第17話 全てが視える

「来た!!」


 この土壇場でレベルアップした! しかも、今回は能力の追加・・! 逆転の可能性は大いにある!


 俺はゴーレムの攻撃を避けながら、神にも祈るような気持ちでステータスを開いた。このレベルアップに全てが懸かっている!


――


 アルクス・セイラント 17歳 男

 レベル15


 スキル

 <スライム>

 『スライムテイマー』……レベル4のスライムを発生させることができる。最大15匹。

 『スライムメーカー』……スライムにクラスチェンジを施すことができる。

 ・鑑定スライム……スキル<鑑定>を持ったスライム。同時に1匹までクラスチェンジ可能。


――


 『スライムメーカー』……?


 またこれまでとは違った感じのスキルだな。要するに、出現させた分身たちのうち1匹を進化させることができるってことか?

 スキル<鑑定>と言えば、モンスターがドロップしたアイテムや宝箱の中身を把握するのに重宝されているスキルだ。だが、その特性からモンスターとの戦闘向きではなく、商人が多く持っている。


 これでいけるのか? 正直言って微妙だ。

 でも、スライムたちがここまでつないでくれたパスをみすみす逃すわけにはいかない。なんとしても勝ってやる!


「『スライムメーカー』でスライムを鑑定スライムにクラスチェンジさせる!」


――


 承認しました。鑑定スライムにクラスチェンジします。


――


 脳に声が聞こえてくると同時に、スライムの一匹が白い光に包まれた! 光が点滅し、しばらくするとスライムに変化が現れた。

 見た目は他のスライムと変わらない。しかし、なぜか眼鏡をかけている。これが鑑定スライムということか?


「キュキュキュ!」


 鑑定スライムは鳴き声を上げると、ゴーレムをじっくりと見つめる。すると、俺の頭に再び声が聞こえてくる。


――


 対象:ゴーレム レベル1

 弱点部位を観測サーチ

 解析中。解析完了。

 弱点部位が発見されました。視点を共有します。


――


 メッセージが終わると、あることに気が付いた。ゴーレムの腕や足の関節が赤く光っている。――いや、正確にはそう見えるだけだろう。


 もしかしてこれが『弱点部位』なんだろうか。だとしたら、あの箇所を集中的に攻撃すれば!


「うおおおおおおおおお!!」


 俺はゴーレムの右腕の関節めがけて一気に突進した。剣を両手で握りしめると、切っ先を関節に突き立てた。

 手に感覚が伝わってくる。さっき表面を斬った時とはまるで違う、確かな手ごたえを感じる。


「そうか、鎧と同じだ! 表面は硬くても、関節には隙間がある!」


 そして、それこそがゴーレムの最大の弱点だ。だったら話は早い。


「さっきはよくもやってくれたな!!」


 腕に力を込め、肘から下を切り落とそうとする。ゴーレムは弱点を見抜かれて焦ったのか、慌てて暴れ始めた。


「ゴオオオオオオオオオッッ!!」


 左腕を振り上げて、俺を叩き潰そうとする。しかし俺は剣を絶対に離さなかった。


「キュキュキュキュー!!」


 ゴーレムの巨大な手のひらが俺にぶつかりそうになった時、スライムがぶつかって軌道をずらしてくれた。

 あまりの硬さにスライムは潰れてしまったものの、攻撃は空振りに終わった。その間も、俺は腕に力を込め続ける。


 2匹、3匹とスライムたちが潰れていった。あと少し、あと少しでゴーレムの腕を切り落とすことができる!


 ズドン!


 その時、関節から嫌な音がした。同時に、手の感覚にも変化が起きる。

 ゴーレムの腕をついに斬り落とすことに成功したのだ!


「よし、次は左腕!」


「キュキュッ!」


 スライムたちは、ゴーレムの顔面に一斉にタックルを仕掛ける。あまりの図体のデカさに、ゴーレムはひとたまりもなく地面に倒れた。

 左腕の関節に刃を通す。ゴーレムはじたばたと暴れることしかできない。顔面にへばりついたスライムたちのおかげで、ゴーレムは視界を失って立ち上がることすらできない。


 腕にさっきと同じ感覚が走る。ゴーレムの両腕を切り落とすことに成功した。


――


 ゴーレムの行動を封じました。生命活動を停止させてください。

 ターゲットを表示しました。


――


 次に赤く光ったのは、ゴーレムの首。どうやらあそこを破壊すれば動きが止まるらしい。


「ゴオオオオオオオオオ!!」


 自分が追い詰められていることを知ってか知らずか、ゴーレムは声を上げて暴れて抵抗する。

 しかし、絶対に逃がすわけにはいかない。俺は首に刃を突き立てた。


「これが弱者の、本当の強さだああああああああああああ!!」


 力を込めて叫んだ瞬間、ズドン、という音が聞こえた。点を三つ打っただけのような顔も、デカい図体も、ピクリとも動かなくなった。


 俺たちの勝利だ。


「やったあああああああ!!」


「キュキュー!!」


 ダンジョンの中だっていうのに、スライムと俺たちは喜びを分かち合った。

 絶対に勝てない勝負だと思っていた。それでも勝つことができた。これは俺だけではなく、スライムたちが頑張ってくれたからこその勝利だ。


 そして、喜んでいるのも束の間、頭に声が聞こえてくる。


――


 レベルが16になりました。

 レベルが17になりました。


 <スライム>の能力が強化されました。


――

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