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 夜、ビルの12階。

 オフィス街に建つビルにもかかわらずパーカーからショートパンツ、ジャケットなどこの街の雰囲気にどこか似つかわしくない人達が多くいる。もちろん、学生服を着た自分も例外ではなかった。カジュアルな装いに比べたらいくぶんマシなのかもしれないがどこか居心地が悪い。本当はこんな格好で来るつもりはなかったんだ。ちゃんと着替えをしていくつもりだったのに急遽入った全校集会のせいで下校時間が遅くなった。それに加えて電車の遅延。遅刻はしたくなかったので駅から走ったところ着く頃には息切れをし、そこで初めて集合時間が1時間延長されたことを知った。今日はとことんついていない。賑わう室内はやはり自分には似合わない、どこか居心地の悪さを感じる。華やかな空間は苦手だった。気がつかれないように静かに廊下へと出るとそこは自分と同じような奴らのたまり場となっていた。


「やっぱり出てきたのかよ。お前がいつ来るか賭けをしようとしてたんだぜ」


 ジャケットを羽織った大柄の男はげらげらと笑い出迎えてくれた。その周りにいる人達も特に拒むこともなくこちらを見つめる。同い年くらいから一回りも上の人まで一見するとまとまりがない集団。しかし、みんな顔なじみで居心地が悪い者同士気がついたら群れていた。


「僕で賭けなんてやめてくださいよ。食事待ちですか」

「まあそんなところ。こちとらクソ真面目な話聞くためにきてんじゃねえんだからさっさとメシを出せってんだ。てか、今日は制服なんだな、めっずらしー」

「学校遅くなっちゃって」


 ただ何気ない会話。この人達と特別仲がいいわけではないが暇つぶしにはちょうどよかった。個人差はあるが同じ傷をかけた同士雰囲気は似ている。お互いに触れてほしくはない部分には一切触れず、深いところまでは話さない。言葉にすると冷たくも感じられるがこれこそが僕らに必要な距離感だった。

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