第9話 Secret➀


  Second Game説明まで一時間ほどの休憩時間が設けられ、緑川は爆食の末にぐっすりと寝てしまった。緊張感のあるゲームは精神が擦り切れる。天音は静かに毛布を掛けて自分も食事をとることにした。


「お兄さん、その……ちょっと話したいことがあって」

「ん、場所変えようか」

「はい」


 パーティー会場からトイレに行くルートの途中にある小さな部屋に入り、天音は缶コーヒーを開ける。


「他のチーム。3人のままのところは少なかったな……。最初の時点で3択を選んだのか……それとも怪盗あいつが噓をついて全てのチームにあの特別ゲームをしたのか……わからんがな」

「はい……」


(そういえば、カメラアイってことは――)


「僕……他の人よりも視野が広いんですよ。360°とまでは当然いけませんがそれでも広いんですよ。それに少し瞬間記憶能力もあるんです」

「なるほど、だから視野が狭くなるようにわざとフードを深く被ったり部屋の隅に座ってたりしてたのか」

「……はい。良いことばかりじゃないんですよ。辛いことや忘れたいこともあるってゆうのに」


(カメラアイに瞬間記憶能力。凄い能力だ。実際に探偵なら誰しもが羨ましがるような能力だ。けど瑞希本人しかそのメリットデメリットは分からない……か)


「単刀直入に聞きます。お兄さんはこの世界のこと、どう思ってますか?」


 やはりな――。カメラアイに瞬間記憶能力。二つの世界のことに瑞希は気付いているのだとその時天音は確信した。


(いや、一回白を切るか、)


「ナンのコトだ??」

「……ハア。誤魔化すの下手ですか? 探偵なのに……」

「バカタレ! 噓がつけないほど純水って言え! ああこの世界のことなら他が知らない知ってることがたくさんある」

「流石です! やっぱ凄い探偵なんだ! ならこの世界はやっぱり……」

「ああ、その、ゲームの世界だ。AAOっていうVRMMO? 的なやつだそうだ。他の人は現実世界の記憶を失ってる。例外、バグは俺達ってわけだ」

「……やっぱり。現実の世界のことが鮮明に頭に浮かぶ。それと少しづつ町の景色が違うんですよ。些細な配置ですがほんとに。よかったです。そのことが知れて……AAO」


 瑞希は嬉しそうに小部屋のドアを開けてパーティー会場に戻ろうとした。


「瑞希っ! そのことを確認して、どーすんだ? 良かったらこのゲームが終わったら俺と一緒に、」

「決まってるじゃないですか」

「?」

「このゲームを楽しむんですよ! もしかしてお兄さん、現実あっちに戻りたいんですか? 冗談ですよね?」

「待っ」


 そう言いかけたときには既にドアはしまっていて彼の姿はもうそこにはなかった。



 ◇



 Second Game 説明開始時間――


『エンターテイ~~~メントオ!! どうも引き続きこのゲームの支配人、怪盗ストレリチアです。First Gameを見事クリアした計30組の生き残りの皆さんへ。まずはおめでとう……だが! ゲームは始まったばかり……。いくぜっ、楽しい楽しいSecond Game~~!!!!』


「……っんん、何や~?」

「あっ、緑川さん起きましたか? いよいよSecond Game始まりますよ!」

「お兄さん、頑張りましょう!」

「……。ああ! そうだな……」


『Second Gameの内容はサバイバルゲーム! First Gameで当てた犯人を時間内に追跡、そして確保することがSecond Gameクリア条件だ~!』


「確保……!」


『制限時間は150分。チームごとにフィールドは違い、6つの中のどれかに選択される。転移場所はフィールド内のどこか、バラバラだ。追跡を有効に進められる道具を買うこともできる。例えばこの、上空飛行して犯人の居場所が分かりやすくなるドローン、一機60分! そしてこの10分で変えるライフル銃! 他チームのメンバーを撃ち抜いてゲームオーバーにするもよし! 犯人をぶち抜いて殺してから確保するもよし。ちなみに他チームの1人を殺すごとに30分獲得でき、味方チームの誰かがやられるごとに30分失うよ!』


「へえ~~。。時間を削って道具を手に入れる。しかし、道具は慎重に選ばないと時間が無くなる。よく考えたもんだな」

「じゃ、じゃあ瑞希君。あの報酬としての優秀な犬ちゃんってのは……」

「はい! 無料で手に入るということですよ! やりましたね!」


『30組が6つのフィールド。犯人の確保。生死は問わない。安心してくれ! 転移時にゲームスーツへ体を交換しますのでどっかのデスゲームみたいにフィールド内で死んだからと言ってこちらで死ぬことは無い』


 会場はもう誰も動揺していない。First Gameでこのゲームがどうゆうものなのかを身をもって知った30組はそれなりの覚悟が芽生えていた。


「そしてFinal Gameに行けるのは……」


『もちろん6チームだけ!! 夢をかけたサバイバルゲームの始まりだ。10分後にフィールドに転移される。さあ! さあさあさあさあ! 心の準備でもしとくんだぜ~~!!』



 カウントダウン開始――3、2、1、ゲームスタート!

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