第21話 怪盗ストレリチア➁

 


 真田家で初めて迎える夜。


「純か、眠れないのか?」

「なんだ千賀か。音もなく近づいてくんなよこんな時に。真田さんにパソコン借りてちょっと怪盗さんのことを調べてたんだ」

「何か分かったのか?」

「怪盗ストレリチア。神出鬼没で正体は誰も知らない、狙った獲物は必ず奪う天下の大泥棒。しかし飽き性なのか次の宝を狙う時は前に盗んだ宝はことが多い」

「どうゆうことだ?」

「さあな。ただ過去に盗まれたものは全部宝石類だけだ。もしかしたら目当ての宝石を探していてそれ以外には興味ないとか」

「じゃあ今回のホワイトローズは盗まれてもまた返ってくるってことか?」

「バカタレ、そのホワイトローズがお目当ての宝石だったらどーすんだよ。それに今回は盗まれねーよ。天下の駄菓子屋探偵様がいるからな!」

「はは、そうだな。明日のことが心配なのは分かるが今日はもう寝ろよ」

「心配なのはこっちもだが、怪盗が過去に関わった事件で死亡者はゼロだった。本当に心配なのは水の方だ」

「やっぱり水ちゃん一人で行かせたことが……」

「言ったろ? アテがあるって。先手を打ってるのはこっちだ」

「そうだな……じゃあ何を心配してる?」

「ちゃんとご飯食って、風呂入って、ふかふかの布団で寝てるかなって……な」

「おかんかよ」

「うるせぇ!」




 次の日――




「どうした純、朝っぱらから屋敷の中の人全員を呼んで来いなんて」

「昨日の調べた続きだが怪盗ストレリチアは変装が得意らしい。あんたたちの中に既に変装してる可能性がある」

「なぁに? 本当か! 探偵さん」

「でも純、どーやって確かめるんだ?」

「決まってんだろ、今からを開催する!」

「はあ!?」

「わっはっははは! 構わん! ワシもやろう!」

「ふん、なら言いだしっぺの法則だ」


 千賀は早速天音の頬っぺたを横につねった。


「いってぇぇーー!! 大バカタレが!!」

「よぉ~し、俺は本物だぁ……次は千賀、お前だ!」

「痛いっ痛いわっ!!」


 天音たちは真田をはじめとする屋敷の警備員たちを一列に並べて同様の確かめ方を行っていった。


「はあ、はあ……やる方もしんどいなぁこれ……」

「とりあえず変装してるやつはいなかったな……」

「まあ、やれることはやっとかないとな……」


 その後お昼を済ませた真田と天音たちは日が落ちるまで屋敷の隅々まで怪盗が隠れていないか調べて回ったり、配置を確認したりして怪盗からの予告時刻を待った。


「ここがその監視カメラルームか」

「お! 真田さんが映ってる。千賀、これってズームできるか?」

「ああできるぞ。自由自在の360度カメラに特定の人物のオート追尾もある」

「流石真田さん、準備万端だな!」

「そーいえば潤羽さんと連絡とらないのか?」

「とらないんじゃない、とれないんだ。携帯電話もサイコロキャラメルの方も繋がらない……」

「サイコロキャラメルって電話の機能だけだよな?」

「ああ」

「じゃあサイコロキャラメルいらなくね?」

「バカタレ、もしもの時のアイテムだよ! 携帯電話が何らかの形で使えないって時があると思って……」

「携帯電話あるし、ゴミだと思って捨てられたのかもな」

「……………………」




 怪盗ストレリチアの予告時刻まであと三十分――

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