一章 鬼種の眼

一章 鬼種の眼[一]

  一章 鬼種の眼


『陸はとても、優しいね』

 ‪──‬どうして、そう思う?

『だって陸、あなたはいつも……』


   ◆


 それは不思議な光景だった。

 果てのない闇に、無数の燈籠の明かりが揺らめいている。

 灯火に照らされた闇は、それでも、深かった。これを深淵と呼ぶのならば、きっと世界は、本物の闇を知らないのだろうと感じさせるほどに。

 ここはどこなのだろうかと、由香理は思う。

 私は死んだのだろうかと、由香理は考える。

 見渡してみても、答えはなかった。あるのは無数の燈籠の明かりと、終焉を思わせるような暗闇だけで‪──‬。

 恐怖がないと言えば嘘になる。しかしそれ以上に、慣れ親しんだなにかを感じる場所だった。

 ふと、視界の隅に、優しいなにかを見た気がした。他とは見た目で区別もつけられない、なんの変哲もない、ただの燈籠のはずだった。

 だけれど、私は、あの灯火を知っていると、思った。

 あれはきっとお爺様の‪──‬。

 由香理は、ゆらゆらと揺れる灯火に引き寄せられる。

 しかし、はたと立ち止まった。

 こっちに来てはいけないと、そんな声が聞こえた気がした。

 何故と問い返しても、答えは返ってこない。

 闇に眼を凝らす。

 その先に、ひときわ煌々と、轟々と、怒り狂うかのような激しい火を灯す、燈籠があった。

 あれは‪──‬。

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