※この作品は別作品に移動しました。（滅びゆく世界で『無能生産者』認定だと！？ ～コミュニティー先で強制労働なんて絶対に許さん！ 復讐を果たし、成り上がる！～に変更されました）

第11話 パリピらは踊らされる。踊り食いだ

「おい！ハミルトン！聞いてるのか！」

「なんだよ～さっきからよ～クローラ君」

「この道であってるのかよ！？ほんとにこの通りに進めばいいんだな！？」

「だと思うよ～。だからこうして引き返してるところじゃん？」

　ハミルトンとクローラはさきほどからこうして口論が絶えなかった。その言い争いは同行している連中もうんざりしていた。

「ちょっとやめてよ！さっきからうるさくてたまらない！」

「おい！よしてくれ！ミクもこういってるんだ。こんなところで喧嘩しないでくれよ」

　２人がこうして口論になっているのには理由があった。それはというと・・・・

「うるせえ！こいつのせいで道に迷ってるんだろうが！ちくしょうめ！お前についてきた俺がバカだったわ！」

「もういいって！なんでそうクローラはいつもカッカするの？」

　ミクは憤っているクローラに対して、強く責め立てる。

「そんなの今はどうだっていいだろ！遭難してるんだよ！俺らは！ソ、ウ、ナ、ン！」

「参ったな～。こっちだと思ってたのに、違ったじゃん？・・・・これやばくね？」

　そんな二人に対し、なんの悪びれるそぶりも見せずひょうひょうとしているハミルトン。

「みんなを先導しておいて、失態を犯しておいてもなお、こういう調子だから俺もカッカしてるんだよ！」

「・・・たしかに、わたしもその点は否定しないかも」

　ハミルトン一行は、元の道を順調に引き返してきたと思えば、進むにつれて見たことのない景色ばかりにぶちあたっていた。

　そう完全なる遭難だ。総勢１０名のハミルトン軍団は、暗い山中を迷ってしまった。

「これもあれも、全部アリアスのせいだ！くそが！あいつが有りもしない山小屋を捜しに行かなければこんなことになってない！」

「でも言い出しっぺはクローラ君じゃなかったっけ？小屋を捜しまわろうとか、まずはじめに言ってたよな？そうじゃなかったけ？これクローラやばいくね～？」

「うっせえ！もうお前は何もいうな！イライラするわ！」

　クローラはあたまをくしゃくしゃに掻き毟りか　むしながら、あたり一帯に８０ｄｂデシベルに到達するくらいの大声を出していた。

「ちょっといい加減静かにしてくれよ。ただでさえ夜は危険な生物でいっぱいになるって、お前さっき言ってたよな！大声出して、やつらに勘付かれたらどうすんだよ！」

「うっせえ！そんなの知ったことか！うおおおおおお！」

「おい！誰か！こいつの口を何かで縛りやがれ！ガムテープはどこだ！」

「そんなもん持ってきてるわけないでしょ！」

　もはやこの場は収拾がつかなくなっていた。クローラは騒ぎ立て、その周りには彼を押さえつけようと必死になっていた。まさに統率が取れないグループとはこのことだろう。

「とりあえず何か俺がこいつをしばれるようなものを探してくる！それまでだれかそいつを羽交い締めはがいじめにでもして、押さえつけておいてくれ！」

　そういうと１人、彼を拘束できそうなものを捜し、その場から離れていった。

「よし。とりあえず力ずくでこいつをおさえておこうぜ」

「おう・・・」

　～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～

　暗い山中に単身1人で、シュールレは今も暴れ散らかしているクローラを束縛できそうなものを探していた。

「・・・そうだなぁ、やっぱりツルみたく丈夫な材質のモノがあれば、拘束できる。でも見た感じあれでもない、これでもない」

　いろいろと樹木に生えているツルを見渡しているものの、ツル植物が生えている様子がなかった。しかも今は深夜帯の時間でもあるため、暗くて判断もつきにくい。足元もおぼつかないでいた。

「くそ・・・・なんか懐中電灯かなにか持って来ればよかったぜ。そういえば俺ら有能生産者は近くのキャンプに泊まり込みして、働く手はずになってたのに！騙された！くそ！なんで俺らが野宿させられなきゃいけないんだよ！」

