第24話 既視感の正体は―?
そうして、勇者学園に通う俺の日常は、目まぐるしく過ぎ去っていった。
授業中に、俺のスキルでなんかやっちゃうことが多かったり、
都の勇者養成学園との武闘祭でも俺の力で様々な伝説を打ち立てちゃったり、
学生なのに破格の活動をして国王に謁見を求められたり……
本当にいろいろなことがあった気がする。
まだ、この学園に通い始めてから3か月。
ほんの三か月なのに、本当にいろいろなことがあったと思う。
数々のイベントをこなし、俺は大体14,5人くらいの美少女から惚れられていた。
週に一人くらいから好意を寄せられる計算だった。
しかし、良くある話だ。取り立てて説明することはないな。
俺は今日も、あわただしい一日を送るのだろうな、と。
ぼんやりと考えていた。
☆
「学園祭の出し物が決まったわよ、勇者!」
女勇者の勇子が俺に向かってそんなことを言ってくる。
「何!? 学園祭だと!? 初耳なのだが!」
俺は勇子と俺に惚れている取り巻きの15人くらいの少女たちに言った。
「だって、あんたに聞いてもどうせ『学園祭? そーいう面倒なのはパスだぜ』とかすかしたこと言うじゃない! だから、みんなであんたには、黙っていたの!」
「勇子の言う通りだよ、魔王(君)(にゃん)(ぴょん)(お兄ちゃん)(兄)(様)(みょん)(にょるみょん)(氏)(兄様)(にいに)(にゃんぽ)」
15人ほど俺に惚れてる女(スケ)共も、追従した。
俺はというと、だ。
(やっぱり取り巻きが15人もいると、何言ってるのかわからないし、何だったら顔と名前が一致しないぞ……)
と、思ったのだった。
「それじゃ、魔王! これが学園祭でやる劇のプロットだから!」
そう言って、勇子は俺に原稿をよこしてきた。
俺は、「やれやれ。どれどれ?」と言った。
取り巻きたちが「どっ!」と笑った。
俺のユーモアが伝わりすぎてつれーわー(笑)
~~~~~以下劇の台本~~~~~
レベル6の勇者。
それは、人類が保有する最高戦力。
生まれつき強靭な肉体と膨大な魔力を有する魔族といえども、彼ら彼女らの前では赤子も同然。
容易く屠られることとなる。
そのレベル6の勇者の中でも、最強と称される5人がいた。
それぞれが最も得意とする【元素魔法】に由来する称号。
【灼熱】のグラン
【氷冷】のレイリー
【雷迅】のユーコ
【疾風】のウェス
【金剛】のベディ
その名を冠する五名の勇者は、数多の戦場を駆け巡り、
猛る焔で。
絶対の零度で。
荒ぶる雷で。
疾く嵐をもって。
人外の膂力を振るい。
数え切れないほどの魔人に対して蹂躙を尽くした。
彼らの前に敵はなく。
ただ無残な敵の躯が転がっているだけだった。
人類の砦、希望。
彼らがいれば、人類が滅びることなどありえない。
――そう、誰もが思っていた。
「……全滅? 私たち【元素の勇者(エレメント・ブレイブ)】が?」
ありえない。
【迅雷】の少女は、目の前の光景が信じることができず、ただ茫然とつぶやくことしかできないでいた。
なぜ?
どうして?
みんなが何も言わずに横たわっているのは……一体、どういうことなの!?
分からなかった。
答えを教えてくれるものなんて、誰も。……いや、一人だけ、いた。
「あんた、一体……何者なのよ!?」
【迅雷】の少女は問う。
これまで感じたことのない、根源からくる恐怖を押し殺しながら。
その言葉を聞いた、レベル6の勇者を蹂躙した、男は身に纏う黒衣を翻してから、ゆっくりと口を開いた。
「余は魔王。人を滅ぼすために蘇った、伝説の、この世全ての頂点たる存在だ」
まるで呪詛のごとく紡がれる言葉。
怯え、震える勇者の少女を一瞥してから、
もう一度黒衣を翻し、おちん〇んをこんにちん〇したのだった――
~~~~台本ここまで~~~~
俺は原稿から顔を上げる。
「うむ、なんというか……既視感があるな。オリジナリティがあるとか、ないとかの次元じゃなく」
「既視感? うーん、なんでだろ? ……もしかしたら、「伝説の最強魔王に転生したおっさんは、勇者を蹂躙したのでのんびりスローライフを送りたい」の第一話を読み直せば、何か思い出すかもしれないわ!」
「はて、「伝説の最強魔王に転生したおっさんは、勇者を蹂躙したのでのんびりスローライフを送りたい」の第一話とな? 一体その第一話とは、何なのか。すまない勇子、俺に教えてくれ」
「……ごめん、私もなんとなくテキトーに言っただけだから。深く突っ込まれると、何も言えなくなっちゃうわ」
「もー、なんだよそれー! 意味深なこと言うなよー、こいつー」
「も、もー! やめなさいよ魔王、みんな見てるじゃない、もー……もーっ!」
とりあえず既視感の正体はよくわからないのだが、俺と勇子は取り巻きたちの恨めしい視線を無視しつつ、イチャイチャしたのだった。
☆
そして学園祭本番!
「今日に至るまで、本当にいろいろなことがあったな……」
俺は円陣を組んで、一人一人の顔を見ながら言った。
実際、本当にいろいろなことがあった。
とうてい語りきれない、むしろ語る気力すらなくなるようなあれこれ。
そういったものがあり、俺に惚れている取り巻きの人数も、とうとう4桁を超えたのだった。
「とりあえず、俺から言いたいことは一つ!」
全員(男ももちろん含める)が、俺に向かって熱っぽい視線を送ってきた。
慣れっこだ。
「楽しんでいこうぜ!」
「「「「「「おおおおおおおお!!!!!」」」」」」
なんかめっちゃテンションの上がる俺の取り巻き。
なんだったら、俺がハナクソほじっただけでもこんなテンションになるのだから正直うっとうしいのだった――
そして適当に劇を済ませたのだった――
あんまり客の受けは良くなかったのだった――
☆
学園祭の大活躍により、俺のファンの数が5桁を超えることとなったのだった――
(劇での活躍を言っているのではない。
実は当日学園にテロリストとエロテロリストが現れる緊急事態が起こったのだった。
が、俺の迅速な活躍により、テロリストとエロテロリストとアナリスト(実はエッチなことばではない。おどろきである)
を倒し、学園祭の成功に導いていたのだった――)
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