一章:駄菓子屋探偵登場

第1話 駄菓子屋探偵

 天音純あまねじゅんは美咲町を守る探偵である。これまでに美咲町で起きた様々な難事件を解いてきた。ちなみに少し前に解決した迷子の猫の捕獲は天音にとっては難事件の部類に入るらしい。

 町のみんなはキャラの濃いやつらばかりだが仲間想いのいいやつらばかりで、個々の違いを尊重し合い朝から晩まで笑いが絶えない――。そんな美咲町を天音純は愛している。難事件に困った時はいつだって協力してくれる。ここまでの説明なら一見普通の名探偵だ。しかし、天音純は自らをと名乗る少し変わった男だ。


「駄菓子屋以外でもアルバイトとかやれば? どーせお客も来ないし暇でしょ?」

「バカタレ! すい! 駄菓子屋を本業のおまけみたいに言うなよ? それとこれからは探偵業がもっと忙しくなるんだ。そう美咲町がささやいてる気がするんだ……」

「はいはい」


 潤羽水うるはすいは名前の通り透き通った目や肌をしており、アニメのキャラで出てきそうな綺麗で繊細な白い髪が特徴的である。聞いた話によると先天的なものらしい。この町を一番よく知る天音が言うには美咲町で五本の指に入るほどの美少女らしい。

 性格は少し冷たい面もあるが天音は水の優しい面も知っている。いつも一歩引いたような、自分のことにあまり興味がないようなところは少し気になるが、まあ基本は良いやつである。


「だいたい迷子の猫捜しって……お花屋のさかいさんのとこの猫の捜索でしょ? いつも大袈裟なんだよ。しかもいつも無料ただでって、お人好しすぎる……」

「なーに言ってんだ、俺らはこうやって探偵やってるけど、できてるのはこの町のみんなに信頼されてるからだ。その気持ち程度の恩返しだよ、駄菓子屋は。いつか水にもわかる時が来るさ」

「はいはい」


 1年前に水の両親からしばらくの間この町を離れるから気にかけてくれと言われ、駄菓子屋の隣りのアパートで一人暮らしをすることになった。天音は水を探偵業の相棒として駄菓子屋探偵をやっている。面倒を見るつもりが天音の生活が見るに耐えないと水に面倒を見られてしまう始末であるようだが……。


「両親からなんか連絡あったか?」

「まだ……」

「探偵やってればきっと何か情報も入るさ! 必ず!」

「そ、そうだよね」


 ここはもうお前の家でもある――。天音は微笑んでコーヒーカップに手を差し伸べた。

 水はカッコつけてコーヒーカップで緑茶を飲まないでと呆れた表情を天音に向けながらもどこか嬉しそうな顔をして学校へ向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る