第一部:現実世界篇

プロローグ➀

 この仕事を始めてからよく二つの連関した質問をされることが増えた。まず本当に探偵ですかという質問。そして駄菓子屋探偵ですと答えた後にだいたい言われる、駄菓子屋探偵とは何かという質問。


「正真正銘この町の探偵さ。困った事があれば駄菓子屋にふらっと立ち寄る感覚でここに来い。サクッと解決してやるからよっ」


 美咲町で駄菓子屋探偵と名乗る天音純あまねじゅんはTVドラマやアニメのように事件を爽快に解決する天才の名探偵でもなく、特殊能力が使える名探偵でもない。勘は少し鋭いかもしれないがカッコつけたがりで子供っぽく、どちらかと言えばダメ探偵の部類である。


「じゃあ何で探偵なんかやってるのかって?」


「誰かの助けになりたいって動機さえあれば誰でも探偵になれんだよ」


 息をするようにカッコつけたセリフを吐いて今日も彼は事務所の駄菓子屋を開く。

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