第54話 当たりかもね
三人がやってきた神社は寂れていたというよりはもはや潰れていた。
「ほぉ、こりゃえらく年期入ってます。あ、見てくださいあそこの手水所には普通にこけが浮かんでますよ」
「うわ本当だ……で?何しに来たの?」
未来の質問に二人は一瞬顔を合わせた後に同時に口を開いた。
「幽霊探し」
「露出狂探しです!!!!」
まあ同時に口を開いたからって別に同じことを想っているのは限らないのが人間と言うものである。
「ちょ、ごめん、何言ってんの?」
「ああ、同時に言っちゃったんで聞き取りずらかったですか?まあ聖徳太子にはそう簡単になれませんよね。
私が露出狂探し、雅也さんが幽霊探しって言ったんです」
「いや、それは聞こえてたわよ。聞こえてた上で言ってんの。もう、彩夢はともかくマー君までなにトンチキなこと言ってんの?」
「いや、僕達がこんな目に遭ってからなんやかんやで体感時間2年以上経ってるじゃんか。そんなに経っているのに未だ打開策どころか打開策につながる手がかりの一つもない。そうなるともう真っ当な手段を講じるのは無理があるんじゃないかって思ってさ」
「ふふ、真っ当な手段ってのも何が何だか分かりませんしね。笑いながら泣いてる女の子よりもどう立ち回っていいのか分かんないのが時の止まった世界ってやつです」
どうして彩夢が言葉を引き継いだのかはよく分からなかったが雅也は「そういうこと」と言っておいた。
「まあマー君の言い分も分からなくはないけどだからって幽霊はね」
「まあ幽霊は見つからなくても露出狂なら見つかるかもしれませんからワクワクですね」
「いや待ちなさい、さっきはツッコミ忘れたけど露出狂探しって何?バカなのあんた」
「うふふ、趣味とは人それぞれ。受容し尊重しあうのが人として大切なことだと思ってますよ」
「言ってることは立派だけどただの犯罪者だからね」
「いや、そう言うのじゃないんだよね」
雅也は首をコキりと鳴らした。
「僕が聞いた話によるとこの辺に来た人は何故か服が疼くらしい」
「服が疼くって何!!??」
「さぁ?それで脱ぎたくなるんだってさ。まあ僕が高校通ってた頃どっかから流れてきて一瞬で消えた噂話だから信憑性なんてほぼゼロだし、百歩譲って本当だったとしても根っこは変態たちの叫びだと思う。
でもまあもし神社が舞台ではあるし一応念のため、万が一ってことがあるし何より暇だったからここに来たってわけ」
じゃりじゃりと舗装されていない道を歩くだけで音がなる。一年くらい前に勝手に拝借したスニーカーであるがそろそろ寿命かななんて雅也は思った。
「それにしてもいませんね露出狂……神社って今時来る人もいないですしおまけにここまで廃れてるんですから裸になってもバレなさそうなもんですが」
「あんたってマジでもう……誰も来ないなら見せつけられないってことだから誰もしないでしょう」
「いえいえ、世界に目を向ければ裸でいることが自然だという考え方だってあるんですよ。自身の劣情の為にするのではなくそういう高尚な精神の元に行う方だってきっといるはずです。そしてそう言う方なら人気のない所で脱ぐはず!!!」
強く拳を握り締める理由が納得できない未来だがまあそんなことはいつものことだと自分を納得されて近くにあったくじに目を向けた。
「ふふ、こういうところに来るとひきたくなるのが私なのよね……えっと大吉来るかなっと」
そうしてガサゴソとくじを選んでいると明らかに違う音が何処からか聞こえてきた。
「何!?」
「どうしたんですか?」
「今なんか音がしたの。マー君じゃないよね」
「違うよ。今僕も聞いてたんだけど……あの賽銭箱のあたりから聞こえてきた」
三人の間に、彩夢にさえも緊張が走った。
(まさか……冗談半分だったのに本当に何かいたのか?)
(風とかじゃないですよね、だって風も吹かないんですもん)
(マー君とだけ聞こえた。彩夢ったらどんだけ興奮して露出狂さがしてたんだか)
恐る恐る雅也が賽銭箱に近づき辺りを見回してみるが何もない。
ならばと言わんばかりに中身を覗いてみると
「お」
何かと目が合った。
(これは……マジで当たりかな?)
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