二章 怨嗟と紅眼、あるいは呪いの少女[十一]

 人間は弱いと、幼き日の俺は結論づけた。

 心があるから弱いと。

 心などなければ挫けることもないのに、と。

 だというのに。

 この世には、人間よりも弱いものが多すぎた。

 人間如きが搾取出来るものが、多すぎた。

 そんなのはなにかの間違いだと、何度目を擦ったかわからない。

 朝になれば世界は正しい在り方にすげ変わっていて、人間は地を這うばかりの弱者になっていることを祈りながら夜を過ごした。

 しかし、その程度で摂理は変わらず、現実は現実のままに俺の前にのさばり続ける。


 それは、数多あるものの中で、最も度し難いものに、俺の目には映った。


 人より弱いものを守りたいと、思った。思いながら、呪術師としての在り方はその生き方を許しはしなかった。

 だからせめて、誰かと比べて弱い他人を、守りたいと思った。

 他人を守りたいなどという馬鹿げた思想まぼろしさえなければ、俺はきっと、完璧だった——。

 そんな、自分の人間らしさに気づかず。

 虐げられ、蔑まれ、切り捨てられ、弄ばれるだけのものたちが輝ける場所がないことに憤った俺は、どうしようもなく愚かだった。

 けっきょくのところ俺は、そんな自分の愚かさに気づくことはなく。

 彼女に、手を差し伸べてしまった。

 生まれながらに天性の肉体を持ち合わせながら、不才と蔑まれた少女。彼女は、宮本家ここでは自身が使い捨ての駒であることを理解し、心の底では怯えていた。


 今はもう、それが間違いだったとは思わない。

 けれども。

 その先にある結果を、俺は考慮に入れていなかった。

 間違いではなかったが、正解ではなかった。

 あるいは。限りなく正解に近いなにか、だった。


 彼女は弱いままで終わる人間ではなく——。

 そもそも最初から、人の構造をしていなかったから欠陥品に見えていただけの、規格外だったのだ。


   ◆


「はてさて偶然にも、いやはや本当に偶然にも、役者は揃いましたな。などと申し上げてみるものの、えぇ、えぇ、この場でアレを倒す方法は、まあ、現実的なものが三通りほど。その中でも陸様がお選びになられるものは一つしかありますまい」

 白々しいを通り越した上に光の速度で真っ黒に染まった発言を聞き流しつつも、陸は、横に並んだ百舌に視線だけを移した。

 金ヶ崎の警戒は、おそらく彼の中の最上位に跳ね上がっている。

 無理もない話だ。

 宮本陸と百舌文隆は

 目の前に存在するソレなどは、霞んで見えぬほどには。


 その二人が相見えれば。

 また、一からやり直せる。


 それは可能性の話ではなく、事実だ。

 特戦三課だけでは対処出来ない事態に陥っていることなどは、もはや、誰の目にも明らかだった。

「百舌、一つだけ確認を取っておく」

「なんでございましょう、陸様」

 しかし、そんな金ヶ崎の不安は蚊帳の外である。

「アレは、必然か?」

 造形物は動かない。ただじっと、二つのくらい眼窩で陸だけを見据え、観測者としての務めを果たしている。アレが起爆しないのはその役目を与えられていないからだ。アレを放置すれば、アレの造形主がやって来る。否、その意味ではすでに手遅れだ。すでに観測者は観測者の役目を果たした。どのように立ち振る舞おうと、アレの造形主は陸の下にやって来るだろう。

