第25話 白銀のカーチェイス

 美咲町中央道路、軽トラ内――


「おっ!! 1アウト、ランナー2塁、3塁! チャンスや!! 行け!!」


 緑川は状況を分かっていないのか吞気に小型テレビで野球中継を見ていた。


「緑川さん、真剣にやってくださいっていつも言ってるでしょ!」

「なんや瑞希君は野球が好きとちゃうん?」

「そんなこと一度も言ってないですよ……。ほら、隣の雫さんも流石に怒りますよ」

「すまんの雫君。スピード上げますね」


『ボール!』


「OK ようー見た」


「……雫さん?」

「今いいところ、このままでいい」

「はい……」


 ……


「瑞希君、あの車さっきからずっとついてきてない?」

「気のせいじゃないですか? ってあれポルシェ911ですよ! 綺麗な白!」

「じゃあアレは?」

「あれはフェアレディZ! こっちはスカイライン! 向こうのはレクサス! しかも全部白!」

「へえ詳しいんだね」

「昔レースゲームを少しやってまして……」

「そないなこと言うてる場合やないで!」


 気がつけば軽トラを囲むようにそれらの車が幅を詰めてきた。


「何何何!!! 何で~!?」

「全員黒のスーツに黒のサングラスしてる……共通のメンバー? 水!」

「前に似たような人達を見たことがあるわ……たしか燈火が初めて駄菓子屋に来た時に……。よく思い出せない」

「どうすればええん!? 雫君!」


 雫は野球中継で選手がホームへと走る姿を観ながら、「走れ」と低い声で言い放った。


「こっち軽トラなんですけど!! 共通点、白色だけでスピード全然ちゃうんですけど!!」


 緑川は「うおおおおおお」と叫びながらアクセルをマックスまで踏み込んで横を擦られながら直線道路を駆け抜けた。緑川は巧みな運転捌きで衝突を避けながらも目的地に辿り着いた。


「行ってくれ、雫君、水君」

「ありがとう……緑川さん、瑞希君、必ずまた会おう」


 2人が軽トラから降りるとまた複数台のスポーツカーに追われ始めてしまった。


「行こう、水」

「うん」


 ――株式会社ホープ、エントランス





 管理室――



 カチャ――


「さようなら。過去の亡霊たち……眠りなさい」


 バンッ――


「とうとう来たのね……潤羽水。そして天音霞の遺産……」


 ……


「地下が怪しいわ」

「待って水!!」


 雫はエレベーターに乗りそうになった水を外に押し飛ばした反動で自分が中に入ってしまった。扉が締まり、地下11階へと連れていかれてしまった。


「雫!」


 ……


(隠し部屋……?)


 雫はたまたま寄り掛かった壁が反転して真っ白な部屋に閉じ込められた。


【NONAME+IWASDETECTIVE+FORANGEL=?】


【ブヨヌサ、レネ゛ルバ、シソロ□タタ、ケク×ツ、×□ー×゛ーヲ1】


【   株

    ↓

 公 →□← 葬

    ↑

    図    】



 これら3つと五十音表と丸い時計が壁に貼り付けてあり、デジタル式の文字を指でなぞって書けるパネルがあった。


「これ解けってことね……菊……これはボクの力で解くよ」



 …………





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