第28話 ツンツン少女はデレるのか?
さて、チアの登場で忘れかけていたが、あのモンスター集団をやっつけたぞ。
俺も、ライゼも生きている。あの時に彼女を見捨てる判断をしなくてよかった。ライゼを見ていると嬉しくなってくる。
――
レベルが21になりました。
レベルが22になりました。
<スライム>の能力が強化されました。
――
そして、タイミングよくレベルもアップ。今日の目標は達成だ。
――
アルクス・セイラント 17歳 男
レベル22
スキル
<スライム>
『スライムテイマー』……レベル5のスライムを発生させることができる。最大24匹。
『スライムメーカー』……スライムにクラスチェンジを施すことができる。
・鑑定スライム……スキル<鑑定>を持ったスライム。同時に1匹までクラスチェンジ可能。
・収納スライム……スキル<収納>を持ったスライム。同時に1匹までクラスチェンジ可能。
・鉄壁スライム……スキル<鉄壁>を持ったスライム。同時に1匹までクラスチェンジ可能。
・スライムジェネラル……スライムの能力を引き出すことができるスライム。同時に1体までクラスチェンジ可能。
――
今度は『スライムテイマー』の方が強化された。こっちの変化は地味だが、効果がかなり高い。なんと言っても、経験値24倍だ。
「ふう、疲れたし帰ろうか」
「……そうね」
ライゼは俺のことを何か言いたげな目で見つめている。
「どうかしたのか?」
「な、なんでもないわよ! さっさと帰りましょ!」
そういって、ずんずんと前を歩いて行ってしまう。なんなんだ?
ギルドに帰って、俺とライゼの二人はドロップ品を換金し、席について休憩していた。
「あー、本当に散々な目にあった……」
「そう言うなよ、楽しかっただろ?」
「楽しいわけないでしょ、まったく死ぬかと思ったんだから……」
ライゼは椅子にもたれかかってため息をつくと、買ってきたお菓子を口に放り込んだ。
「で、アルクス。これからアンタはどうするの?」
「どうするって?」
「その……これからの冒険者としてのことよ!」
これからのことかあ。もちろん、強くなるためにダンジョンに潜ることは確定だ。
それもこれもダンより強くなるため……ってあれ? 俺はもうダンより強くなったんだよな。じゃあこれからはどうすればいいんだ……?
「……まあ、しばらくはソロでダンジョンに潜ろうと思うよ。今日はたまたまアウトブレークに巻き込まれただけで、日を改めればもっと奥の層に行けるかもしれないからね」
「本当にそれでいいのかしら?」
ライゼが含みのある言い方をしてくる。
「アンタは知らないかもしれないけど、ダンジョンは下の層に行くとフロアボスが待っていることがあるのよ。それはもう強いんだから」
「うん、知ってるよ」
「…………ッ!」
ガンッッ!!
ライゼが膝でテーブルの裏面を蹴っ飛ばした。
「だから、一人じゃ危ないかもねって言ってるの! アンタなんかフロアボスに踏みつぶされるのがオチよ!」
「でも、ライゼとパーティを組むのは今回が最後って話だし、他に組んでくれそうな人もいないしなあ」
バンッッ!!
ライゼが顔面をテーブルに打ち付けた。
「だから、その、ね? 私が、忙しい私が、週に1回……いや、3日に1回くらいなら手伝ってあげてもいいかなー、なんて……」
「もしかして、パーティを組もうって言ってるのか?」
俺がそう言った瞬間、ボフッ! という音がしてライゼの頭から蒸気が出始めた。信じられないほど顔が紅潮していて、目がうるうるしている。
本当に素直じゃないなあ。言うならはっきり言ってくれればいいのに。
「こちらこそ、よろしく頼むよ。また一緒に冒険しよう」
「し、仕方ないわね! 心配だからついて行ってあげる!」
「はいはい」
「はいはいじゃない!」
腕を組んでフン、とそっぽを向くライゼ。とにかく、心強い仲間ができたことに違いはない。
「お前らは……」
そろそろアイテムの換金が終わったかと思ったその時。俺たちの席に近づいてくる人物がいた。
「ダン……」
「アルクスにライゼ……まさかお前ら、まだつるんでるのか?」
一気に警戒の気持ちを強めた。こいつが来るとろくなことがない。
ライゼも同じことを思っているようで、冷たい視線でダンのことを見ている。
「おいおい、そんなに睨まなくたっていいじゃないか。ちょっとした雑談だろ?」
「お前とはちょっとした雑談もしたくないんだよ」
「そう言うなって。それにしてもお前ら二人がそういう関係だったとはな……だったら最初から言ってくれればよかったのに」
ダンはそう言うと、ニヤリと口を歪ませた。嫌な予感がする。
「わかった。二人とも俺のパーティに戻してやる。最低限の仕事だけしてくれれば、俺からお前らに干渉することはない。これでどうだ?」
「悪いけど、興味ないよ。じゃあな」
俺は立ち上がって換金の結果を聞きに行こうとする。すると、ダンはこっちをじっと睨みつけてきた。
「お前ら……いい加減にしろよ? 俺に反抗することがどういう意味なのかわかっているだろ? 本気で怒らせてくれるなよ」
「やるならやってみろよ。俺たちはお前みたいなクズの仲間になるつもりはないんだって」
キッ、という音が聞こえた。ダンは悔しそうに歯を食いしばる。
「……ああそうか。だったら今に見ていろよ。お前たちは泣いて縋って、俺に謝罪をすることになる。せいぜい後悔をしないようにな!!」
ダンはそう言って、ギルドから外へ出て行った。
次の日、俺とライゼの二人の冒険者登録が抹消されてしまうことを、俺たちはまだ知らない。
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