 造形主と戦うならば、それはここではいけない。

 苦渋の決断を下さなければならない。

 どこで戦おう被害は出る。

 問題は人が死ぬか、人以外のせいめいが死ぬかの違いだけだ。

 その天秤は——。

 金ヶ崎たちは巻き込めない。理想を言えば大地を安全な場所に隠し、その上で恭子を説得し、古い森で陸一人、造形主と相対する。これが最適だった。

 太古の森であれば、あるいは耐えるだろう。どんな不浄に侵されようと、新たな芽が息を吹き返す希望もあるはずだ。

 思考が回る。答えを出せる。それだけの無慈悲を、かつての陸は備えていた。

 なにかを犠牲にしなければならない選択肢。

 それを躊躇うことなく選び取れる脳髄が、心と癒着して離れることがないまま陸の根幹にはあるのだから。

 暴君は今もまだ、陸の中にいる。

 それが宮本陸の本質だ。

 そんな陸の思考を、百舌は愛おしいと感じる。

 外道と呼ばれる男は、人の感情の機微を現象としてしか感知しない。それでもこの外道は、宮本陸を愛おしいと感じた。

 ——それを壊すも生かすも、さぞ、さぞ。

 陸は百舌に、アレは必然かと尋ねた。この状況もまた、百舌の手によるものかと。

 ——必然か偶然か。どちらにしても、意味は大して変わりますまい。

 そんな胸中はおくびにも出さず。

「……陸様。それはもう、私には分かりかねることなれば」

 そう答えて、百舌は自らの左胸を、晒した。

 陸はもちろん、恭子も息を呑む。

 年老いた肌。傷だらけで、引き攣れた痕。

 左胸の着物を暴いた左手は、桐細工の義手だった。それは陸たちの知らない肉体の損失。だが、それ以上に——。

 命を動かす器官が、ごっそり抜け落ちている。そこにあるのは空白だ。ぽっかりと空いた虚空だ。どのような術理であれ、そこにあるはずのない空白が、空白のままに百舌文隆という命を動かしている。

「神隠し……」

 生きていられるはずのない身体。百舌の心臓は隠されている。それはつまり、百舌文隆の命は呪術師の掌中にあることを意味しており——。

 百舌文隆が忘却の果てにあるか、改竄の果てにあるか、真実を語れぬ糸で口を縫い縛られているか。

「えぇ、えぇ、面目もごさいませんが、陸様。この百舌、垂らされた糸にて踊る、傀儡に成り果てているかもしれませぬ故」


 ——如何ようにも。


 外道は嗤う。よこしまに嗤う。どちらでも良いと、嗤う。

 生きていようと死んでいようと、外道の策は滞りがない、とでも言わんばかりに。忘却の有無などは関係がないと。それこそが百舌文隆の真骨頂であると嗤っている。

「……わかった。なら、今やるべきことを済ませるぞ」

「かしこまりまして、ございます」

 兎にも角にも、ソレを放置するわけにはいかない。倒せるならば倒すべきだ。綱渡りには慣れている。慣れている者が揃ったならば、超えられる死線は越えるべきだ。

 愚鈍な歩行しか出来ないソレを引き離すことは容易い。しかし、ソレを放置するということは、ソレに移動を許すということだ。少なくともソレに、これ以上の死を撒く機会は与えてはならない。

「では金ヶ崎様。なにやら緊張をしているようでございますが」

 そこで自身に会話の矛先が向くことを予想だにしていなかった金ヶ崎は、一瞬呆気に取られたような顔をする。居場所などなく、出る幕もないと思っていたのは勘違いだったようで。

