21回目
茉白
心の揺らぎ
桜の花が散り始めた風の強い4月。
はにかんだ様に笑う君に出会った。
僕は一目で恋に落ち、何も手につかなくなった。
君に思いを伝えずにはいられなかった。
生まれて初めての告白だった。
「君が好きです。」
「ごめんなさい。」
僕と君の、合言葉の始まり。
1回目、朝からとにかくドキドキして緊張した。
2回目、思いが通じなかったことに悲しくなった。
3回目、とにかくイラついて枕を顔に押し当て叫んだ。
4回目、誰にもぶつけられない怒りを感じてフラストレーションが溜まった。
5回目、拗ねてみたところでどうもならないことを知った。
紫陽花が雨に打たれてしょげている様に見える7月。
まるで僕の様だと思う。
何度も振られるけれども諦めきれない。
君ほどの人にはもう出会えない。
何処にいてもすぐに見つけられる。
「君が好きです。」
「…ごめんなさい。」
まだまだ大丈夫だと自分に言い聞かせる。
6回目、どこに問題があるのかさっぱり分からずひとしきり悩んだ。
7回目、自分の良さを分かってくれない君に不満を持った。
8回目、上手くいっている周囲の人に憧れて羨んだ。
9回目、まるで思う様にいかず焦燥感に襲われた。
10回目、何だか同じことの繰り返しに飽きてきた。
紅葉が色づき始め、秋色が濃くなってきた9月。
二桁に到達してしまい、僕は少し疲れてきたみたい。
君も嫌になっているだろう?
誰かが、君が僕を避けていると言っていた。
そんなのずっと前から知ってる。
「君が好きです。」
「…本当にごめんなさい。」
彼女の反応が少し変わってきた。
11回目、僕の努力が足りないのかと恥ずかしく思った。
12回目、ああ言えばよかったこう言えば良かったと過去を振り返って後悔した。
13回目、アイツも君が好きだと聞いて驚愕した。
14回目、どうしたらいいのか分からなくなって困惑した。
15回目、もういっそどうでもよくなってきて諦めそうになった。
ポインセチアがあちこちに飾られ、冬の訪れを告げる12月。
君への思いは本物なのか、ただの執着なのか。
君のことを思い浮かべ、僕は僕自身に問いかけてみる。
君の笑顔が忘れられない。
結果、しんどいけどもうちょっとだけ頑張ってみようかなという事になった。
「君が好きです。」
「…私のどこがいいの?」
君が僕に話しかけてくれた。
16回目、自信と期待を持っていたのに裏切られた気持ちになった。
17回目、周りのやつらに慰められて傷ついた。
18回目、一生無理なんじゃないかと恐れおののいた。
19回目、今までの自分が信じられなくなって不安になった。
20回目、ああもう駄目だと絶望してベッドに身を投げ出した。
僕は僕のすべてを君にさらけ出してきた。
君の心に少しでも僕はいるのだろうか。
僕の思いは、やっぱり迷惑で独りよがりなだけだったの?
もう一回、もう一回だけ君に心から言いたい。
泣いても笑ってもこれで最後にするから。
ここまで来たら、答えはもうどっちでもいいんだ。
桜の花が満開に咲く良く晴れた3月、君に出会ったあの場所で。
21回目の告白をするよ。
「君が好きです。」
21回目 茉白 @yasuebi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます