第26話 探偵たちの終着点(エンドポイント)
総合管理室――
カチャ――
「手をあげてその場で立ち上がってこちらに一歩近づけ」
「よく勇気が出ましたね、あの入力パネルに触った時、『間違うと弾丸が眉間に当たる』と出たはず。大人しく待機してくれればまだよかったものを……」
「俺たちは探偵だ」
二箇所の扉から同時に天音純と天音雫が入ってきたことは予想外だったようだ。
「今まで何やってたの?」
「寝て起きて、頭の体操に扉の暗号を解いただけだ」
「ここへは?」
「大神先生が。安心しろ、千賀と連絡取ってすぐにアクアパークに行ってもらった、そっちもヤバそうだしな……」
「うん」
「また背が伸びたな……雫」
「……うん」
椅子から両手を上げて立ち上がったその男はゆっくりとこちらを振り向いて純と雫を1人づつ見つめた。
「木場田一色。それがお前の名前か? 暗号に自分の名前を入れるとは随分自己主張の強いやつだな」
「なんせこれまで影で動いていたものでしてね、許してください。にしても……天音純に天音雫……糸成先輩と霞先輩に本当によく似ているよ」
「「!?」」
「驚いているのかい? 純君、手が震えているよ? ほら、銃はこうやって心臓に構えて撃つものだよ」
木場田は純の持っていた純の口を自分の胸にあてて挑発をした。
「君たちの両親は」
「私が殺した」
「!?」
「――ッ!?」
「ちょうどこの場所だよ、先輩たちの探偵人生はここで終わりを迎えたんだ」
「てめえ! 何が目的だ!? その目的のために何人を犠牲にした!?」
「もう知っているんだろう? AA計画……全人類の夢だよ! そして私の実の娘、水の夢でもある!」
「あんた……何を勘違いしてるの? 水が……みんながそんなものを望んでいるとでも思ってるの…………?」
雫は涙をこすりながら木場田を怒鳴った。
「不老不死。幸せそのものだろう? 純君は実際にAAOを体験して分かっただろ? あそこは天国、欲しいもの全てが手に入る夢の国だ!!」
「……お前は幸せってのが何なのかまるで分かってない。幸せってのは頑張ったやつだけが感じることができる感情だ! 人生ってのは有限だから今この瞬間を頑張ろうって思えるんだよ!」
「そうだよ! AAO? 不老不死? そんなものは感情を抜かれた空っぽの人形だ! そんな世界は天国じゃない……天国ってのは毎日の人生を頑張って生き抜いた人たちが行くところだ!」
純は木場田のポケットから何かを取り出そうとした手を撃ちぬいた。
「……気を失った……か」
「お兄ちゃん……私……こいつを」
「ああ、よく耐えた……これで終わったんだ。俺たちとの因縁は」
「でもこんなやつ……!!」
「そうだな……っ……。会わせたく、ない……よな」
……
「「……水」」
◇
アクアパークタワー――
無策のまま数分身動きを取らずにいた燈火とストレリチアに加勢する合図かのようにエレベーターが到着した音が鳴った。
「悪いが今そっちを向けない! きっと味方だろうが誰だ?」
「警部の千賀です……」
「ゲッ……まあお前しかしないだろうがな……」
「どうゆうことだこれは? 組織は!?」
「お前はずっと勘違いしてたってことだ。本当の敵は目の前、あのヘリだ。ほらっ来たぞ死ぬ気で避けろ!!」
ドドドドドドドドド!!!!!!
銃声が止んで少しして反対側のエレベーターの扉が開いた――。
「加勢は1人で足りてますか??」
「その声は……コスモス、か? よく出られたな」
「大神か!?」
「……やっと来たのね」
「ええ、昔の仲間ってやつに助けられました。遅れてすみません」
4人が暗闇に舞うヘリコプターを睨みつける。
「いいか、俺が指揮を執る。まず場所確認だ。燈火が11時方向、俺が1時方向、警部は9時方向、コスモスは3時方向だ。俺の合図でその方向に一斉に射撃だ。以上!」
「何その運ゲーみたいな作戦……てゆうかどういうメンツなのこれ……」
「そうだ、4人いるんだ他になんかあるだろ、ま! 俺は何も思いつかんがな!」
「まだあの探偵の方が良さげな作戦を伝えますよ……」
3、2、1、撃て――!!
「3時方向!!」
「燈火! 振り落とされんなよ!!」
ストレリチアは爆弾を抱えた燈火を右手で抱えたままコスモスが指示した3時方向に飛び立った。燈火はそのストレリチアのとっさの行動を即座に理解して爆弾を攻撃ヘリコプターの真上に落した。
(ドンピシャだ――)
ドン! ドン! ドン!
ストレリチアは左手に構えていたハンドガンでその爆弾を撃ちぬき、見事にその爆発がヘリコプターの羽に直撃した。バランスを崩したヘリコプターはよろよろと野球場に墜落した。
「へっ、ざまぁみろってんだ」
「早く降ろして……もういろいろ限界だから」
「へいへい、お嬢さん」
「純のやつは無事なのか?」
「はい、そう簡単に死なない男ですから。ここにいる誰よりも」
「ハハ、違いねえや」
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