 声をかけらた真意を理解する。彼らは、ここにあるものならばなんでも利用しようというのだ。

「なにか、長物はありますかな?」


   ◆


「百舌、それは……」

 その言葉に、恭子も理解した。

 確かにその方法ならば、ソレを倒せるだろう。

 だがその方法は——。

 陸を見る。しかし陸は、その陰りのある表情で、ただ静かに。


 ——ありがとう。


 と、恭子に語りかけていた。

 その顔は、恭子の胸を締めつける。心配してくれてありがとう。そんなのは当たり前だ。陸の苦しむ顔は見たくない。だから、恭子にその方法は思いつけなかっただけで。

 百舌は、最初からその方法を思いついていた。陸と同様に。

 外道は外道だ。結果のためならば過程のことは気にも留めない。損益が釣り合わなくとも、結果さえ出せればそれでいいのだ。

 問題は陸がその方法を受け入れていることと。

 今回ばかりは益が勝つということだった。

 アレをこの場で倒せるならば、ここにいる全員が不浄に侵されようとも釣りがくる。

「わかった、わ」

 陸がやるというのなら、恭子は躊躇わない。陸の望むことを正しいと証明することこそ、恭子の役目なのだから。

 恭子が口元を引き締める。

 そして、微笑んだ。

 あのエントランスで見せたように。

 笑っている。

 ただならない。

 金ヶ崎は、彼らが今からやろうとしていることを察して、こめかみに一雫の汗を光らせた。

「長物ならばなんでも良いということではないのですが、えぇ、えぇ。一秒。一秒保てば事たりましょうな。あとはあのトラックを丸ごとお借りしましょうとも。安心してくだされ。使い物にならなくなりましょうが、お返しはします故。内部空間は最大範囲の五百メートルに。扉との接続先は空間中央を。内部設定を浄化結界式で展開してくだされば問題ありません」

「…………わかった」

 何故、この老人があのトラックの性能を詳細に把握しているのか。聞くだけ野暮というものだろう。百舌文隆とはそういう男だ。

 百舌の義手。

 桐細工のそれは伊勢に本拠を置く、伊勢乃神座かむくらの産物だろう。和琴わごんで神域の音色を奏でるための義手だ。あるいはその義手そのものが和琴である可能性すらある。よく見ればその指は六本。つまり和琴と同じ、六弦だ。

 人では奏でられぬ音のために、伊勢乃神座では人体を切り落とす。宇曽利山社中が量産可能な替えの利く汎用性を求めるならば、伊勢乃神座の理念は、伝統に則った至高の工芸品を創り出すことに焦点を据えていた。

 右手に携えた番傘もおそらくは伊勢乃神座製であり、それだけのものを個人で所有しているならば、必然、宇曽利山社中の情報を握っていてもおかしくはない。

 どちらにしろまともではない代物で、それを所持する百舌はさらに外道まともではない。

 かつての暴君は、掲げた理念によって人を人と思わなかった破綻者であり、救済者だった。

 だが、百舌は違う。人を人と正しく認識しながら、結果のために消費される人命になんの感情も抱かない、掛け値なしの外道なのだ。

 陸がある種の聖人だったならば、百舌は悪辣の極地と言っていい。

 伊勢乃神座は、その魂に価値がある者にのみ、至高の工芸品を譲渡するという。そんな彼らの手によるものが、どのような経緯で百舌の手にあるのか——。

 その思考を金ヶ崎は振り払う。魂に価値があるかなど、それこそ伊勢乃神座にしかわからないことだ。そも、外道であるからといって価値がないなど、考えてはならないことである。

 価値というならば、それが人道に沿わないだけで、その外道には確かな価値があったのだ。

 魂に価値があるとするならば。

 その外道は、悪辣の一点において価値がある。

 伊勢乃神座がそこに価値を見出したかどうかはわからないにしても、義手が動いているならば、あれが百舌文隆のために用意された特注品であることは疑いようのない事実である。

 出雲御座敷結社の付喪神つくもがみが出てこないだけ、まだ状況は金ヶ崎の理解の範疇と言えるだろう。あそこの創り上げるものの性能は常軌を逸している。

 しかし、今は余計な思考を捨てるべき時だった。金ヶ崎はトラックの運転手に指示を送り、自身もトラックに駆け寄っていく。

 大型トラックはソレに車体前方を向けており、それでは都合が悪いことなど金ヶ崎は承知していた。

 左右は急な法面。二車線の公道。Uターンなど出来る筈もない。

 その問題を、彼らはクリアするのだろう。そんなことよりも数段飛ばしで高難易度な状況を打開しようとしているのだ。それくらいのことはやってのけてもらわなければ困る。

 ——なんなのだ、この状況は。

 金ヶ崎とてわかっている。己の矛盾に。

 ソレは、倒せるならば倒すべき存在だ。本来の任務から逸脱していようとも、優先順位が戦場で変わることはなにも珍しいことではない。殲滅戦が救出戦になるならば、それを良しとするのが金ヶ崎だ。

