21回目の誕生日
牧田ダイ
第1話
またこの時期が来たんだね。
時間の流れって速いんだね~、気づいたらだよ。
この時期になるといつも思い出すわ。
あなたとの思い出。
あなたは夜泣きがひどくってね、毎晩少ししか寝れなくて困ってたわ。
離乳食に移ろうってときもなかなか食べてくれなくってね、私頑張って作ってたからけっこうキツかった。
でも寝顔を見てたらね、本当にあなたが可愛くて頑張れたの。
年中さんぐらいの時かしら、おもちゃ屋さんの前でおもちゃをねだられたこともあったね。
あの時は買ってあげられなくてごめんね。なんせ女手1つだから余裕が無くて。
昔からあなたは察しがいい子だったからそれもわかったんだと思うけど、その時から色々我慢させたのに駄々の1つもこねなかった。正直言うとありがたかったけど、今でもただただ申し訳ないわ。
小学校に上がるとあなたはテレビで見た野球選手に憧れて野球を始めるのよね。毎日ドロドロのユニフォームを選択するのは骨が折れたけど、あなたが本当に楽しそうに野球のことを話すのを見て、お母さんはうれしかったのよ。
でも、あなたが中学に上がってすぐぐらいに、私が体調を崩して入院なんかしたから、大好きな野球も我慢させちゃったね。親バカって言われるかもしれないけど、もしあなたがあのまま野球を続けることができれば、プロになれていたと思うわ。
野球ができなくなったあなたは、今度は医者になりたいって言ったわね。思い違いだったら恥ずかしいんだけど、入退院を繰り返していた私の為だったんでしょう?無理しなくてもいいって言ったけど「もう決めたから」の一点張りで。
そこからあなたは本当に勉強も頑張ってた。
地元で1番の進学校に首席で入学した時には、それはもう誇らしかったわ。
でもね、制服を着たあなたを見てね、こうやって子供はどんどん成長して親の元から離れていくんだなーとか思っちゃって。少し寂しくなったこともあったのよ。
高校時代はどうだった?楽しかった?
もうこの頃から私は病院から出られなくなっちゃってね。懇談にも行けなかったから。
でも代わりに行ってくれた弟が褒めてたのよ。
「あの子は成績も良くて、いつも先生にほめられてる」って。
弟も随分あなたのこと誇りに思ってたみたいね。
弟には感謝してもしきれないわ。だって私がいない間ずっとあなたの面倒を見てくれてたんですもの。
あなたがこれから生きていく中で恩返ししてあげてね。
そういえば初めて彼女ができたのもこれぐらいじゃなかった?
一緒にお見舞いに来てくれて、とってもいい子だったの覚えてるわ。
あの時はびっくりして私の方がドキドキしちゃった(笑)
今も仲良くしてるみたいでよかった。これからも末永く幸せにね。
長々と話しちゃってごめんね。どうしてもこの時期になるとね。
あなたにもっと好きなこと、あなたがやりたいことをさせてあげたかった。
あなたが好きだった唐揚げも、もっと作ってあげたかった。
授業参観や野球の試合も見に行きたかった。
あなたの成長を生きて見守りたかった。
でも、もうできない。
私は死んでしまったから。
ごめんね。最後まで我慢させちゃって。
何か謝ってばっかだね……、私。
本当にダメな親だね……。
ちょっと遠いけど、私はここからあなたを見ている。
去年、大人の仲間入りをしたあなたには、お節介かもしれないけど、あなたを見守り続ける。
それが今の私に唯一できる、親としての仕事だから……。
最近は大学が忙しいみたいね。医学部だもんね。
勉強ももちろん大事なんだけど……、体には気を付けて……。
あなたを生んで本当に良かった。
私に幸せをくれてありがとう。
生まれてきてくれてありがとう。
そして、21回目の誕生日おめでとう。
21回目の誕生日 牧田ダイ @ta-keshima
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