめて相手をしよう」




 ハナが言った。




「くっそ、舐めやがって! おい野郎ども、こいつらをぶち殺すぞ!」


「応とも!」




「「「「決闘デュエル!!!!」」」」




 そして、売り言葉に買い言葉。


 5000対4の変則決闘が幕を開け――




「【スマンソ・スンマセン・ヒップフレイム!!】」




 初手【スマンソ神】を決められて、まとめて葬り去られた勇者モブたちだった。




 おー、よっわwww




「残るは……魔王様と、女勇者だけ、ですよ」




 挑戦的な視線と言葉。


 それらを受けても、特に俺は動じることはないのだが。


 勇子は、彼女らの脅威に晒されて、震えている。




 ……いや、少しおかしいのでは?


 確かに三姫臣とハナは、魔族の頂点に立つ強者。


 だが、レベル自体は勇子と同じ6のはず。




 ただの一睨みでここまで圧倒的な力の差を示すのは、一体なぜ……?




 そして、オジサンはいつの間にか【スマンソ・スンマセン・ヒップフレイム】を食らって敗北をしていた。決闘には参加していないはずなのに、一体なぜ……?




 と、いうわけでいつもの、入りまーすwwww!!!




「【余の命に従えオーダー】ステータス・オープン!」




 びしょびしょきゅるるん!!!




 不思議なSEが、耳に届いた!




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




クロナ


               ☆☆☆☆☆☆☆




         (*’ω’*)




攻撃力 2500  |  攻撃力・守備力


守備力 2100  |  最高クラスの魔族。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




ハナ


                ☆☆☆☆☆☆☆




            (^O^)




攻撃力 2400   | パワーは上級!


守備力 2000   | 超レアハナだ!




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




アオイ


                  ☆☆☆☆☆☆☆




         (´Д`)




攻撃力 2100   | 守備力は


守備力 2800   | なんと魔王以上!




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




アカネ


                   ☆☆☆☆☆☆☆




        (≧◇≦)




攻撃力 2300  |  すっげー、


守備力 2100  |  だぞ!




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~






「なんだと……全員、レベルアップしている、だとぉ!?」




 全員がレベル6から、星7にレベルアップ!? 


 一体、どんなレベリングをしたらこうなるんだ?




「あら、魔王様……お気づきになりませんか?」




 クロナが怪しげな表情で言う。




「……何をした?」




「ご主人様、我らはただ、遊戯に興じていただけ。そして、目覚めたのです」




 ハナが不敵に笑う。




「最強のスキル」


「遊戯支配(ゲームマスター)をだぞ!」




 アオイとアカネが言う。


 アオイのセリフが短いんだぞ!




「遊戯支配(ゲームマスター)だとぉ!? いつの間に、そんなスキルを……!?」




 本気を出さずに、ずっとだらだらゲームをしていただけのお前らが、そんな大層なスキルを手に入れられるはずが……はっ!




 俺の表情を見たクロナが不敵に笑った。




「気づかれたようですね。そうです、私たちはだらだらゲームをすることで経験値を荒稼ぎし……レベルが上がり、スキルも身に着けていたのです!」




「あ、そっか、ふーん」




 どや顔のクソどもに、俺は興味なさそうに答えた。


 ……とりあえず、ぶっ飛ばす!


 そのためには……奴らのイカサマを見破る必要があった。




 が、そこは既に見破っている・・・・・・・・。




「……私もやるわ、魔王」




 思いもよらないところから、参戦の声が上がる。


 震える声で言う勇子だった。




「無理をするな、いくらお前でも、あいつらのプレッシャーは相当に厳しいだろうに」




「無理? ……笑わせてくれるわ。こんなの、私とあんたがこれまで一緒に破ってきた数々の困難に比べたら、どうってことない……でしょ?」




「ふん。そうだな」




 と言いつつ、そんなことあったっけな? と思う俺。




「……魔王様は、人類に与する、ということでよいのですね?」




「ふん、見くびってくれるな。……だが、俺の真意を測ることなど、全くやれやれ。いくら三姫臣といえども、難しかったか……」




 俺がここぞとばかりにやれやれを披露すると、だ。




「ご主人様、それは一体どういうことでしょうか?」




 ハナも怪訝そうに問いかける。


 俺は一言答える。




「説明する必要はない。ただ、この勝負に俺が勝てば……すべては、俺の思う通りになる。……それだけなのだ」




「……それは無理ですね。スキル【遊戯支配】は、すべての勝負をゲームで決めることができるスキル。そして、ゲームにて勝利するスキル。まさしく、全能と言えるスキルなのです」




 勝ち誇る三姫臣とハナ。


 絶対、全能は言い過ぎぃー!!




