第10話 ざまぁ?てなやつ?パリピイケイケ軍団

「どうする?野宿って言っても、キメラ生物のこともある。奴らに見つかったら終わりだ」



「ましてや普通のキメラでないクマとかに出くわしても、大変だ。襲われたらひとたまりもない」



「う~ん。どうしたらいいんだ?」



 アリアスを筆頭とした若者軍団が去って以降、無能生産者たちは活発に議論を交わしていた。・・・まあ自分はいつものごとく、コミュ障すぎてさきほどのパリピイケイケ軍団たちと同様、ここの集まりの話の輪に入ることはできなかった。



「あんたも話していいんだよ。俺たちにビビる必要はない。だろ?」



 そんな温かい言葉をかけてはくれるものの、



「・・・・特になにも話せやしないので・・・・すいません」



 といって話の進行はすべて他の人達に委ねることとした。地面に落ちた葉っぱなり木の枝なりを見たりして、時が過ぎ去るのを待っていた。



「何かアイディアを思いついたら、積極的に発言してほしい。よろしく頼む」



「うむむむむ・・・・」



 野宿会議は行き詰っていた。今夜をどう過ごすかについて無能生産者らは真剣になって頭を悩ましていた。








 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~






「なあアリアス。今何分経った?今どれだけ歩き続けているんだ?俺たち」



「・・・・わからない。だけど大丈夫だ。もうじき小屋は見つかるさ」



「いつだよ!それっていつ!?なあ?なあ!」



 クローラはむしゃくしゃしていた。というのも山奥に進めば進むほどに傾斜はどんどん急になり、もはや人が歩いていくには厳しいところまで来てしまった。



「ちょっとクローラ!アリアスに詰め寄らないでよ!離れてシッシッシ!」



 とクローラが今にもアリアスの胸ぐらにつかみかかろうとしていたところ、オリビアはその二人の間に割って入り、止めに入る。



「けどよ~、もうこの際あきらめた方が良くね?無理っしょ?どう考えても行ける気しなくね?」



 若者軍団のうちひとりがそう声をあげる。



「何言ってんの?あんた!途中で投げ出す気?最初に野宿はごめんだっていったのあんだでしょ!?」



「状況が状況じゃんかよ~。俺もこうも見つからないものとは思わなかったし。仕方ないっしょ。俺戻るわ!引き返すわ!」



 するとその若者に呼応するように



「俺も」



「わいも」



「わたしも」



 と次々と元来た道を引き返そうとした。



「ちょっとミクまで!わたしたち友達だよね!?なんでそっちの方に行こうとするの?」



「でもやばいって。さっきもハミルトンが言ってたみたいに、あきらめた方がいいよ。どう考えてもこんな傾斜が急なところに、家とか建ってるとか思えないし。もう戻ろう?」



 ミクは親友のオリビアに対して説得を試みる。しかし当のオリビアはかたくなに前へ進みたがっていた。彼女はその態度を変えようとはしなかった。



「ちょっと待つんだみんな。絶対にある。絶対にこの先に小屋があるから、もう少しの辛抱だ。俺に黙ってついてこい」



「うっせえよ!アリアス!もう十分だ。俺らは下りる。この際仕方ねえや。無能生産者のあいつらの居るところに戻る。今夜は野宿することにするわ。じゃあな」



「おい!待て!乗るな!ハミルトンの方に乗るんじゃない!クローラ!」



「乗っちゃダメ!ミク!」



 しかしそんな彼と彼女の悲痛な思いとは裏腹に、クローラとハミルトンらは山を下り、元来た道を引き返していった。



「・・・・・・俺たち2人だけになってしまったな・・・」



「・・・うん・・・」



 2人の間には気まずい時間が流れていた。



 クローラたちの姿ももう見えなくなっていた。



「俺は引き続き、この奥を進んでみる。お前はどうする?」



 アリアスはオリビアにそうたずねる。



「うちはついていくよ。たとえ火の中、水の中、草の中でもね」



「ありがとうオリビア。・・・誰も居ない中、お前だけついてきてくれて」



「当然でしょ。あんたが土砂処理に志願したあの時は、あんたバカ?って思っちゃったけど、でもこんな世界になって、うちが生きてこられているのも、アリアスあんたのおかげだし・・・」



「み・・・みなまで言わなくていい!・・・そうとなればとっとと行くぞ!・・・オリビア・・・」



 オリビアの突然の胸の内を聞かされて、あたふたするアリアス。オリビアの発言を途中で遮ってしまった。



「・・・うん」



 すこし頬を赤らめるオリビア。アリアスが再び山奥の方へ進んでいくと、彼女も黙って後を追うようについていった。



 どこまでも突き進んでいく男女の二人。しかし進めど進めど、建物のようなものは見当たらない。そんな一行だったが、それでもオリビアは文句を垂らすことなくこの山の中を歩いていく。



「ちくしょう・・・ちくしょう・・・見つからねえ・・・」



 アリアスは小屋がいつまでたっても見つからないことに、いらだちを覚えていった。



「・・・・あんた少し休んだらどう?ちょっと気張りすぎだと思うよ」



 アリアスにそう言った。



「これぐらい平気だ。お前を野宿させられるか!だからこそはやく小屋を見つけなけりゃならない!」



「いいよ。・・・別にうちに気を遣わなくても・・・」



「いいや。それだと気がすまないね。野宿なんてことさせてたまるか。そのためにも見つける!なんとしてでも!」



 アリアスはそのように思いのたけを熱心に語りつつ、奥の方へ奥の方へと彼女とともに進んでいった。

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