第39508話 本当のスマンソ
「……イカレてるっ!」
クロナが乗ってくれたので、俺は嬉しかった。
そして、全員がデッキからカードをドロー。
初手が揃う。
「先行は頂きま……」
「このゲームにはなぁ……必勝法がある」
クロナの言葉を遮り、俺はつぶやく。
「「「「あきや魔王さん!?」」」」
ノリノリの三姫臣とハナ。
「そう、それは【スマンソ神】を初手でそろえることだ。そうすることで、ゲームは始まらずに終了となる」
「しかし、それはイカサマをして初めて成り立つ必勝法」
「デッキシャッフルは互いに入念に行ったはず……」
「すっげーだぞ!」
ハナとアオイとアカリが続けざまに言う。
「それはどうかな?」
俺は楽しくなって、笑いをこらえることができずにいた。
動揺する三姫臣とハナに7枚の初手を――開示する!
「これが、答えだ!」
開示した俺の手札には、【スマンソ神のミギチクビ】【スマンソ神のヒダリチクビ】【スマンソ神のちん○】【スマンソ神のチクビとちん○以外】の四枚のカード!
「【スマンソ神】が手札に揃った時、ターンプレイヤーは決闘に勝利する!」
俺は高らかに宣言。
すると、小汚いおっさんである【スマンソ神】が、その姿を現した!
「そ、そんな……」
「どうして、こんなことが……」
「ありえない、さすがは、魔王様ね……」
「すっげーだぞ!」
クロナとハナ、アオイにアカリが絶望の声を漏らした。
「この余に逆らった仕置きだ。神の怒りの裁きをその身に食らうが良い。……【スマンソ・スンマセン・ヒップフレイム】!!!」
小汚いおっさんの尻に、黄ばんだオーラが集中。
かつてないエネルギーを感じる……!
そしてっ!!!
ぷすぅ~~~
という、気の抜ける屁の音が聞こえた。
三姫臣とハナがそのおならを食らい、しかめっつらをした。
俺は決闘に勝利した。
「「「「ぐ、っご、がぁぁぁぁぁぁぁぁあぁっぁあああああああああ!!!!」」」」
その後、なんか三姫臣とハナが大げさに吹っ飛んだ。
……ここでネタバラし。
俺は【創造】のスキルを用いて、【スマンソ神】を手札に揃えただけだったのだ。
楽勝☆楽勝!
「……私の出番は?」
勇子が寂しそうにつぶやいたので、
「……ふぅ、ぎりぎりの戦いだった。ありがとう、勇子。お前がいたおかげで、なんとか勝つこと、がっ……」
そう言って、満身創痍を装って、勇子に向かって体を倒した。
俺の体を抱きとめた勇子は。
「……ッ! 私は、あんたと共には、戦えないのかもしれない。でも、こうして。戦いに傷ついたあんたを、支えることくらいはできるから。だから、今は休んで良いんだよ?」
まんざらでもない感じでそんなことを言う勇子。
フォローはオッケーだ。
これも楽勝☆楽勝!
「……参りました。我ら三姫臣とハナクソ。魔王様に反逆した罪を、この命で償うとします」
「流石は魔王様。……どうか、他の魔族の命までは……」
「すっげーだぞ。……だから、私たち以外の魔族のことは、これまで通り、お願いなんだぞ」
「ご主人様、この愚かな我らの、最後の願いを、どうか聞き届けてください」
三姫臣とハナが、いつの間にか神妙なテンションで俺に告げた。
そして、自らののど元にどこからか取り出した短刀を添えて、自決しようとするのだが……
「【余の命に従えオーダー】赦す。これまで通り、余はお主らの王である。だから……生きて余を支えるのだ」
俺の言葉に、手を止める三姫臣とハナ。
そして……
「「「「え?」」」」
揃って、呆けた声を出すのだった。
俺は勇子から離れる。
そうしてから、三姫臣とハナに近づいて、そして……まとめて、抱きしめた。
「「「「ほ、ほぇぇぇ!!!」」」」
三姫臣とハナは、これまた揃って、動揺した。
「……済まなかったな。……寂しかったのであろう? 余のいない毎日が? もう案ずるな、これからは、一緒だ」
俺の言葉を理解したのか、クロナが涙を流しつつ言う。
「寂しかったです。皆がいても、一緒にゲームをしていても。魔王様がいない毎日が、寂しかったですぅ……」
ハナとアオイとアカネも、同じようだった。
みんなして、俺に抱き着き、めそめそとしていた。
はは、こいつらも、中々可愛いところがあるではないか――。
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