魔法

 一週間きっかりに、僕は魔女の家の前に来ていた。

ピンポーン

 呼び鈴がなったあと、しばらくして魔女は顔を出した。

「はい、いらっしゃい。」

「こんにちは!ぺったんこ魔法、うまくいった?」

「あぁ、上手くいったよ。おいで、早速見ようじゃないか。」

 例の埃っぽい本の部屋に着くと、魔女は分厚い本を棚から出してページをめくった。

「わぁ!」

 そこには一週間前に挟まれたパンジーが、あの日の色を残したままペラペラになっていた。

「本当にぺったんこだ!」

「ふふ。せっかくだから、これで栞でも作ろう。」

 リビングに戻ると、魔女は和紙とのりを持ってきた。

「好きな色の紙に貼るといい。上からこの薄い和紙で抑えるよ。」

 僕は青色の和紙に黄色のパンジーを並べた。コントラストがとても綺麗だった。仕上げは魔女がしてくれ、一つの栞ができた。

「綺麗にできたじゃないか。色のセンスあるね、あんた。」

 そう言って魔女は僕の頭を撫でた。

「今日は別の魔法を教えてあげよう。なんと、スライムの錬金だ!」

「スライムって、あのゲームとかに出てくるやつ!?」

「そうさ、それも魔法にかかればちょちょいっと作れちまうのさ。」

 魔女は奥から青緑の水と、トロトロの液が入った容器を持ってきた。

「トロトロにこの水を加えてゆっくりかき混ぜる。それだけでスライムができちゃうんだよ。」

「うっそだー。」

「本当さ。さぁ、やってごらん。」

 僕は青緑の水をトロトロ液に注ぎ、割り箸でゆっくり掻き混ぜた。すると水を注いだところを中心に固まってきたではないか…!

「わ、ほんとに固まってきた!これスライムなの!?」

「そうさ。触ってごらん。」

 そう言って魔女は固まったそれを僕の手に乗せてくれた。スライムは少しするとデロデロと指の隙間から垂れてきた。

「ほんとにスライムだ…!」

 スライムは、触ると固まるが放っておくとどこまでもだらしなく広がった。面白くて僕は何度も握ったり垂らしたりして遊んだ。

「今日はお土産をあげよう。」

 そう言って魔女は一つの小瓶を僕に手渡した。

「そこには宝石を作る魔法の薬が入っている。少しずつ出来てくるから、家で観察してごらん。揺らさないように、そっと持ち帰るんだよ。」

「ありがとう!」

 たくさんの魔法に触れられた充実感で、僕は実はゲームの主人公じゃないかと錯覚してしまいそうになりながら、魔法の薬を持ち帰った。

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