【書籍化決定】最速進化のスライム無双 追放された俺の外れスキル<スライム>は超効率的にレベルアップするチートだったので、100倍速で鍛えて世界最強に成り上がる。【WEB版】
第31話 パーティリーダー、土下座しました。
第31話 パーティリーダー、土下座しました。
「おいマズいぞ! ジャイアントスプリガンが建物を壊し始めてる! このままじゃ被害が出るぞ!!」
誰かが叫んだ。冒険者たちは全員ダンのことを見ている。
「…………ッッ!!」
一瞬の躊躇い。ダンは髪をかきむしり、地団太を踏んだ。
「どいつもこいつも使えないせいで……どうして俺がこんな目に遇わなくちゃいけないんだ……」
ブツブツとつぶやくと、ダンは思い立ったかのように前を向いた。
「わかったよッッ!! 行けばいいんだろ行けばッ!!」
走り出した。腕をまくり、たった一人でジャイアントスプリガンに立ち向かっていく。
「こんなところでくたばるわけにはいかないんだよ、このデカブツがあああああああああ!!」
腕をグルグル振り回した後得意の右ストレートを放った。攻撃はジャイアントスプリガンの足に直撃。
……が、そんな攻撃では巨体はビクともしなかった。
「嘘……だろ……」
次の瞬間、ジャイアントスプリガンはダンの右腕をつまようじのようにつまんだ。
「あ、あ、あああああああ!!」
スプリガンはそのままダンの腕を掴んで地面に叩きつけたり、宙に浮かせたりし始めた。
完全に遊ばれている。ダンは絶え間なく地面にダイブしている。
「ウゴゴゴゴゴゴ……」
スプリガンはグルグルとダンの体を回すと、水切りをするように投げつけた。その先には建物があって、ダンは壁に直撃してぶち破る。
「はあ、はあ、はあ……」
ダンは赤ちゃんのように地面を這って、なんとかジャイアントスプリガンから逃げようとしている。
いつもなら綺麗にセットされた金髪は嵐に吹かれたようにボサボサに乱れており、高級な服は穴だらけになってところどころ裂けている。
「た、助けてくれ……死んじまう……まだ死にたくない……」
普段のダンの偉そうな態度からは信じられないほど情けない姿。冒険者たちはそれを見て絶句していた。
さて、そろそろか。
「スライム!」
「キュッ!」
まずはスライムを一匹出す。スライムはまるでネズミのように素早い動きでダンのところまで駆け寄った。
スプリガンが迫ってくる中、スライムはダンを担いでこっちへ戻ってきた。
俺の足元で這いつくばっているダン。顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃだ。
「さあ、どうする? さっき言った件、考えてくれた?」
地面に這いつくばって謝罪。冗談のようだが、俺もライゼもそれは本気だ。
「ふ、ふざけるな……! なんで俺がお前らなんかのために……」
「そうか、じゃあラウンド2だな」
「あああああ!! 待ってくれ!! わかったから!! もうあそこには連れて行かないでくれ!!」
ダンは雨に濡れた子犬のようにブルブルと震え、土下座の姿勢に入る。
目を見開き、屈辱に満ちた表情のまま、地面に額を擦り付けた。
「お二人に無礼な態度をとってしまって申し訳ございませんでした!! 冒険者ギルドに圧力をかけたのも俺です!! もう二度と二人に逆らうようなことはしません!! だから、助けてください!!」
綺麗な姿勢での土下座。他の冒険者たちが見ている中でこんな醜態を晒すなんて、これほどまでの屈辱はないだろう。
さて、謝ってもらってスッキリしたところだし、ジャイアントスプリガンを倒そうか。
「アルクス。大見得切ったけど、何か作戦はあるの?」
「いや、ない。今から考える」
相手はS級パーティが討伐するような超大型モンスター。はっきり言ってその強さは災害級だろう。
まともに戦っても勝ち目はない。だからこそ、俺たちなりの戦い方をするべきなのだ。
「まずは相手の弱点を探る!」
鑑定スライムを召喚し、<鑑定>を発動。すると、いつものように弱点の表示がされた。
「くそっ、急所が人間とほぼ変わらない!」
これじゃ駄目だ。心臓や頭を狙って剣を振るっていては、普通に戦うことになってしまう。
単純な力勝負で俺に勝てる要素はない。何か他に作戦はないだろうか。
――
対象:ジャイアントスプリガン レベル32
自然の番人。光合成でエネルギーを蓄える。活動期になると1日3トンの樹木を食べる。
――
<鑑定>からさらに解析の情報が流れてきた。ジャイアントスプリガンって草食なのか。
あれ? だったらおかしくないか? なんであいつは人里まで降りてきてるんだ?
それに、普段はおとなしい上に自然と共存しているようなモンスターをわざわざ倒す理由も見当たらない。これは何かおかしいぞ。
「なあライゼ、なんでジャイアントスプリガンって討伐対象になってるんだ?」
「そんなこと、見ればわかるでしょ。あんな凶暴なモンスターを放っておいたら街が壊しつくされちゃうわよ」
「でも、ジャイアントスプリガンは樹木しか食べないし、人を襲う理由なんてないんだ。だったらなんで……」
「ちょっと待って、樹木って言った!?」
樹木という単語に、ライゼが食いついてきた。
「ジャイアントスプリガンは森林エリアの奥に住むモンスター。そして、そのエリアの樹木を使って建築業を発展させた連中がいる」
「それは誰なんだ?」
「オルテーゼ家。没落寸前だった状態から建築業だけで領主にまで成り上がった一族よ」
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