第26話 決着➀


 屋上――



 八階から燃え上がった炎はすぐに下の階や上の階に広がっていき、今にも屋上に到達しようとしていた。ビルの入口付近は中から脱出した人達が大勢いた。


(雫……どうしよう……このままじゃ間に合わない)



 バサ、バサ――



「何かこっちに飛んできてる!」


 花見町で一番高い、燃え盛るビル屋上にオレンジ色のマントをまとった男がそれと同色のハングライダーで水の近くに着地した。



「誰!?」

「俺は怪盗ストレリチア、お迎えに上がりました。ホワイトローズ」

「怪盗ストレリチア!? 何でここに!?」

「あのドニ流探偵さん達は失敗した。これで伝わるかな?」

「純たちが……失敗……? それってどういう、」

「最初から俺の狙いはホワイトローズ……潤羽水、貴女だったのさ」

「私……?」

「そ、まあ話は後だ。とにかく俺と一緒に来てもらおうか。さあ、こちらに。ホワイトローズ」

「嫌よ。信頼できる仲間と約束したの。ここからはそのヘリで脱出するっ」

「ヘリは来ない。さっき会ったんだろ? ロベリアに。彼女がほら、見えるでしょ? 隣りのビルから狙撃する」


 黒いスーツを着たロベリアが隣りのビルの屋上に見えた。


(電話もなんでか壊れてるし……なんとか自力でこの場を切り抜けないと……)


「貴女が素直に俺に従ってくれたらこれ以外被害はでない。もし応じない場合、今回の件に関わった貴女の仲間さんたちの命は保証できなくなる」

「そんなことっ……! もう……」

「そ。もう選択肢は無い。手荒くてすまない」

「なんでそこまでして私を狙うの!!」

「ホワイトローズ……今貴女が隠してるその美しい白い髪……。本当にとまだ思ってるのかい?」

「それって……どういう……」



 ブーー、ブーー、ブーー、



「ロベリアからの通信だ」



『俺だ。こちらストレリチア』


『あー、あー。。駄菓子屋探偵です』


『!? 何故お前がロベリアの通信機を使っている……?』


『いいか、重要なことしか言わん。今ロベリアは眠らせて倉庫の中に拘束してある』


 遠くて顔は分からないが一人の男がライフル銃を手にしてるのが確認でき、赤いランプが二回点灯したのが見えた。


『赤いランプが2回光るのが見えたか? 察しの良いあんたなら分かるよな』


『……。 この短時間で真田家からどうやってここまでっ! 不可能だ!』


『重要なことしか言わないと言ったはずだ。取引をしよう。水とロベリアを交換だ』


『フフッ、それは取引になってない。組織は任務優先。協力関係だったが任務を放棄してまで助ける義理はない。なんにせよ今からハングライダーでホワイトローズを連れ去る。お前はそこで指をくわえて見ていろ』


『そうか……なら……。10秒だけ通信を変われ……』


『お別れのあいさつか? いいよ。 安心しろ、彼女を悪いようにはしない』



 ………………


『水か……?』


 ・・・………………




 通信を切った時には屋上もとうとう火が広がり始めていた。


「覚悟はできたか?」

「……ええ。がね………………」

「では、こちらへ」




 バッ!!――




「バカ! 何をする気だ!!」


 水は全力疾走でビルから飛び降りた。10階建てのビルから飛び降りたのだ……。


「死ぬ気かっ!! ホワイトローズ……!! まさかを選ぶとは……」





「!? あれはハングライダー!?」




 隣りの六階建てのビル屋上から白いハングライダーが飛び立ち、水を間一髪で救った。





 ◇




 十秒。最後の通信――



 ………………


『水か……?』

『……あんたのことだからなんか考えがあるんでしょ?』

『いいか? くれぐれも隣にいる怪盗にバレるような反応はするなよ?』

『……うん』

『そこから時計塔が見える方に向かって全速力で飛び降りろ。

『!? …………。』


 ………………



「覚悟はできたか?」




 ◇






「よく頑張りましたね、ここまで。怪我は無いですか? 

「えっ!? !?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る