第4話

ひゅーーー…





ばばばばばっ!!!





一平は夏の花火大会に遊びに来ていた。



ここ、一平の地元の山口県下関市では毎年8月に本州と九州を繋ぐ関門海峡で花火大会が行われる。



高校を辞めてからというもの、何もする事がなく暇を持て余していた一平にとって、こういう催し物は貴重だった。




浴衣を着て、片手にリンゴ飴を持ちながら一平は花火を見上げていた。




元カノのモズ子を花火大会に誘ったが、断られたので少し憂鬱な気分だった。




「よう、一平ちゃん。久しぶりじゃん!」




一平が振り向くと、ガラの悪そうな男三人組が立っていた。



「一人で花火の見物たぁ、随分と寂しいじゃねーの。え?一平ちゃんよ。」



そう言ってきたのは、一平が高校を辞める前にボコボコに殴った男だった。

殴ったのは、もう数ヶ月前の事だが、その男の目つきを見ればまだ根に持っている事は明らかだった。



「ちぃとツラ貸せや。」



一平は三人組に連れられて関門大橋のふもとまで来た。



周りに人がいない事を確認した三人組は一斉に一平に殴りかかってきた。




一平は腕っぷしには自信があった。


たちまちと、その三人を返り討ちにした。



「う、うう…」



自分の腹を抱えて倒れ込んでいる男に一平は近寄った。「ま、そういう事よ!俺ったら強いからさ。二度と近づいちゃダメだよ♪」一平はほどけた浴衣を直しながらその場を立ち去ろうとした。




「ま、待てよ…」



「やれやれ」、という表情で一平は後ろを振り返った。



男はナイフを持って立っていた。


目を見れば本気だと一平は思った。本気で俺を刺す気だと…



「死ねぇぇぇ!!」



ナイフを持ったまま男は一平に一直線に向かって来た。



「マズい…刺される!」



一平は後退りした。





ひゅーーー…





ばばばばばっ!!!





その音は花火の音ではなかった。

一平の屁の音だった。

花火のような大きい屁の音だった。






一平は身の周りの異変に気がついた。



周りの建物が今までよりも少ない気がするのだ。



何より一番驚いたのは、今まで架かっていた関門大橋が失くなっていた事だ。




「ここは、何処なんだ?」

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