第4話 スライム
「腹減った」
「腹減ったって、さっきまでポテチ食べてたよね?」
「なくなったから腹減った」
ポテチの袋を逆さにしてゴンはこちらに視線を向けている。
こいつは無尽蔵に食べてられるのかよ。
ってか、どれだけ食っても足りないのかよっ!
「我慢するしかないな」
「我慢するぐらいなら戦場に出る」
「戦場に出るって、モンスターと戦うってことか? バカなことは止めておいた方が……って、おい」
ガチャッと扉を開いて、ゴンは外へ出て行く。
俺も恐れながらゴンについて外へ出た。
「おいおい、モンスターだぞ。死んだらどうするんだよ」
「死んだら骨ぐらいは拾ってくれ」
「お前は漢かよ! カッコいいこと言ってんじゃねえ」
俺はゴンの前に出て、緑色のモンスターを見据える。
「あれって、スライムだよな……【ダンジョン】に出現するモンスター一覧みたいの、ネットでみたことあるわ」
「じゃ、オレらでも勝てないこともないな」
「かも知れないけど! とにかく俺がやるからお前は下がってろ」
「……何でお前が戦うんだよ?」
「女のお前にそんなことさせられるかよ。まず戦うなら俺だろ」
「レオって変に男らしいとこあるよな」
「もっと褒めてくれていいんだぜ?」
「でもビビりだよな」
「けなすな! 褒めてくれって言ったんだ」
俺はビクビクしながらスライムに近づいていく。
腕力は2だったよな……普通にやって勝てるような気がしない。
正攻法での戦いは避けて安全に確実に勝てる戦いをしよう。
俺は足元の小石をポケットに詰められるだけ詰め込み、そのうちの一つをスライムに向かって投げつける。
愛らしい顔をしているスライムは俺に気づき、飛び跳ねながら俺に接近して来た。
「よし、来たな」
俺は木の上に登り、スライムが下まで来るのを待った。
そして奴はこちらに視線を向けるだけで、登ってこれるような気配はない。
あ、これは勝ち確定というやつではないだろうか。
俺はここぞとばかりに、ポケットの中にある石を投げつけていく。
なんということない、変哲もない石。
これでどれぐらいの効果があるのか、まずはそれを確かめておきたい。
石がスライムにぶつかる。
衝撃に少し歪むスライムの体。
これでもそこそこダメージが通るのか……
ここからなら相手の攻撃は届かないが、しかし、この様子なら倒すまでまだ時間がかかりそうだ。
だが俺は油断など一切せずに、次々と石をスライムに投げつけていく。
その数およそ、30発。
スライムは生命力が低いのか、30発の石を喰らった時点でフラフラとなっていた。
俺は弱ったスライムに向かって飛び降りる。
自然落下に身を任せて、全体重を乗せてスライムに足を向ける。
もやしと揶揄される俺の体重でも、スライムには十分重たかったらしく、軽々と相手を踏み潰すことができた。
「よしっ! 勝ったぞ!」
勝利にガッツポーズを取る俺。
パチパチと手を叩きながら、ゴンが近づいてくる。
「やるじゃん。あまりカッコよくは無かったけどお疲れさん」
そう言ってゴンは俺の足元に落ちているスライムの体を手に取った。
「え? 何するの? え? ゴン、何するつもり?」
ゴンの両手一杯にスライムの死骸があり――彼女はあろうことか、それを口にし出した。
「え? 何やってるの? 何食べてんの、ねえ?」
俺は唖然としたまま、彼女がスライムを食す姿を見つめていた。
「美食家としては、モンスターがどんな味をしているのか確認しておきたくてね」
「それは美食じゃない! ただのゲテモノ食いだ!」
ガブガブスライムの体を食べるゴン。
結局その全てを食べきってしまった。
「うん。マズくはない。空腹よりはマシかな」
「マジかよ……」
青い顔をしている俺の後ろ側に視線を向けるゴン。
どうやら俺の背後に、スライムが出現していたようだ。
「おいおい……また戦えってか!」
「ちょっと下がって」
「えっ?」
ゴンが俺の体をぐいっと引っ張った。
軽い俺の体は簡単に彼女の後方にまで下げられる。
するとゴンは、接近して来るスライムに対して、凄まじい蹴りを放つ。
それはトゥキック。
つま先でスライムの体を蹴り上げた。
ボゴン! と激しい衝撃音が響き、スライムは一撃で死亡したようだ。
「え? 俺あんなに苦労したのに……」
「オレの力が強いんじゃなくて、レオでもできんじゃね?」
ゴンはジュルリと涎を垂らし、スライムを食し始めた。
いや、今の俺では無理ではなかろうか?
ゴンの頼りがいがあり過ぎる腕力に俺はそう感じた。
まぁ、結果として、二匹のスライムを倒せたからよしとするか。
「ん?」
ゴンがスライムを食べていると、頭の中でチロリンという機械音のような物が聞こえてきた。
何事かと思いステータスを開いてみると――
なんとステータスが上昇しているではないか。
ブワッと全身の体温が上がる。
さっきより強くなった。
その感覚に酷く興奮し、高揚したまま俺はステータス画面に釘付けになっていた。
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