 だが、彼らに頼るのはどうなのか。

 彼らに手を貸さなければ、彼らをここに釘付けに出来るのではないか。

 それは希望的観測だろう。彼らは、金ヶ崎が手を貸さずともソレを排除する。その気概がひしひしと伝わってくる。

 任務の放棄。これでは部下に合わす顔がないのではないか。

 トラックに駆け寄りながら、ジュース1の面々を見た。

 要救護者の手当てに当たりながらも状況の静観に努めている彼らの肩からは、戦意が失われている。

 油断しているというわけでも、敗北に打ちひしがれているわけでもない。

 だが、金ヶ崎の目に映る彼らは、もう、江波恭子を標的と思えなくなっている、というような——。

 ——なんなのだ、これは。

 振り返る。

 江波恭子は屈伸運動を始め、百舌文隆はなにやら思案しているようであり、宮本陸は真っ直ぐ、ソレを見ていた。


 ————。


 異様な光景だ。ソレの体表はおぞましい異音を響かせながら瘴気を撒き、周囲を腐りとろかせ、動かない。

 沈黙というには雑音が多すぎる。

 不浄の沼地。

 魂を失ってなお目的があるということが幸か不幸か。ソレは造形者の念が込められただけのものではないと、誰もが察していた。

 その器にかつて入っていたはずの魂さえもが、陸を憎悪している。

 窪んだ眼窩が陸を捉え続け、観測者は自身の末路など露も考えはしていない。

 ソレを直視することが、宮本陸にとっていかに残酷か——。

 それを残酷というならば、あんなモノに成り果ててしまった人の成れの果てに対する冒涜だろう。

 これは彼らが、否、宮本陸が招いた結果である。彼は報いを受けるべき人物であり、明確すぎるほどの敵だ。

 だが、彼の掲げたものを、金ヶ崎は否定出来ずにいる。その理念は、その信念は、確かにだったのだから。

 金ヶ崎は人の側に立ち、宮本陸は人の側に立たなかった。

 それだけのこと、なのだ。

 勝者は英雄となる。宮本陸が求めた未来には、その勝利の先に英雄などいなかったが。

 では、勝利したこちらに英雄はいただろうか。

 その勝利に酔う者がいただろうか。

 お偉い方はそれはもう連日の祝杯騒ぎだったが。

 実際に戦場に立っていた者たちは、こう思ったのではないだろうか。


 ——どうしてこんなことになってしまったのか、と。


 その曖昧な心のもやに名前をつけてはいけないと感じながら。

 本当は、凄絶の暴君と呼ばれた無慈悲こそが、人の優しさを体現していたのではないか——。

「これでいいか。あの瘴気さえなんとか出来るならば、これなら三秒は保つ」

 戻ってきた金ヶ崎は、恭子に手袋を手渡しながら、握りしめた捕縛具を百舌に見せる。

「なるほどなるほど。金ヶ崎様はどうやら、相当に頭がキレるようで」

 金ヶ崎の言葉には返答せず、百舌は、金ヶ崎が恭子に手袋を渡すのを見て顎を撫でた。

 金ヶ崎が用意したものは、宇曽利山社中製の、対魔性災害特化型の呪具、刺股さすまただった。伸縮機能を備えたその捕縛具は強度はそのままに最大で七メートルまで伸びるが、それでも、ソレを捕縛するためには少なとも八メートルまでは近づかなければならず、グリップのことを考えればさらに接近しなければならない。

