第25話 囚われの王女
僕たちは、アスタリア王国軍の総司令官であるネターニャ第三王女を
「僕は辺境伯へ戦況報告に行ってくる。遥は王女を連れてテントで待ってて」
「分かった」
僕は遥かに、一言告げると、マグカート辺境伯の許へ向かった。
辺境伯の警護の兵士達は僕の顔を見ると、直ぐに辺境伯へ取り次ぎ、辺境伯の執務室へ案内してくれた。
マグカート辺境伯は夜明け近くにも関わらず、僕を待っていた。
「閣下、夜分に恐れ入ります」
「遅くまでご苦労。戦果を報告してくれ」
「敵方の攻城兵器を6基全て破壊、食料備蓄基地と思われる荷車の集積所3か所を襲撃、内2か所は壊滅的損害を与えられたものと思われますが、残り1か所は恐らく30%程度の損害をかと思われます。味方型の被害は特にありません。以上、戦果報告となります」
「よくやった。攻城兵器が破壊され、
「ご推察の通りかと」
「今日の軍議が楽しみだな。疲れているとは思うが軍議の出席だけは頼むぞ。場合によっては遥殿は静養してもらっても構わぬが、
「はっ」
「本当に良くやってくれた。先ずはゆっくり休んでくれ」
僕はマグカート辺境伯への戦況報告を終ると、テントに戻り結界を張った。
「これで、ここでの音は外に漏れなくなった。さて、ネターニャ王女様。ネターニャ王女様にはしばらく僕たちのテントに留まってもらいます」
「なっ、なに、私はアストリア王国の第三王女だぞ。王族の捕虜に対する正当な扱いを要望する」
「んー、それでもいいけれど、敵陣で総司令官としての身分明かすと、あまりいいことにならないかも知れないよ。戦場には狂気が潜んでいる。特に、ここは、
「わっ、わ、私を、私を…」
ネターニャ王女は顔を蒼ざめさせながら言葉にならない声を上げる。
「ヨースケ、王女様を
遥が顔を横にコクンと傾けながら尋ねてくる。
「遥さん、そういう危ない発言は…」
「男の子は王女様や姫将軍を無理矢理隷属させ、手籠めにするのが好きと私の読んだ本に書いてあった」
「遥さんや、あなたはどんな本を読んでるんですか…」
「ヨ、ヨースケ、私、王女様を手籠めにするの邪魔しないから、ちゃんと協力するから、私を捨てないで」
遥が涙目になりながら叫ぶ。
「貴様、卑劣な奴目、例え、私の身体を奪えても、私の心までは奪えないからな」
ネターニャ王女もすっかりその気になり始める。
「ヨースケ、まず、この女の服を脱がすところから、それとも縄で縛りあげる?」
「やめろ、お前、女だろ、この男の非道を許すのか」
「お前は敵国の将軍、ヨースケは私の大事な人。どちらに味方するかは明らか」
「グヌヌ」
「あっ、私、亀甲縛りできない…」
遥は更にあらぬ方向へ進んでいく。
僕は怪しげな世界へ想いを寄せている二人の言葉を
「あ、あの、盛り上がっているところ悪いけど、二人とも僕の話を聞いてくれるかな」
僕は怪しげな方向に進んでいる遥とネターニャ王女の話を横から断ち切り、王女様に話し掛けた。
「まずは王女様、
「本当か、信じられぬ。大体、何故、私の捕らえたことを内密にしているのだ」
「王女様のことを隠すのは、いざっていう時に、僕らの一存で王女様を解放できるようにしておくためです。王女様を捕らえたことが公になれば、王女様は帝都に召喚される可能性が高いかと思います。そして、帝都に召喚されたら、大陸制覇の野望を抱く皇帝シュナウザーの性格を考えると、身代金という条件での解放の可能性はかなり低いかと思えるし、どういった展開に進んで、王女様の身がどうなるかは、僕らには全く読めません。王女様にとって愉快でない方向、女性にとって生き地獄的な扱いに進む可能性もないとは言い切れません。それと、王都に召喚されず、この城塞都市に幽閉されることになったとしても、帝国軍兵士から滅茶苦茶恨まれている敵方の女司令官に対する仕打ちが酷いことにならないとは言い切れませんしね」
「………」
ネターニャ王女は顔を蒼くさせたり、真っ赤にさせたりしながらも、言葉が出ない。楽しくない自分の未来を創造でもしているのだろうか。
「王都に連れてかれても、この城の地下牢に
遥が再び変な方向へ話を持って行く。
「くっ、殺せ。凌辱は受けない。私を、殺せ」
「わっ、『クッ、コロ』だ。これが伝説の『くっ
「遥、いい加減にしなさい。遥だって、敵に捕らわれ知らない男達に凌辱されそうになったらすごく嫌だろ。自分が嫌なことは人にはしない。分かった、遥」
「…ごっ、御免なさい。私、ヨースケ以外の人とは、すごっく、嫌だ。もし、そうなったら死ぬ、絶対死ぬ。ごめんなさい」
遥は泣き出した。
「分かればいい。王女様に謝りなさい」
「王女さま~、ごめんなさい」
「王女様謝罪します。僕らは決して
「分かりました。あなた方を信じましょう。というよりも、今の私の立場では、あなた達の胸先三寸で私の取り扱いが変わることは理解できます。ですから、信じるしかありませんし…」
「ありがとうございます。王女様の賢明なご判断に感謝します」
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