第6話
「…高杉?晋作?」
下関に住んでいる人間ならば誰もが知っている名前だ。
下関には高杉晋作の銅像があり、一平がモズ子に告白した場所も高杉晋作の銅像の前だった。
そんな高杉晋作が目の前にいる。
しかも自分を仲間にしようとしている。
あいにく一平の服装も花火大会の為に着た浴衣姿だったので、時代的に溶け込んでいて、高杉も違和感など、全くない様子だ。
一平は何となく面白そうだったので、高杉の仲間になる事に決めた。
数日後、一平は高杉に「連れて行きたい塾がある」と言われ、連いて行くと「松下村塾」という小屋に辿り着いた。
そこでは吉田松陰という男が熱く語っていた。
日本史の教科書で見た事のある顔に、思わず一平は小屋に入って開口一番に「あ、吉田松陰だ!」と感嘆の声を上げた。
「君、先生と呼びたまえ!吉田松陰先生と呼びたまえ!」
その塾に通っている、桂小五郎という男にツッコまれた。
生で吉田松陰の話を聞いているうちに、一平の心は次第に熱くなり、気が付くと「尊王攘夷」と口ずさむ様になっていた。
相変わらず屁をこけば5分前に行ってしまう面倒くさい人生だが、一平は生まれて初めて自分の人生を面白いと感じた。
ある日、高杉が酒を飲んで暴れていた。
「クソッタレがー!どいつもこいつも松陰先生の意志を理解しやがらねぇ!馬鹿ばっかだ!こんなクソッタレな世に生まれた事が悔しいぞ!」
周りがなだめても暴れる事をやめない高杉に一平は近寄り、話しかけた。
「高杉さん!」
「何だ?伊藤君!」
「おもしろき、こともなき世を、おもしろく、すみなすものは、心なりけり。」
一平のこの言葉を聞いた瞬間、高杉は暴れる事をやめた。
そして息を吐き出し、一平に向かって言った。
「実にいい言葉だ。僕の辞世の句にしたいくらいだ。」
そして、吉田松陰は幕府に捕らえられ、処刑された。
一平は吉田松陰がこうなる事は日本史の教科書で読んでいて知っていたが、涙が枯れるまで泣いた。
そして、日本を変えてやろうと心から誓った。
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