第52話 ワープスライム登場!

「悪いなライゼ。また付き合ってもらっちゃって」


「構わないわ。な、仲間だからね! その代わり……」


「わかったよ。終わったらクレープな」


「な……人を食い意地張ってるみたいに!」


 ライゼは顔を真っ赤にして怒ってきた。相変わらずのツンデレっぷりだな。


「……それに、今日はなんか新しいのがいるみたいだしね!」


「新しいのっていうのはあたしのことかッ!?」


「そうよ。ちゃんと見張っておかないとね!」


「な、なんかただならぬ雰囲気を感じるぜ!?」


 ライゼがジト目でイレーナのことを睨みつけている。理由はよくわからないが面倒なので話を進めよう。


「まず、ダンジョンに行く前に確認したいことがあるんだ。俺のスキルなんだが……」


 俺はステータスをオープンした。


――


 アルクス・セイラント 17歳 男

 レベル35


 スキル

 <スライム>

 『スライムテイマー』……レベル6のスライムを発生させることができる。最大42匹。

 『スライムメーカー』……スライムにクラスチェンジを施すことができる。

 ・鑑定スライム(1) ・収納スライム(1) ・ワープスライム(1) ・鉄壁スライム(3)

 ・治癒スライム(2)


 ・スライムジェネラル ・スライムアサシン


 <人間>

 『祈り』……仲間から受けた想いの数だけ、身体能力が強化される。

 『希望』…… 感情の変化によって身体能力が強化される。諦めない限り効果が持続する。

 『勇気』……仲間の身体能力を強化する。


――



 ダンとの戦いの影響で、俺のレベルは飛躍的に上昇し、新たなスキルも増えた。今日はそのお披露目だ。


「まずは、ワープスライムから行こうか」


「<ワープ>と言えば、指定した二点を一瞬で移動スキルよね」


「……? 何言ってんだ?」


「要するに、瞬間移動ができるスキルってことよ」


 ライゼのわかりやすい説明で、イレーナはようやく納得する。

 さて、さっそくやってみるか。


「『スライムメーカー』でスライムをワープスライムにクラスチェンジさせる!」


 例のごとくスライムが白く光りはじめ、姿を変えていく。

 現れたのは、フラフープのようなわっかを持ったスライムだった。


「なんでこの子フラフープ持ってるの?」


「そんなこと俺に聞かれても……おっ」


 その時、目の前にステータスのような情報が表示された。


――


 移動先を指定してください。


 1.未登録

 2.未登録

 3.未登録

 4.未登録

 5.未登録

 6.未登録

 7.未登録

 8.未登録


――


「なんだこれ?」


 移動先を指定、という言葉と、何も登録されていないリスト。

 もしかして、ここに行き先を指定しろってことか?


「じゃあ、今この場所を1番に指定する!」


――


 承認いたしました。1番スロットに『エルステッド王国 オルティア 正面入り口前』を登録しました。


――


 エルステッド王国というのは、オルティアがある国のことだ。言い換えれば、俺たちが住んでいるのもエルステッド王国。

 つまり、指定されたのは今俺たちがいる場所。成功だ。


「二人とも、ちょっと待っててくれ」


 俺は街の門を潜って、街の手前までやってきた。


「よし、<ワープ>を使う! 移動先は1番のオルティアで!」


 宣言をした瞬間、スライムの頭に乗った輪っかがたちまち大きくなり、人が潜れるほどになった。

 フラフープの先は真っ暗な空間になっていて、どうやらここに飛び込めということらしい。


「よしっ!」


 思い切って、輪っかの中に入ってみる。体が宙に浮くような感覚があって、目の前に光が見えてくる。


「うわっ!」


 次の瞬間、俺はうつ伏せで地面に倒れた。どうやら輪っかから吐き出されたらしい。


「ちょっと大丈夫?」


 俺を見下ろしているのはライゼ。どうやらちゃんとワープすることができたらしい。


「すごいぞアルクス! 何もないところから輪っかが出てきて、アルクスが飛び出してきたぞ!」


 どうやら第三者から見るとそんな感じらしい。ひとまずワープの検証は成功だ。


「次は……スライムアサシンか」


 名前がスライム○○となっているということは、チアと同じ人型タイプなのだろうか。

 今では違和感なく受け入れられているが、チアもなかなか初見ではインパクトがあった。


 今回もどんな見た目をしているんだ……? 幼女の次は老婆か? 人間じゃない可能性もある。


 ええい、物は試しだ。考えていてもしょうがない。


「『スライムメーカー』でスライムをスライムアサシンにクラスチェンジさせる!」


 宣言すると、スライムが光り輝き、みるみるうちに人の姿に変化していく!

 目の前に現れたのは、黒髪のメイドさんだった。

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