追加エピソード・天音純
comeback
――アメリカ・ロサンゼルス
天音純はいつものように事件を追っていた。
犯罪組織KARASUが解体されてから約1年。世界の犯罪は急激に増加した。
組織の意思を継ぐもの。時代の先頭に立ちたいと革命を起こすもの。理由は様々だったが、世はまだ探偵の存在が必要不可欠というわけだ。
「――ったく、これじゃあ駄菓子屋探偵じゃなくてただの探偵じゃねぇか」
酢昆布を噛み締めながら天音は文句を風に乗せていた。
天音はバンクタワーを反対側のビルから双眼鏡で見張っていた。
それは、テロを企てているリーダー・ケビンジャーバズの部下が今日の深夜、ビルの下見をしているという情報を掴んだためである。
「君、ちょっといい?」
後ろから声をかけられた。
しかし。
今はそれどころではない。
天音は双眼鏡から目を離さずに、「今忙しいんだ、後にしてくれ」と返事した。
「何してるんだ?」
「見ればわかんだろ? 世界平和活動だ」
「それは興味深い」
「――――?」
天音はしばらく会話をしていて、やっと、彼がどこかおかしいことに気づいた。
そうだ。
ここは関係者以外立ち入り禁止のビルの屋上であり、強引に入るにしても、空からハンググライダーなどを使わなければ不可能だ。
――――只者ではない。
天音は急いで振り返ると、40歳くらいの男が後ろに腕を組んで立っていた。
「あんた……何者だ?」
「失礼、自己紹介が遅れた」
彼は礼儀正しく、名刺をスーツから取り出して渡した。
「アラン・ピンカートン。年齢41歳。喋れる言語はだいたい20カ国程度。趣味はノンフィクションストーリーの追跡。余命半年の女の子が助かった話とか、トンネルに生き埋めにされた男たちの生還までの物語とか。特技はドライブかな。深夜の山道、ドリフトの連続で落とした女の子の数はざっと20人。ついでにお金持ち。職業はそうだな、今はボランティア団体とでも言っておこうか」
「――――は?」
急にどうでもいいことまで喋り出した彼に天音は呆然とした。
「アランだっけ? とりあえず邪魔はしないでくれよ! 今取込中なんだ」
「7階から上の電気が消える」
アランがそう言った3秒後、その言葉の通りに事は動いた。
「9階右の窓3枚が吹き飛ぶ」
――――パリンッ!
天音は目をその方向へ動かすと同時に指定の窓は吹き飛んだ。
「ローブで逃げようとする犯人を下のプールに蹴り落とし、息を吸いに顔を出したところを逮捕する」
ロープを握った男が窓から出てきた。
アランの言う通り、下にはプールがあり、その周りを既に黒服を着た警官らしき者たちが取り囲んでいた。
――――ッ
男は腰付近を何者かに蹴られ、真っ逆さまに落ちていった。
『犯人確保ー!!』
サイレンの音がロスの街に響き渡った。
天音はただ固唾をのんで、それを見るばかりだった。
「これはお前が指示したのか?」
「ああ、そうだ」
「警察……いやFBIか?」
「違う」
アランは笑いながら首を振った。
「名刺をよく見たまえよ」
貰った名称に目を落した天音はそれをそのまま口に出した。
「――――シークレット・エージェンツ」
男は握手を求める手を差し出してきた。
「あの男を今捕まえているのは、シークレット・エージェンツの一員、フィンガーズだ。我々の組織はびっくりするほどに小さい。そして、シークレット・エージェンツの名を持つものは今私以外居ないんだ。協力してくれるかい? 『駄菓子屋探偵』天音純くん 誰も立ち向かえない世界規模の犯罪が刻々と迫ってきている」
「――――っ」
(終わり)
――――――――――――――――
<兎>
一度完結させてからしばらくたって、新たな話の追加をしてしまいすみません。
これでおそらく駄菓子屋探偵は終わりだと思います。
完結してから地の文などをしっかり直すつもりが他の作品の執筆に心が行ってしまい、まだできていません。
駄菓子屋探偵 ミステリー兎 @myenjoy
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます