大好きな女の子とセフレになったけれど三十回したら俺たちの関係は終わるらしい
華川とうふ
21回目のセックス
「私たち三十回セックスしたら、終わりにしましょう」
初めて彼女とセックスしたあと、
ずっと、好きで憧れていた女の子と初めて結ばれた後にこんなことを言われるなんてだれが想像できるだろうか。
さっきまでの薔薇色に染めた頬も恥じらいも、すべてが愛しかったのに……いや、今でも彼女のことは好きだ。
でも、自分だけ舞い上がっていたらと思うと「重い」なんて言われて彼女が二度と会ってくれなかったら俺は立ち直ることができない。
だから、言ったんだ。
「どうして?」
って。「分かった」なんて格好をつけて言ったり。「遊びだったの?」なんて聞かなかった俺は自分で自分を褒めたい。
そしたら、彼女はこう答えたんだ。
「人間は三十回もセックスしたら飽きるじゃない? 性的魅力で一緒にいられるの三十回セックスするまでだと思うんだよね」
彼女はさっきまで俺の隣の枕に広げていた艶やかな黒髪をポニーテールに結いながらあっさりと答えた。
どんな表情をしていっているのかは分からないけれど。
だけれど、そのときの彼女のうなじはとても華奢で折れてしまいそうだった。江戸川乱歩の小説ならば、きっと彼女はその後、俺に首を絞め殺されるだろう。
だけれど、現実の俺は違う。
ヘタレだ。
「……そうだね」
期間限定でもいい。すこしでも彼女の側にいたいと思ってそう答えるのが精一杯だった。
それから、俺たちはデートをしたり楽しく過ごした。
放課後、一緒に図書室で勉強をしたり。駅ビルで買い物をしたり、カフェでコーヒーを飲んだり。
俺はできるだけ、彼女とセックスをしないようなデートを心がけた。
だけれど、デートを終えて帰ろうとするとき、彼女は俺の袖をひっぱって、
「ねえ、セックスしなくて良いの?」
そう言って、首を傾げるのだ。
好きな女の子にそんなことを言われてしまっては、我慢をするのも限界がある。
何回かに一回、俺は彼女のその問いに従って彼女と関係を結ぶ。
その瞬間は最高に幸せだけれど、彼女との終わりがくると思うと、終わったあとは後悔でいっぱいになる。
今日で21回目のセックスだった。
あと、9回。
愛しい彼女とセックスが出来る回数。
本当はセックスなんてしないで、ずっと彼女の側にいたかった。
だけれど、彼女がセックスをせまってくるということはある程度関係に区切りを付けたいということかもしれない。
俺はとなりに眠る彼女の唇にそっとキスをする。
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「私たち三十回セックスしたら、
初めて彼とセックスしたときに私はそういった。
彼といい感じになれたときは嬉しかった。
セックス中もたくさん「好き」って言ってくれた。
でも、終わったあと後悔した。
だって、普通の女の子はきっとこんなことしないから。
普通は手を繋ぐことから始める。
なのに、私は彼に「好きだ」と言われてそのままキスをして押し倒してしまった。
こんなのおかしい。普通じゃない。
だけれど、私は彼の気持ちに返すことができるのはこれくらいなのだ。だって、私はきたないのだ。汚れてしまっている体でも好きだといってくれるなら、少しでも多く触れてもらいたいと思ったのだ。
だけれど、分かっている。
人は飽きるものだって。
だから、せめて三十回……三十回セックスしても側にいてもいいと思えるなら、ちゃんと付き合って欲しいと思ったのだ。
それまではセフレでも良いから、側にいさせて欲しい。
三十回もすれば性的な魅力は消えるだろう。
これは彼のためなのだ。
性的魅力に欺されてしまっていては可哀想だから。
今日で二十一回目のセックスだった。
あと九回……それでも彼が側にいていいと思ってくれたらいいのに……。
私がシーツにもぐりこんで、目を瞑ってそんなことを考える。
だって、セックスのあと彼の顔をまっすぐみるのはすごく恥ずかしいのだ。
すると、やわらかいものが唇にふれる。
甘くてとろけそうなキス。
もし、あと九回しても彼が側にいてくれたらどれだけ幸せだろう。
あと、九回。それでも、彼が私を好きでいてくれたらと思うと、私は聞かずに入られない。
「ねえ、セックスしなくていいの?」って。
大好きな女の子とセフレになったけれど三十回したら俺たちの関係は終わるらしい 華川とうふ @hayakawa5
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