第27話 決着➁
ビル炎上前、美咲町真田家――
『もしもしっ!! 水! 水! くそ、繋がらねー……あの作戦会議の時に携帯に何かしやがったな……おい、水……』
『もしもし』
『繋がった……っ! けど誰だ!?』
『水さんの担任の大神ですよ』
『大神!? 何で水に渡したのを持ってる?』
『忘れたんじゃないですか? 駄菓子屋に』
『今、俺の
『そろそろ顔を出そうかなと思って立ち寄ったんですよ』
『すまん大神先生!! 今から花見町に向かってくれねーか! 水が危ないんだ』
『水さんが……? とりあえず詳しいことは移動中に聞きましょう』
『すまねぇ……!!』
……………………
『なるほど……私に変装を……。ストレリチアは長い時間を共にした人や幹部達の変装は特にうまいですから見破れなかったのはしょうがないです』
『それでその怪盗が今何故か知らないが水を連れ去ろうと花見町に向かってるんだ』
『まさ……も、組織がそんな大胆な……行動を、ってくるとは……』
『ん? なんか聞こえにくいな』
『ハングライダーで空にいるからですね。揃いもそろって先手を打たれてやられたんでしょう? 盤上の駒ではもうこのゲームはひっくりかえせない。後は隠し駒である私が出るしかないでしょう』
『流石、万能のコスモス……。いいか今の状況を説明すると・・・』
◇
現在――
「って感じです。まずロベリアを私が封じて天音純がまさにそこにいるような演出をストレリチアに見せて、今に至ります。あ~、ロベリアには私が誰かとかはバレてないですよ。そして声は本物の天音純でしたよ。相変わらず臭いセリフ吐きますねあの探偵は」
「暗くてあの場所からじゃ分からなかったです! そうだったんだ……ありがとうございます。大神先生……が味方で」
「自分はあの学校に潜伏して美咲町を見張るという任務をボスから受けてます。つまり、生徒を護ることは当然というわけですよ」
その後、水は大神の協力のおかげであの場を無事に脱出して雫と安全な場所で合流することができた。しかし怪盗ストレリチアと女優、彩蝶瑠璃の顔を持つロベリアのその後の行方は分からずに捕らえることは出来なかった。お互いに目的はあと一歩というところで達成されなかったため今回は引き分けという決着になった。
◇
翌日、美咲町、駄菓子屋――
『新聞に書いてあるけど怪盗ストレリチア、一月前に盗んだ蒼の瞳っていう宝石、元の場所に返さなかったらしいな。さてはロベリアの花にちなんでその宝石を今回の協力の報酬にしたな? ロベリアに』
『純、見てよテレビ。もう指につけてる……』
『まじかよ……。あの……水、そっちにいるのか? 大神先生とその……』
『そ。3人で今回の件を話してるの。ホントまわりくどい会わせ方しないでよね。もしかしたらここにたどり着かなかったかもしれないんだから。あなたたちの関係はまだよくわからないし聞かないけど、いつか話してね』
『あ、ああ。すまん』
『それで、千賀さんは? 大丈夫なの?』
『あ~今変わるよ』
「ほれ、千賀。水たちだ」
「480、481,482,483……」
「はぁ……」
『水。千賀はあれからずっと睡眠ガスに打ち勝つ体を手に入れるための特訓をしていて忙しいらしい。まあ元気ってことだ』
『そ、良かった』
『まあゆっくりしてこいよ、花見町。俺はこっちで千賀と今回の真田家のホワイトローズを守った報酬金で豪遊してっから!』
『あ!! ズルい!! そうだ、ホワイトローズだけは守れたんだ……このバカ……』
『だけってなんだよ! ……けどあの時。……俺が助けに行けなかったのは本当にごめんな……』
『そのことは全然いいの。ふふっ。必ず助けるってセリフ、かっこよかったよ!』
『バカにしてんだろ!!』
◇
花見町、人形屋――
「あの味方のコスモスとかいってた人は?」
「今帰ったよ」
「えぇ~もっと話したかったのに!」
「あ~それと、ひったくり犯に倒されて雫に支えられた時に気づいちゃったんだけど」
「……ん? 何」
「雫~ごめん~! 雫のこと、途中まで男の子と思ってた~」
「えぇっ!? 男と思ってたらなんであの時一緒の布団で寝れたんだ!?」
「え、何で?」
「あぁ、い、いや、その何でもないです……」
「何でその……男の子の格好してるの?」
「そーいえば話してなかったね。花見町にその男しかかからない病気が出始めたのは実はずっと前からなんだ。原因は多分組織だけど……。ボクがまだ小さい時ね。その時にその謎を解き明かすために男装してその病気に近づこうとしたの。それっきりってわけ」
(か、カッコいい…………)
「ま、こっちのが楽だし、今はむしろ楽しんでるよ。きっとみんなにはバレてない……はず……。に、似合ってるよね?」
(か、可愛い………………)
「ちょっと聞いてる? ボクの話!!」
組織との一件が終わり、またそれぞれの日常が再開した。今回失敗したことも成功したことも色んな想いも全部忘れないようにまた各々がすぐにそれぞれの目標に向かって歩き出した――
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