第30話 爆弾
次の日――
昨夜から降り続いた大雨は止み、店前の大きな水溜りに眩しい光が差し込んでいる。
天音はテンのこともそうだが、昨夜の
『で、昨日の人探しはどーなった?』
『その犯人はもう今朝に捕まったんだ』
『捕まった? じゃあもう解決か。 結局何の事件だったんだ?』
『爆破予告だ。犯人は美咲大学の外国語学部4年生でな、爆破予告系ユーチューバー? ま、その辺はよく俺にもわからねーんだけどよ、世間からの人気を得るためにどんどん過激な方向にいっちまったんだとよ』
『ユーチューバーか。ほう~? そうか。さては千賀、そいつ顔出ししてなかったんだろ? だから昨日の電話で髪の毛はどうたらとか言ってたのか』
『そ、そうだ。よくわかったな。アバターを使って活動してたもんでな……。まあこのネット社会、頑張ればすぐに特定できるってわけだ。良い意味でも悪い意味でもな……』
『便利な世の中になったもんだぜ……。ま! なんにせよ事件解決できてよかったじゃねーか! いたずらはほどほどにってな、』
『その、だな、事件はまだ解決していない……』
『はっ!? 犯人は捕まったんだろ?』
『言っただろ……爆破予告……ってな』
『いたずらじゃないのか? 前の時みたいに、』
『ん、前の時??』
『あっ! あぁ、何でもない……気のせいだ、ちょっと疲れてるみたいだ』
(あぶねぇ……学園祭の大神の件は千賀に言ってなかったなそーいえば)
以前に美咲高校で起きた爆破予告事件は大神黒斗による大きないたずらであったことを天音は思い出していた。
『それがいたずらじゃないんだ。今送る。その動画を』
送られてきた動画は二分弱の短い動画だった。再生すると赤い髪の毛をした少年のアバターが現れた。声はボイスチェンジャーを使っているのか少し聞き取りにくく不気味な感じであった。
『皆様、御機嫌ヨウ。今週モ面白イ問題を用意シタヨ。概要欄ヲ見テネ。ソレト今回ハ一味違ウヨ。コチラノ映像ヲ見テ欲シイ。』
すると動画が外の映像に切り替わり、山奥のコンクリートが崩れたような場所をカメラが映していた。編集でカウントダウンが始まり、ゼロになった瞬間にドゴー――ン!! という爆音とともに崩れかけていたコンクリートが吹き飛んだ。またしても映像が切り替わり、赤い髪の毛の少年アバターが現れた。
『本物ノ爆弾ダヨ。合成デモ何デモナイ。何処デ手ニ入レタカッテ? 天カラノ授カリモノダヨ。ソレト今週ノ鍵ハ過去最高ニ簡単ダヨ多分ネ。チャンネル登録ト高評価ヨロシクネ。』
以上で動画は終わっていた。
『見たか?』
『まじかよ……。大学生の外国語学部って言ったか? 自分で作ったわけじゃなさそうだが、いったいどこで……』
『今それを本人に必死に聞いてるとこだ。爆弾の場所もなかなか口を割らない、くそっ!!』
『まあ落ち着けって。毎週こんな感じの爆破予告動画をアップロードしてたってわけだろ? それで爆弾の映像が入ってたのが今回のみってわけだ』
『ああ……それでまだ事件が終わってないってのはこの爆弾がまだ美咲町のどこかに眠っていて、時限式爆弾であること。そして、』
『その場所がまだ警察さんはわからない、本人は頑なに場所を教えない、そんなとこか?』
『ああ……。こうやってお前に電話したのはそれを頼みたかったからだ』
『その時限爆弾のリミットは? あとどれくらいある』
『これまでの動画のセオリーからアップロードしてから24時間、つまり今日の夜8時までだ』
『おーけー……』
『こっちは概要欄の地図の書いてある場所を一つずつ回っていく。捜索含めて全部は時間ギリギリだから出来るだけそっちで解いてくれ』
『ああ勿論だ。もし爆弾を見つけたらどうすんだ?』
『今回は爆発物処理班も一緒だ。そこは任せるさ』
『なるほど、じゃあ俺は今から正解を見つける。あっ!! そうだその件とは関係ないんだが、一つ調べてほしいことがある』
『何だ?』
『赤沢蘭って名前の警察官が今どこにいるかわかるか?』
『ちょうど今資料室だから調べられるぞ』
『わりいな』
『あかざわ……。ん? 純。この人調べてどうするつもりだったんだ?』
『いやぁ、俺じゃなくて依頼人が知りたいって言っててな。今どこにいるんだ?』
『赤沢蘭……。もう彼は
『なんだと……! まじかよ……。ありがとな千賀、そっちの仕事に戻ってくれ』
電話を切り、天音は概要欄に貼ってあるリンクから飛んで辿り着く何か書かれている一枚の美咲町の地図を印刷機で紙に出した。
その概要欄には次のようなことが書かれていた。
美咲町のどこか一箇所に先ほど見せたものと同じ爆弾を設置した。
【今週の鍵:Add fire to the top. The next is half of your purpose.】
地図上に場所の名前が書かれているのは全部で八箇所。
・美咲町の中で一番大きいデパートで大勢の人が押し寄せる
・ロープなどを加工、販売している
・半導体を主に製造しているパワーデバイス美咲。
・道の駅で多くの人が立ち寄る
・美咲町の眺めが美しい傾斜地にあり、フルーツや花が見られるフラワー公園。
・避暑地として有名な
・露天風呂の広さとそこからの絶景で有名な歴史深い
・樹齢千年を超える木があり、のどかな雰囲気の
鴨鳴百貨店以外は全部、比較的高い山などに位置する。会社やデパート以外はどこも観光客がよく訪れる人気スポットだ。もちろん天音や千賀もそれらの観光名所には何度も行ったことがある。
(この8つの中のどこか一箇所に爆弾があるってわけだな。それをこのヒントで当てろってか……ったく……。なんで爆弾には暗号がつきものなんだ……)
「もし、俺が一番に爆弾にたどり着いちまったらどーしようかな。爆弾解除なんてドラマでしか知らんからなぁ。赤い線と青い線、どっちを切るか今のうちから考えとかねーとな。それと念のためにバケツも持っていこう」
「なめてるのか君は」
奥の階段に寄りかかって腕を組んでいたテンが天音にそう声をかけた。
「テン! いつからそこに!? てか起きてたのか!」
「爆破予告系ユーチューバーのあたりで……起きた」
「じゃあ今までのは忘れてくれ……って言っても無理か。とりあえずテンはここにいてくれ。夕方には水が帰ってくるからそれまで、」
「探偵はさ、爆弾解除の心得とか知ってる?」
「解除できない場合は安全な広いとこで爆発させるとかか?」
「……まずね。爆弾には2種類あるんだよ。それなりの専門家が頑張れば解除できる爆弾と…………誰も解除できない爆弾だよ」
「っ!!」
「それと……彼は殉職したってのは本当に……本当に信頼できる情報?」
「俺が一番信頼できる警察に調べてもらった……その、赤沢蘭ってのは大切な人か?」
「…………。調べてくれてありがとう。邪魔したね……」
「おいっ! 帰っちまうのか?」
天音は駄菓子屋を出ようとしたテンの手をつかんで引き留めた。
「ちょっと俺に付き合えよ、」
「……?」
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