第27話 報告
「そ、そうか! モンスターを倒してくれたのか!」
異世界へ行き、リーシャと王様に魔王軍幹部を倒したことを報告した。
大変喜ぶ二人を尻目に、俺はゴンに耳打ちする。
「幹部って言う割には大したことなかったよな」
「所詮魔王の手下だろ。お前は魔王そのものなんだし、勝って当然じゃね?」
「そういうもんか? ってか俺は魔王ではない。【魔王】のスキル持ってるだけだから」
「それよかあの肉食いたいんだけど」
「お前はそっちの方が気になるのな。また後で焼いてやるよ」
「任せた」
見たこともない笑顔を見せ王様は口を開く。
「何か欲しいものはないのか? 遠慮なく何でも言ってくれ! 我らにできることは何でもしよう」
「じゃ、飯。出来たら一生分よろしく頼む」
「おい! 食事の用意をせよ! この者は底なしに食うから、ドンドン作れよ!」
「……おおっ」
王様の言葉に、ジュルリと涎を垂らすゴン。
ゴンの食欲に真っ向から挑むような真似をするとは……
破産しても知りませんよ?
食堂に通され、用意された肉に食らいつくゴン。
俺はスープを口にしながらリーシャと会話する。
「幹部って言ってもさ、実際のところは強くなかったんだよ。どういうことだろう?」
「つ、強くなかった!? あの化け物が強くなかったというのですか?」
「あ、ああ。気が付いてたら死んでた」
あの時はゴンと言い合いしてたからな。
槍を投げつけたことしか記憶にない。
実際、あれで絶命したのだろうけど。
「あ、あの、レオ様は今どれほどの強さを有しているのでしょうか?」
「俺? 俺は――これぐらい」
俺はステータス画面を開く。
リーシャは俺の横に移動し、ステータス画面を覗き込む。
あ、いい匂いがする。
「こ、こんなステータス、見たことありません!」
「そうなの? ゴンも似たようなもんだよな?」
「知らね」
ゴンは飯に夢中でこちらの会話に入るようなことはしなかった。
目の前の食事にだけ集中し、自分のステータスを見せようとしない。
ちょっとは空気読もうよ、空気。
「ま、まぁ、ゴンも俺と同じぐらいだよ」
「そうなのですね……これなら、幹部相手に圧勝するのも頷けます」
リーシャは俺のステータスを見て唾を飲み込んでいる。
そんなに強いのか、これ。
まだこっちに来てから数日だと言うのに、この世界の人間から見ても圧倒的になってしまったようだ。
これ以上強くなったらどうなるんだろ。
「……あの、レオ様」
「何?」
俺は再びスープを口にする。
「私と結婚してくれませんか?」
俺はスープをブーッと噴き出す。
何がどうなってそんな話になるんだよ。
結婚話が出るとゴンの食べる動きが止まり、こちらをジロリと睨む。
「け、結婚なんて早すぎだし、それに、リーシャのことよく知らないんだけど」
「もう結婚はできる歳です。私のことを知らないと言うのならば、結婚してから知っていただければよいではありませんか!」
え? この世界じゃそれが常識なの?
日本でも昔は知らない家に嫁いだりとかあったみたいだけど、もうそんな時代じゃないので俺には無理です。
それよりゴンの視線が痛い。
もしかして、嫉妬してるのか?
「な、何だよ、ゴン。さっきからこっち睨んでさ」
「お前さ……」
「な、何?」
「飯にスープ吹きかけてんじゃねえよ」
ゴンは嫉妬などしていなかった。
ただ食事に噴き出してしまったことを怒っていたようだ。
それは素直にごめん。
俺はゴンに頭を下げる。
「かかった分は俺が全部食うから」
「だったらいいけどさ。もったいないことはすんなよ」
俺は嘆息し、リーシャに向き直る。
「で、結婚するかどうかはとりあえずまだ置いておいて、何で結婚しようなんて思ったんだよ」
「強き者が欲しいからだ」
俺たちの会話に王様が介入する。
「リーシャが驚くほどの実力。それにまだこちらに来て数日ということみたいだが……これがしっかりと訓練を積んだらどうなるのか?」
「まぁ、普通に考えたら、もっともっと強くなりますよね」
「うむ。勇者を超える存在……それだけの力、結婚してでも繋ぎ止めたいというのは、国の将来を担う者から見れば当然のことだ。それに、強き者の妻となりたいと思うのも当たり前であろう?」
「はぁ……そういうものなんですか」
王様とリーシャは仲良く頷く。
やっぱ理解できないわ。
相手が強いから結婚するって、どんな理由だ。
「で、君たちの世界には、他にも強い者は存在するのか?」
「さぁ? でも、自分が通っている学校の中では、少なくともいないと思いますよ」
「多分だけど、オレらより強いのは存在しないよな」
「ああ」
「ふむ……では、君たち以外は大したことないということなのか?」
「そう認識していただいて結構です」
だよな?
プロの格闘家でも俺たちより弱そうだし、強いのはいないよな?
実施戦ったことはないけど、見るからに弱そうだし。
まぁ、それだけ次元の違う能力を得てしまったということだろう。
「ま、現段階でオレらより強いのがいても、すぐに追い抜きそうだよな」
「ああ」
「特に大食いなら負ける気はしない」
「それは絶対に勝てることを断言しておこう」
ゴンに食欲で勝てる奴が地球に存在するかよ。
何故か胸を張る彼女のことを見て、俺は頷き同意した。
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