　シュールレはそう1人暗い中、ぶちぶちと文句を言いながら、真夜中の中突き進んでいく。

「くそくそくそ・・・・腹立たしい、腹立たしい、腹立たしい」

　いらだちを隠せないでいるシュールレ。そんな中、

　グニュッ！

「ん？」

　暗くあたりも見えにくい中、ふと足元に何やら不快な感覚がした。

「なんだろうな？枝を踏みつけたにしちゃあ、感触が変だし」

　その踏んづけた物体の正体を探るため、彼は靴裏くつうらを見てみた。

「うげぇ・・・こ・・・これって・・・・生糞じゃん・・・」

　靴の裏には、これでもか！っていうほどにフンがこびりついていた。足元が暗いためかそこのフンの存在に彼は気が付かないでいた。

「なんて日だ！遭難はするし、フンは踏みつけるし・・・・・くそ・・・」

　ザザザザッ！！！

「え！？何！なんだっていうんだよ！」

　背後から突然、草木の茂みがガサガサ揺れる音が聞こえた。ふと彼は後ろを振り返る。

「えっ？・・・・嘘だろ・・・」

「・・・・・・・・・・・・・」

　彼の背後にはなにかがいた。その何かは彼を射程圏内にとらえる。

「・・・・まずい！やつらだ・・・」

　～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～

「よし！なんとか抑えることが出来たよ！」

「サンキュー！ミク。悪いな女の子まで手伝わせてしまって。なにせ俺らだけじゃこいつをおさえきれなくてさ」

「いいよ別に。わたし元々ジュウジツをやっていたから、こんなの朝飯前だし。・・・むしろわたし１人で対処すればよかったかもね」

「そうだな。俺ら全員、こいつにコテンパンにやられてしまったしな。そんなひ弱な俺らと違ってミクは手際よく、あいつを羽交い締めにしてみせたもんな・・・・すげーや」

　今やクローラは大きな木の幹にぐったりしておとなしくなっていた。クローラも見事なまでに女の子に羽交い締めされ、まんまと押さえつけられたことを情けなく思っているに違いない。

「シュールレの奴、どこまで行っちまったんだろうか。そういえば戻ってくるの遅いな」

「たしかに・・・・」

「ちょっと見てくるわ。みんなはちょっとそこで待っていてくれ」

「あ～ちょっと待ってよ。シュールレはそっちじゃなくて、こっちだって！」

　ミクがそう注意するも、キーンはシュールレが向かった方向とは全く違う方向へ行ってしまった。

「もう・・・どうしてこうも・・・・んっ？」

　ミクがキーンが向かった先を見つめている中、ふと背後から何か妙な感覚がしてきた。背筋をゾッとさせるような・・・

「・・・・なに？・・・なんか気味が悪い・・・」

　そうして恐る恐る後ろを振り向く・・・・

「・・・・うそでしょ・・・みんな・・・どうして・・・」

　～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～

「きゃーーー！」

「ん！？あの声は・・・ミクか！」

　シュールレを探していた途中、キーンに彼女の悲鳴が聞こえてきた。

「嘘だろ・・・みんな！」

　キーンは踵を返し、今来た道を引き返そうとした。

「・・・・・・おい・・・・」

　その束の間、ふと彼の足元から声が聞こえてきた。

「・・・・おい！シュールレ！お前どうしたんだよ！」

　下を見ると、そこにはキーンが探し求めていたシュールレ本人がいた。彼は全身血だらけで地面に倒れこんでいた。

「おい！なんでこんなところに・・・だれに襲われたんだ！おい！」

　シュールレの傷口が深い。出血がひどかった。とくに背中が深く切り刻まれているようだった。

「えっと・・・こういう時はなんだ・・・・傷口をなにかでおさえるんだよな・・・・なにかないか、なにかないか・・・」

　キーンは彼の出血を止めるべくできる限りの事を考えた。止血できるもの。

　彼はふと近場にあった傷口をすっぽりと覆える大きな葉っぱに目をつけ、それを拾い上げた。

「・・・これでこいつの背中の傷をおさえつければいいのか？・・・・どうなんだ！」

　本来ならば、なにかガーゼかなにかを用意できればベストなのだが、当然彼はそのようなものは持ち合わせていない。この葉っぱがその代わりになるのかどうか、彼は考えあぐねていた。

　そんなキーンをよそに、シュールレがぼそぼそと彼に対して何か小声で言ってるのが、聞こえた。

　キーンはその声に耳を近づける。

「・・・・・二・・・・ゲ・・・・・・テ・・・・・クレ・・・・・」

「うん？何言ってるかわからん！」

　ズシン！・・・ズシン！・・・

「！？」

　なにか足音が近づいてくる。それとともに何やらぼりぼりと音を立てつつ、こっちにむかって近づいてきていた。

　視線をシュールレからそちらの方へと向ける。そこには・・・・・・・

「おい・・・・食ってやがる・・・あいつらを・・・・こいつが・・・・」

　その足音の主である生物はまるでエビを踊り食いしているかのようにして、生身の人間を何人も踊り食っていた。

　クローラやハミルトンなどなど、その場に居合わせてしまったであろう約全員分がこのキメラに食い散らかされてしまったと思われる。