第3話
午前ー零時ー雨の中③
午前0時ー。
いつもの街を見下ろせる公園で待ち合わせしている。
少し雨が降っている。
俺はシスターのタイガーマスクとセイラー服を紙袋に入れてベンチに座っている。
「友和が寝たら電話するから公園で待ち合わせしよ。制服とマスクを預かってね!」
「待ってるよ」
シスターは俺に抱きついた。
「ゼロツーはあたしの守り神だよ!ゼロツーが居るとあたし強くなれる!ゼロツー…礼次くんが大好き!」
「俺も友美が好きだよ」
「初めて名前を呼んでくれたね!あたしの名前知らないのかと思ってた」
「知ってるよ」
「嬉しいな」
街の灯りを見ていると自分がここに居ることを無視されているように感じる。
あの日に無視をされ始めたように…。
遠くから聴こえるサイレン…誰かが何かをして誰かが誰かを捕まえにいく…もしくは助けにいく…。おれはここに一人でいる。
一時を過ぎた頃ー。嫌な予感がした。
俺はチャリンコでシスターの家に向かった。
人だかりが出来ていた。
辺りは焦げ臭かった。
野次馬の中へ入っていくとブルーシートが被せられた担架が2つ並んでいて、家は跡形もなく燃え尽きていた。警察や消防隊は落ち着いた感じに後片付けしていた。
俺の心臓はバクバクしていて、あのブルーシートを被っているのがシスターだと分かりきっているのに認められないで、野次馬の中にシスターを探した。
イカれた世界ー。
真っ赤に燃えた日々ー。
何かを敵にしてそれと戦うようにして生きる。絶望の共有…そして…不…無意味。
また、絶望を味わう。
身体の中に居る何者かを味方にする。
それしか方法が無い…。
ナイフで切りつけた後のジワリと出てくる血は流れると言うよりは滴る。
失ったと言うよりは手に入らなかった。
ただ、言えることは、あの時の時間を共有出来ていた。あの時の状況を分かち合っていた。
俺もあのブルーシートを被りたかったー。
もし、あの時シスターと一緒に死んでいたら俺はドラマチックだったと…思う。
終
午前ー零時ー雨の中 門前払 勝無 @kaburemono
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