第10話 寝てる間にレベルアップしまくりました。

――


 レベルが9になりました。

 レベルが10になりました。

 レベルが11になりました。


 <スライム>の能力が強化されました。


――


 脳内に流れるアナウンス。目の前の状況。寝起きの俺はもう頭がパンクしてしまいそうだった。


「落ち着け落ち着け、いったん状況の整理をしよう……」


 まずは目の前に散らばっているゴブリンの皮から処理していこう。これはいったい何なんだ?

 順当に考えれば、分身たちが倒したゴブリンたちの成れの果てだろう。でも、なんで皮がこんなに綺麗にはぎ取られているんだ?


「あ、短剣――」


 そこで思い出した。俺は寝るときに邪魔だったから短剣を岩の上に置いておいたんだった。

 見てみると、岩の上にあったはずの短剣の位置が変わっている。皮と一緒になってむき出しで投げ捨てられている。

 スライムたちは俺の短剣を使って、自分たちで皮の剥ぎ取りを行っていたのか!


 『自動操縦』ってそんなこともできるのか! ということは、今までのようにわざわざ人間の姿に戻って作業をしなくてもよくなるじゃないか!


 それにしても……すごい量だな。居眠りする前と後で6時間以上はゴブリンを倒しているから、剝ぎ取りの時間を込みで考えても相当戦えるな……。

 俺は一つ一つ数えながら、持ってきた巾着袋に皮を入れていく。数が多すぎて日が沈みそうだったので、途中から二つずつ。


「71、72、73個……!!」


 合計で73個。少なく見積もっても、今日だけで73匹のゴブリンを倒したというわけか!

 分身が12匹だから、経験値は12倍。倒したゴブリンは73匹。つまり実質俺が得られる経験値は……。


 ――ゴブリン876匹分。


 計算が終わった瞬間、全身に鳥肌が立つのを感じた。

 いよいよとんでもないことになってきたな。ゴブリンを100匹倒そうと思ったら、普通は5日くらいは考えないといけないくらいだぞ。


 ゴブリンの皮については整理がついてきたので、次はレベルアップについて。

 レベルについて把握するなら、一番手っ取り早いのはステータスだろう。


――


 アルクス・セイラント 17歳 男

 レベル11


 スキル

 <スライム>

 『擬態』……自身の体をレベル3のスライムに変化させることができる。

 『分裂』……擬態した体を分裂させることができる。最大は16。

 『自動操縦』……分裂したスライムを自動で動かすことができる。


――


 まずは何と言ってもレベルだろう。寝るまでは8だったレベルが11になっている。

 レベル11と言ったら、D級の冒険者くらいにはなれるんじゃないかな?


 ギルドのランクシステムはいたってシンプル。F級冒険者から始まって、最高のランクがS級。

 S級冒険者の平均レベルは39で、俺が前に所属していた残忍な刃ブルータル・エッジのダンはレベル40と聞いたことがある。


 まだまだだなあ。これまで戦闘をしてこなかったんだから当たり前なんだけど、やっぱりみんなに追いつくというのは大変なことだ。

 とはいえ、上のランクにいけばいくほど人数が減っていくという特性上、Dランクでも上位50%には入っているという。二日でここまでこれたんだから、良しとしよう。


 そして次に<スライム>の変化。今回は新しい能力が追加されるというよりは、もともとあった能力が強くなったようだ。


 『擬態』で出せるスライムの分身がレベル3になっている。レベル1から2でもかなりの戦力アップだったので、レベル3になればどうなるのか想像もつかない。

 さらに『分裂』で増やせる分身の数も増えている。こっちも地味ではあるがなかなか有用な効果だ。

 単純に考えて、経験値が16倍、倒せるモンスター16倍だ。これは強すぎる。


 しかし、今回のゴブリン狩りで3もレベルが上がったということは、さすがにそろそろこの草原エリアではレベルアップに限界がきそうだなあ。


 ……行くか? 他のダンジョン。

 これまでは危険だと思って近づかなかった他のエリア。森林や地下ダンジョン。そこにはまだ見ぬお宝が眠っていると聞く。

 今の俺ならいけるんじゃないだろうか。というか、行かなければさらなるレベルアップは望めない。


 その時、俺のお腹がもうたまらないとばかりにグー、と鳴りだした。


「あ……そういえば昼食も摂ってないんだった」


 ひとまず、明日のことは後で考えよう。今はとにかくギルドにクエストの達成報告をして、稼いだお金でおいしい夕食を食べよう。


 ゴブリンの皮をこれだけ集めることができたんだ、きっと相当な額の報酬がもらえるぞ。楽しみだな!

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