四章:組織編➀

第17話 作戦会議



 苗木が起こした事件から1週間――


 千賀は天音たちのいる駄菓子屋を訪れた。


「時間が空いちまったが前にカフェで話したかった例の件だ」

「犯罪組織、KARASUか……」


 KARASUとはここ数か月で天音たちのいる美咲町とその隣町の花見町はなみちょうで怪しげな動きをみせている組織であり、天音たちも何度かKARASUが関与している事件に遭遇してきた。


「純、前に聞いた大神黒斗という男だが、やはり警察に情報は全くなかったぞ。ホントに元警察か?」


(そうかやはりな……)


 天音は千賀にまだ大神黒斗の過去など詳しい情報を話していなかった。口止めをされているわけではないが千賀はあくまで警察の人間であり、ややこしい展開になるといろいろ動きづらくなると天音は考えたからである。


「俺も大神のことは全部わかってるわけじゃないが、一応組織のメンバーにスパイに入ってる味方だ」

「じゃああの学園祭からなんか情報入ったのか?」


 天音は近くで新聞を読んでいた水と顔を見合してから顔を横に振った。



「本人がいないところで警察と探偵で私の陰口ですか?」



 そう言い放ったのは突如店に現れた大神であった。物珍しそうに店先に並んでいる駄菓子を手にとっては戻してを繰り返していた。



 大神!?



「欲しいんでしょ。組織の情報」


 水は狭いちゃぶ台を囲んでいる3人にお茶を入れて一応先生の立場でもある大神に挨拶をした。


「ありがとう水さん」



 ………………………………



「いや、気まずいわ! なんだこの光景! 」

「純、気まずいのは俺たちだ。大神と俺は初対面だぞ」

「これはこれは全く役に立たない警察に所属の千賀白さんですか?」

「ハハハ、よーし分かった。逮捕! よくわからん怪しい&俺への侮辱で逮捕! 」



 ガチャ――



 千賀はそう言って声だけ笑いながら大神の腕に手錠をかけた。


「ちょ、千賀! 俺たちはこんなことするために集まったわけじゃないだろ?」



 ガチャガチャ



「そうですよ、まずは組織の情報を整理しましょう」


 千賀は不敵な笑みを浮かべながら手錠を簡単に外してスマホを取り出した。

「まず組織の規模を教えてくれ」

「その前に誤解を解いときましょうか。これまで情報を一切送らなかったのは組織に深く入り込むためです。要は信用獲得です」

「それは何となくわかってたさ」

「組織の規模は正直分かりません。ただ組織の幹部が大きな行動をとっているのは確かです」

「幹部だと!? それは何人いる?」

「それも不確かです。天音さんや水さんには前に少し話しましたが、私も幹部の一員であり、メンバーにはそれぞれボスから花の名前、つまりコードネームが渡されてます」

「あんたのコードネームはコスモスだっけか? 他のコードネームはわからねーのか? 」

「1人分かっているのは――。おそらく花見町を活動拠点としている組織の研究者です」

「花見町……研究……」

「どうした千賀?」


 千賀は手帳を開き、花見町でここ最近起きた事件などを調べ始めた。


「花見町……眠り病や髪の毛が真っ白になる睡蓮病? 全て男性のみ症状が出る……呪われた町……」

「なんだそれは?」

「後輩から聞いた話だ。噓くさくて詳しくは調べてはないがな」

「幹部のメンバーはそれぞれ催眠術を極めていたり、変装が得意であったり、証明不可能な幽霊的なものを操るといった人間離れした能力をもっていたりするのでそれはおそらく……」



 ……!!



「……なんにせよ俺たちは組織のメンバー全員を捕まえないといけない。今すぐにでも花見町へ行ってそいつを……」



 ちょっと待って! もう一人組織のメンバー、分かったかも!



 水が会話を遮って言ったその言葉に3人は固まった。


「大神先生、幹部に花の名前が使われるのは本当ですか?」

「ええ。その人の特徴や能力、性格などを表した花言葉の花名がコードネームになるとか」

「じゃあこの新聞にあるから美咲町博物館に予告状届くって記事。変わった名前だから調べたらどうやら花の名前らしいわ」

「まさかそんな堂々と表に顔を出すやつが組織のメンバーだとはな」

「とりあえずだ。詳しい捜索は現地でだ。俺と千賀はその怪盗を、水は花見町のやべー研究者を、大神は引き続き組織の調査だ」

「ちょっと待て、純! 1個ずつやっていった方が確実だ!」

「はぁ……警察より探偵の方がよっぽど冴えていますね。怪盗の予告は明後日かつ花見町で流行る謎の病の数々はもうとっくに始まってるんですよ」

「だけどな、二兎を追うものは一兎をも得ずと言ってだな……それに水ちゃん1人で花見町は危険だ」

「千賀、この当たりつき駄菓子と一緒でな、買わなければ当たる確率はゼロなんだ。俺たちは探偵や警察を目指した瞬間からもう二兎どころか千兎追う覚悟でここまでやってきたはずだぜ? それに男性しか感染してないんだろ? 花見町。なら水がいくしかないだろ? 安心しろ一つがある」


 千賀はつい最近の水の探偵としての行動や想いを思い出した。


「――確かに、そうだったな。何も間違ってない」



 組織KARASU打倒のために集まった者たちがいよいよ動き出す――

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