第5話
「何で関門大橋がなくなってんだよ!?」
一平は困惑した。
確かに花火くらいの大きさの音がする屁をこいてしまったが、たかが屁ごときで関門大橋が吹き飛ぶとは思えない。
一平は現在いる場所から移動しようと歩き出したが、街灯が全くついてなく、辺りは真っ暗闇で覆われていたので歩くのも困難だった。
しばらく歩いていると遠くの方で明かりが見えた。
その明かりを見ると街灯でも懐中電灯でもない事がわかった。
火だ。棒の上に火がついている。松明(たいまつ)を持った男が立っていた。
一平は今の状況がわからずにいたので、その男に何か聞こうと近寄った。
「あのー、すみま…」
「何者じゃー!?名を名乗れぇ!」
一平が話しかけようとした瞬間に、その男も一平の存在に気付いたようだ。
「い、伊藤と申します。」
その男の叫び声に圧倒され、びびってしまった一平は坂口一平という本名ではなく「伊藤」という偽名を使ってしまった。
「伊藤?こんな所で何をしておる?おぬしは長州藩の者か?」
「長州藩?」
長州藩とは江戸時代の頃の山口県の呼び方だ。
一平は理解した。
花火のような屁をこいて江戸時代までタイムスリップしてしまったのだと。
「はい。長州藩の者です。長州藩士、伊藤俊輔です。」
一平は偽名を貫く事に決めた。
「伊藤とやら、ここで何をしておった?」
不審がる男は「伊藤」と名乗る男に質問を続けた。
「関門海峡の花火大会に遊びに来ていた」と言っても話が通じないだろうから、適当な事を言ってこの場を凌ごうと思った。
「えーと、脱藩をしようと考えていたら、腹が痛くなったので、結局、脱藩は諦めて脱糞をしておりました。」
言い終えた後、一平は我ながらセンスのない事を言ってしまったと恥ずかしくなってきた。
「ワッハッハッハッ!!脱藩を諦めて脱糞とな!ワッハッハッハッ!!」
意外にも、その男にはツボだったらしく、腹を抱えて大爆笑していた。
そして、その男はようやく笑い終え、言葉を続けた。
「お前、面白いのう!気にいったぞ!僕の仲間にならないか?僕の名前は高杉晋作というんだ。今からこの日本を変えてみようと思うんだ。」
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