第25話 ロベリア⑤
花見町、とあるビル八階のバーにて――
「そ、若手人気女優の
「………………」
ドゴーン!!
「爆発だーー!! ワイン貯蔵庫だ!! 早く避難しろーー!!」
大きな爆発音の後にカウンターの奥から火が見えた。店内には水と雫、彩蝶瑠璃を残してみんな悲鳴をあげながら急いで逃げていった。
「爆発っ? こんな大きなビルでっ……!!」
「お嬢さん達も逃げた方がいいんじゃな~い?」
「水! 私たちも一旦逃げよ!」
「さっきの二回目の消灯でその床に落ちたワイングラスに書いてあった文字ともう一つ、光ってるものがあったの。あのカップルの机にあったサイン色紙。プレゼントって聞いてもしかしたらと思ってたまたま見つけたんだ。きっとそのペンをすり替えて……」
「フフフ、犯人とかは誰でもよかったのよ。どうせ燃えちゃうんだから」
「やっぱあんたが爆弾を……」
「私は一度花見町からしばらく離れるわ。私がこの町でやったこと全部が悪い噂としてそこの人形屋さんに流れていって助かったわ♪」
「彩蝶瑠璃が……ロベリアだ……水」
「っ!? 朝の連ドラや映画、舞台いろんなとこで活躍してるこの人が!?」
「昔から私、目立ちたがり屋なの。最後にお世話になった人形屋さんに挨拶できて嬉しいよ」
「なんでこんな目立つとこで爆弾まで用意してジョン・フォーさんを殺したんだ!」
「彼は私の部下だったけどスパイだったのよ。裏切り者には制裁を、ってわけ。こんな美しい死に様を用意したのは私の美学。芸術的な死を」
「なんだと?」
「あれ? まだ気づかない? 今回は凝りすぎたかな~? forget me not は予めこのバーにこっそり依頼した文字でね、外から見ると反転して見える。つまり裏切り者を表している……。さらに for をスプリンクラーで消した。も、う……わ、か、る、よ、ね?」
「…………」
「地獄への祝福の鐘の爆弾まで用意してあげたのよ? 芸術的ね」
「花見町で幽霊使って変な病気をばらまいたのもあんたでしょ?」
「ミッションの1つね。あ~薬を作ったり、ばらまいたりしたのは私じゃないわ。とある研究者に頼まれてね。サポートととして幽霊ちゃん達使ってたの。よく知ってるわね」
「悪趣味な女……」
「そこは芸術的でエンターテイナーな女って言ってよ」
到底消しきれない大きな火がもうバーを覆いつくし始めていた。
「水! 早く!! そんなイカレ女の相手はここを出てからだ」
「う、うん……!」
「バ~イ。ヤングガールズ。もし次会ったとき生きてたら芸術的な死をプレゼントしてあげるよ、あーそうそう! 死んだら私が探しだして部下にしてあげる♪」
「あいつ! 割れた窓からロープで隣りのビルに!」
「水! もう8階はダメだ! 火がいろんなとこから……」
「非常階段を使おう雫!」
雫が非常階段の扉を開いて外に出て遅れた水を呼ぼうとした瞬間――
ドゴーン!!
非常扉が爆発し、二人は炎で分断されてしまった。八階から下の階に行けるルートはこれで全て封じられてしまった。
「水! 大丈夫か!?」
「うっ……だ、大丈夫! 先に降りてて!」
「水は!? どーすんだ!?」
「上の階段はさっき燃えてなかったから! 屋上に逃げるっ! 助けのヘリが来るのを待つ、よ……!」
「すぐ救助のヘリコプター呼ぶから!!」
「うん! それまでなんとか頑張る」
水は煙を吸わないように姿勢を低くして持っていた水道で濡らしたハンカチを口にあててなんとか屋上へ逃げることができた。
◇
『こちらロベリア。ミッションコンプリート。財布の中の学生証を確認したから間違いない。ここから見えてる。屋上にいるのが潤羽水だよ』
『了解。Forget me not ……
『勿論、芸術的な死をこの目で確認したわ。そっちは?』
『いいショーの盛り上げになったよ……もう空を飛んでる』
『『……いよいよフィナーレか』』
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