第58話 私の目的をお教えしましょう


 持ち込んだ布団の上に乗って彩夢は全身の力を抜いた。


「ふぅぅマイナスイオンの塊ですぅぅ。植物たちが私に癒しを与えてくれますよこれ」


「あはっ、ここは単に手入れされてないから植物が伸び放題なだけだけどね」


「いえいえテラさん、そんな謙遜することはありませんよ。植物ってのはどんな形であろうとそこにいるだけで人に安らぎを与えてくれるものですよ」


「多分そこまで全部を許容できるのは彩夢ちゃんくらいだと思うよ」


「そうですかねぇ。世には森林浴ってのがありますし多分人間の魂には本能的に植物を求める気持ちがあると思うんですよ……ふにゅぅぅぅ」


 布団と一体化するんじゃないかと思うほどにリラックスをして大きく息を吐いた。


(それにしても彩夢ちゃんって一体どんな神経してるんだか、未来ちゃんと雅也君はどっかのホテルに行ったらしいのに一人布団持参でここまであたしの話し相手しようだなんてさ。


まあ嬉しいんだけどこんなカビの匂いまでしそうな場所で、しかも幽霊のあたし相手にさ)


 すると楽しそうな笑い声が布団の中から聞こえてきた。


「フフフフ、テラさん人間ってのはそう言うものなんですよ」


「え?」


「わざわざ私がここまできて変な奴だなって思ってるんでしょう」


「あらら、なんでわかったの?」


「ここに行くって言った時に雅也さんに教えていただきました。きっとテラさんは私との話がひと段落するとその手のことを想うだろうって」


「なーるほど。雅也君なら彩夢ちゃんのこと色々分かってるだろうとは思ってたけど……あたしのことまで予想されちゃったかぁ。なんかムカつく」


「まあまあ、人に理解されるって嬉しいものでしょう。


 私ったらこういう性格ですから昔は私の行動を見る人聞く人全く理解できない、なんなら理解しようともしない人がたくさんいたので誰かに理解されるってことを諦めてたんですよ……ですから」


 彩夢は本当に幸せそうに笑った。


「雅也さんに会えて本当に嬉しいんですよ」

「甘いなぁ……コーラより甘い顔してる」


「そうですか……そうだったとしたら光栄ですね。いえ、計画通りともいえるでしょう」


 また楽しそうに笑った彩夢を見てまたテラはキョトンとしてしまう。


「ありゃ?そこは普通照れちゃうところなんじゃないの?」


「照れるですか……テラさん、せっかくお近づきになれたことですし一つとっておきの秘密をお教えしましょう」


 布団から身体を出して彩夢は何かの舞踊を舞った。それは少なくともテラの記憶にはない踊りであったし、実際彩夢自体も自分が一体どういう種類の踊りをしているのかさっぱり分かっていなかった。


 ただ気分が高まったから踊りたくなったそれだけの話なのである。


 そしてそのままミュージカルのように喋る。


「私の目的はもちろん第一は時の止まった世界を元に戻すことです。でもサブプランを持っていない程行き当たりばったりな生き方をしているわけではありません」

(え?人生出たとこ勝負だと思ってた)


「第二の目的は人類が生まれた瞬間から連綿と受け継いできた使命を受け継ぐこと、まあつまりは子供を作ることです。


 愛が無くても子供を作ることはできますよ、でもどうせなら……せっかく愛を知ることが出来る人間として生まれたならば大好きな人との子供を作りたいじゃないですか」


 テラの顔は彩夢の言葉聞くたびに顔が楽しく蕩けていく。


「いいですか?つまり私の目的は雅也さんのことを好きになることなんです!!!勿論LOVEの方で」


 高らかに宣言した彩夢はご清聴ありがとうございましたと言わんばかりにぺこりと頭を下げた。



 キラキラさせた瞳でテラが笑う。





「あはっ。やっぱりあたし彩夢ちゃん達のこと大好きだ!!!!!!!」

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