第14話 潜入!灰のダンジョン!
街から外に出て草原エリアを抜けると、その先には30メートル級の壁のような山がそびえたっている。
岩肌がむき出しになったその山には大きな洞穴が空いていて、まるで怪物が口を開けているようだ。
「ついに来たな……ダンジョン!」
装備を買い揃えた俺は、いよいよダンジョンへとやってきた。来るのはこれが初めてだ。
追放前のパーティでは監視役をやっていたわけだが、それは森林などの一泊が前提になっている場所のみで必要とされる。
ダンジョンでは俺はお荷物になってしまうので、連れて行ってもらえなかったのだ。
かなり緊張するが、シエラさんが言うことには俺くらいのレベルの冒険者はここに来ることが多いらしい。強くなるためにはここは絶対に通らないといけない道だ。
俺はバクバクという心臓の鼓動を抑えて、ダンジョンの入口をくぐった。
ダンジョンの中は洞窟のようになっている。下の階層に行けば行くほどモンスターが強くなっていき、その最深部は50層とも100層とも言われている。
その答えは誰も知らない。なぜなら冒険者の最高記録は42層だからだ。
ちなみに俺が今来ているダンジョンは『灰のダンジョン』と呼ばれており、世界にはほかにもいくつかダンジョンがある。街から一番近いのがこのダンジョンだ。
「よし、それじゃあさっそく……<スライム>!!」
スライムの姿に擬態し、分裂! この前のレベルアップで数も16匹に増えている!
スライムたちに命令すると、彼らは各自でバラバラになって動き出した。
薄暗いうえにモンスターがたくさん出現するダンジョンでは、周りの状況が見えていないと命の危険がある。
でも、<スライム>があれば大丈夫。もともと監視役だったこともあり、全方位からモンスターの位置を把握するのは得意技だ。
スライムたちには、もしモンスターがいたら報告するように命令してある。これで安心して戦うことができるというわけだ。
「ピキーーーーッ!!」
……とも言ってられないようだ。さっそく分身がモンスターを検知した。
全員集合! 一気にモンスターを倒しに行くぞ!!
現場にたどり着くと、分身のうち1匹がオオカミ男から逃げ惑っていた。あれがダンジョンのモンスターか。
確か名前はウェアウルフ。ダンジョンの1層にいるだけのモンスターだから、まだそんなに強くないことがうかがえる。
よし、みんな! 16匹全員であのウェアウルフを倒すぞ!
人間の姿で倒す方が効率がいいが、やはり経験値16倍は捨てがたい。それに、どのくらいのモンスターならレベル3のスライムで倒せるのか知りたかったところだ!
俺はウェアウルフの背中に向かってタックルを食らわせる。ウェアウルフは背丈も体格も人間とそんなに変わらないので、意外と背中が広いことに驚いた。
「ガウッ!?」
よろけるウェアウルフ。隙ができたのを見逃さず、分身たちも追撃を始めた。
まるで閉鎖空間でゴムボールを投げたように、俺たちはウェアウルフの体を使ってダンジョンの中を跳ね回る。
さすがレベル3のスライム、パワーはもちろんのこと、素早さが格段に上がっている。俺たちは疾風のようなスピードで跳ね回っている。
「
弱り切ったウェアウルフの顔面に渾身のタックル! ウェアウルフはドミノのように地面に倒れると、そのまま絶命した。
「よし、勝てた!」
なんだ、ダンジョンは難易度が高いって聞いてたからどんなものかと思っていたけど、案外大したことないな。
体感的にはゴブリンよりやや強いくらいのモンスターだった。それでも、16匹の意思のあるスライムには敵わない。
とはいえ、そんなことを言ってられるのもこのあたりまでだろう。下の階層に行けば行くほど、モンスターは強くなる。おごらずに行こう。
――
レベルが12になりました。
<スライム>の能力が進化しました。
――
「進化?」
スライムの数が16匹に増えたから、さすがにレベルアップのスピードが早い。それはいいこととして。
今までは『能力が強化』だったのに、今回は確かに『能力が進化』と聞こえたぞ。
また何かが変わったのだろうか、と期待と不安が入り混じる中、俺はステータスを開く。
――
アルクス・セイラント 17歳 男
レベル12
スキル
<スライム>
『スライムテイマー』……レベル3のスライムを発生させることができる。最大15体。
――
やけにすっきりしたスキル欄。新しく書き換えられた文言。そのすべてが今までと変わっており、一瞬血の気が引くのを感じた。
なんだこれは!? 今までの能力がなくなって、変な能力が追加されてるぞ!?
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