「なるほど、そうか……ならば俺もその力を手に入れるとしよう。【創造(クリエイ)】!」




「……さすがは、魔王様ね」




「魔王様、すっげーだぞ!」




 アオイとアカリが、輝きに包まれる俺に対していった。


 そう、俺は今【創造】のスキルを用いて、新しい【スキル】を創造した。


 そのスキルとは、もろちん……あ、ちがった。


 もちろん……。




「【遊戯支配】、素晴らしいスキルだ。さて、ゲームを始めよう」




「……【遊戯支配】を【創造】にて手に入れた?」




「流石はご主人様」




「しかし、あまり調子に乗らないことですね、魔王様。……負けた時、恥ずかしくなってしまいますよ?」




 クロナとハナが交互に、ポーカーフェイスを気取りながら、そんなことを言う。


 が、視線がきょろきょろ動きまくっていることから、強がりなのはモロバレだった。




 とりま、この場にいる全員が「僕の考えた最強のデッキ」をシャッフル!


 三姫臣とハナのシャッフルは、さすがは7つ☆の高レベルというべきか、高速で行われていた。


 あまりにも早いシャッフル。


 俺じゃなきゃ、その違和感を見逃しちまうね。




 そして彼女らはデッキを、デュエルバンドにセット……




「待つのだ!」




 しようとして、俺が声を発して静止した!




「「「「!!!!」」」」




 俺の言葉に、動揺を隠せずにいる三姫臣とハナ。


 唯一、勇子だけ呆けた表情で俺を見ていた。




「……必ず初手に【スマンソ神】を揃えるには、どうすればよい? 答えは簡単だ」




 三姫臣とハナは、額に汗をかく。




 俺はクロナからデッキを取り上げ、そしてデッキの上から7枚のカードを分け、そしてそれを固定したまま器用にシャッフルをしなおす。




「いつから、気づいて……」




 顔面蒼白のクロナがつぶやく。




「初手に来る7枚のカードは、シャッフル中親指と小指で慎重に固定する。そして、最後のカットで……一番上に乗っける。すると、どうなる?」




 俺の問いかけに、「あっ!」と、声を上げる勇子。




「必ず、初手に【スマンソ神】を持ってくることができる……!」




 シャッフルを終えた俺は、デッキの上からカードを8枚ドロー。


 すると、初手には【スマンソ神】が揃っていた。




「これが、このゲームの必勝法、というわけだ」




 悔しそうに歯噛みする三姫臣とハナ。




「デッキカットは、こちらでさせてもらう。文句はないな?」




 しぶしぶ、といった表情で頷いたクソども。


 そうして俺たちは互いにデッキを交換して、カードをシャッフルした。




「簡単なイカサマだな」




 心底つまらないネタだった。




「簡単だなんて、そんな……あんな高速シャッフルでそんなイカサマを見破れるのは、魔王だけよ……」




 勇子は感心したように言う。




「……惚れなおしたか?」




「も、もうっ! ばか!」




 顔を真っ赤にした勇子が言う。




「……初手【スマンソ神】を封じただけで、良い気にならないことです、魔王様」




 分かりやすく焦る馬鹿ども。




「……イカサマをあばいて上機嫌なのはいいですが、勝ったつもりになるのは些か早すぎるのでは?」




 クロナが負け惜しみのように告げる。




 その通りだ。だが、だからこそ……面白いではないか。


 先がわからないのがゲームの醍醐味だ。


 故に……面白い!




「そうかもしれないな。だが、これで対等な条件」




 俺はこの場にいる決闘者たちに視線を向けてから、




「……さぁ! 存分に【決闘グルイ】ましょう!?」




 転生前に影響を受けたマンガからセリフを拝借して、決めるのであった……!




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