 呪具には大きく分けて二種類がある。

 複雑な術式ではないため呪力が充電式で誰でも扱えるもの。

 付与された術式が複雑であるため使用者の呪力が必要なもの。

 今、金ヶ崎の手の中にある刺股は前者だ。

「いいんじゃない?」

 手袋を嵌めた恭子が刺股を受け取り、重量を確かめるように手の中で遊ばせながら答えた。

 江波恭子の身体は呪具に込められた呪力さえ無効化し、固定された術式、固定式呪術さえ無効化してしまう。

 故の手袋だ。

「江波恭子、一つ、いいか?」

「ん? なにかしら?」

「お前は、他人の呪力さえ無効化するのか?」

 それはつまり、呪術師に触れさえすれば、呪術師の呪術師たる所以の呪力さえをも霧散させてしまうのか、という問いだった。

「……いいえ」

 恭子は短くそう答えてから。

「まったく不便よね。もしそんな身体だったなら、私はもっとまともに陸の役に立ててたんだけど」

 呪具は無効化する。だが、呪術師を呪術師たらしめる根幹を無意味にすることは出来ない。

「答えてくれるとは思わなかった」

「そう? 嘘かもしれないけど」

 答えさせたことに対して、金ヶ崎は謝らない。

 だから恭子も気分を害したりはせず、茶目っ気を込めて言葉を返した。

「では、運転は私がしよう。タイミングは任せる」

 そう告げて再びトラックに向き直った金ヶ崎は、その視界にあり得ないものを見た。

 鳥山大地が、後ろ手に手を振って、肩で息をしながらトラックに向かっている。

「その必要はないわ」

「なっ、馬鹿なっ。彼は明らかに死に体だ。とてもまともな運転が出来るとは思えない」

「わかってるわよ、そんなこと。それに関して言えば、大地が万全であっても期待してないし」

「ではなぜだっ? 我々は、いや、私は、そんな博打に賭けるわけにはいかんのだっ!」

 金ヶ崎が声を荒げるが、それも致し方ないことだった。

 作戦の成功率は高ければ高い方が良い。指揮官としてその思考は至極真っ当である。

「金ヶ崎さんだっけ。はじめまして。名前を呼ぶのははじめてね。私は江波恭子よ。そして彼は鳥山大地。金ヶ崎さんを信用していないって訳じゃないわ。そこは間違えないで」

「でも、私たちに必要なのは、信用じゃない」


「背中を預けられるかどうかの、信頼だ」


 陸が言葉を繋げた。

「精神論の話ではない! 私は成功率の話をしているっ!」

「金ヶ崎……。あいつを、鳥山大地を舐めるな」

「舐めてなどいない……。舐められるはずもなかろう」

 陸の声音に一瞬だけ怯みかけた事実を飲み下す。

 それに感心したのは百舌だった。繁々と金ヶ崎の顔色を覗き込みながら。

 ——このお方も、相当な地獄を見てきたようで。

 その胆力は賞賛に値する、と。

「金ヶ崎さん、けっこう頭硬い? ちょっと最初の印象と違うんだけど、うん」

 そう言って、恭子は刺股を構え、腰を落とした。

「なっ…………」

 その動きに、その所作に見惚れたのはいったい、誰だったか。金ヶ崎か、あるいは後方で、誰に指示されずとも由香理の護衛を努める隊員たちだったか。

 その身体は、一つの生き物だった。

 刺股とともに在る、一つの生命だった。

 捕縛具さえもが一体化し、皮膚感覚が物質の末端まで行き渡っていることが見て取れた。

 ミリ単位でバランスを保ち、グラム単位で重さを把握し、それをどう扱えばどのようなことが出来るのかを、完璧に読み取っている。

 江波恭子は、先の攻防で撃ち出される弾丸を正確に撃ち抜いて見せた。それは彼女が射撃に慣れしていたというわけではなく——。


 制御され尽くした、天性の肉体の成せる技。


「もう一度言ってあげる、金ヶ崎さん。私は江波恭子。そして彼は鳥山大地。だったら成功率なんて小難しい計算のことなんか、鼻から頭にないわ。だったら失敗するイメージなんて……」


 ——最初から、ないに決まってる、でしょ?

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