第14話 連なる事件と深まる謎
天音は森田に原穂乃花の死とこの密室事件のことを伝えるためにひとまず一人現場をあとにした。
「死因はこの胸に刺さったナイフか……」
「千賀さん、部活のメンバーの中で原穂乃花さんに恨みをもった人はいました?」
「水ちゃん、でもそれって……」
「こんな残酷なこと私も嫌だけど、学校・・・いや部活のメンバーの中に犯人がいるって考えるのが普通よ」
「そうだな……。なら俺はこれから学校で部活メンバーの関係性から調べてみる」
「なら密室の謎は私が解くわ」
現場が落ち着いて、千賀とも別れた後に水と苗木の二人は原穂乃花の部屋を調べ始めた。
(室内に血痕が無いから室内じゃなくてベランダでの殺害……。その狭いベランダに大量の血が広がってるのにこの部分だけ血が無い……。つけっぱなしのテレビに食べかけのお菓子……)
「このお菓子って昨日純が持ってきたやつ?」
「……はい」
(食べかけのわなげチョコか……ん?これ、裏のチョコを押し出すとこ……)
水はそのわなげチョコを見ながら根拠がないある1つの答えを導いた。
(この密室トリックは多分…………でも……犯人が1人に絞れない)
「……あの私午後に病院に行く予定があって、一度帰りますね」
「わかったわ。気を付けて」
「あっ、苗木さん、ハンカチ落ちたよ」
ズボンの右ポケットから水色のハンカチが床に落ちた。帰ろうとして慣れない左手で玄関のドアを開けた際に前から少し飛び出ていたそのハンカチにあたって落ちてしまったようだ。
「ありがとうございます。まだ慣れなくて、えへへ」
「……。ホントに気を付けてね」
直ぐに天音から水に電話がかかってきた
『もしもし、水か 大変だ! 森田茜里が昨日から家に帰ってないらしい』
『ええ⁉』
『今全力で探してるけど千賀に捜索を手伝うように言ってくれ! いったん切る!』
天音に言われた通りに千賀に要件を伝えるために電話をかけようとした瞬間、その千賀から電話がかかってきた。
『大変だ、水ちゃん。彼女たちの部活動の顧問である
『え⁉⁉ 噓……』
『水ちゃんたちが原穂乃花の家に着く、30分前のことだ。場所は原穂乃花の家から歩いて45分程度のところだ』
『連続殺人ってこと……ですか?』
『部屋にあったカバンから小さく折りたたんであった彼女たちに届いたのと同じ呪いの紙が見つかった。間違いないだろう。そして死因も原穂乃花と同じだ』
『そんな……』
水は一呼吸おいてから森田茜里の件を千賀に伝えた。
『水ちゃん、情報をありがとう。おそらく犯人は森田茜里だ……残念だがな』
『私たちとずっと一緒に居た苗木さんにはアリバイがあって、森田さんにはアリバイがない……』
『そういうことだ。なんにせよ森田茜里を見つけないとな。俺が探してる間に水ちゃんは純と加藤苗木を見張っといてくれ。もし次に狙われるとしたら彼女だからな』
そう千賀が言った途端に電話は切れてしまった――
「とりあえずこんなときこそ落ち着け、私!得意の情報整理だ」
水はメモ帳を取り出し、次のようにまとめた。
1,顧問の潮田沙苗が刺殺される。
2,その30分後に苗木とともに原穂乃花の死亡を確認。
3,原穂乃花の死亡はその少し前。二人の死の間は約30分。徒歩40分の距離。 4,森田茜里は昨日から行方不明。この2つの死の時間も。
(かなりまずい状況かも……やっぱりこの状況だと、森田さんが怪しいことになる……普通はね)
水は千賀に言われた通りに苗木の安全のために千賀からメールで届いた苗木の家までの地図をスマホで開いたまま急いで苗木を追いかけた。途中で苗木に追いついた水は一緒に家まで行くことにした。
「あれ、そのクロックスどうしたの?」
「履いてきた運動靴がきつくて……原さんの家に行く途中で買ったの」
「わざわざ買ったんだ……やっぱり怪我大変だね」
「……私はましなほうですよ……あっここが私の家です」
バタンッ!
家に着いた瞬間に苗木はその場で倒れこんでしまった。
「大丈夫!?」
「……ちょっと目眩がきちゃいました、えへへ」
水は苗木に肩を貸して苗木の自室のベットまで運んだ。
「……無理もないわ。いろいろあったもんね……」
「……」
「寝ちゃったか……」
水は近くにあったゴミ箱にふと視線がいき、見たことあるわなげ状のものを見つけて手に取った。
(苗木さんもわなげチョコ貰ったんだ。純のバカ、差し入れの準備で用意したのまさかわなげチョコ1種類だけとか……)
待って!! これは、、!!
じゃあきっと近くにあれがあるはず……
ゴソゴソ――
やっぱりね……
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