第2話

午前ー零時ー雨の中②


 机に花が置かれていた。


 机が教室の端へ移動させられていた。


 ジャージがビリビリに破かれていた。


 「臭いから来るな」と言われるようになった。


 給食に消ゴムのカスを入れられた。


 髪を押さえつけられながら切られた。


 泣きながらゼロツーを待った。

 暗くなってからゼロツーはやって来た。

「遅いよ!」

「ごめん…手こずったよ…」

「怪我してるの?」

「足をやられた…」

「大丈夫?」

「大丈夫…それより面白いものを見せるよ」

シスターの運転するチャリンコで廃墟になった保育園へ向かった。


 保育園の職員室の真ん中でガラスの欠片の上に手足を縛り付けられて寝転がっている奴がいた。

「動くと痛いぞ」

俺はそいつに言った。

「あ、ガムテープで喋れないか…」

シスターはバットを引きずりながらソイツの周りを歩いている。

「ゆっくりやっつけられるね…」

「こいつ捕まえるのに手こずっちゃってね…シスターにプレゼントだよ」

俺はシスターの目が赤くなっているのに気付いた。

「…辛いことがあったんだね…」

シスターはうなずいた。

「殺しちゃおうか…」

「いいよ」

縛られている奴がもがいてガラス片が身体に刺さり血が滲み出てきている。

 俺は大きめのガラス片を手裏剣のように投げた。ガラス片は奴に当たって弾けた。

「刺さらないのか…」

「裸にしたら刺さるんじゃない?」

「そうだね…」

俺は奴の服をナイフで破いた。もがく度にシスターがバットで殴った。

「あ、この人…清水って言うんだ」

シスターが学生証を見ながら言った。

「清水…残念だね…でも、初の犠牲者だから記念だな」

「人殺し記念だね」

俺達はガラス片を清水に投げ付けた。何回も投げているうちにコツを掴んできて、身体に刺さるようになった。

 恐怖と痛みに震えながら清水は泣いている。汗と血と小便と脱糞しながらもがいている。

「ねぇ…」

「なに?」

「ちょっと来て」

シスターは俺を隣の部屋へ連れていった。

「どうした?」

「セックスしよ」

「え?」

「なんか…興奮してきちゃったの…」

「ごめん…俺したこと無い」

「大丈夫…あたししたことあるから…」

「マジで?」

シスターは俺の前にしゃがみこんで俺のズボンを下ろした。緊張している俺の股間をマスクを着けたまま舐め始めた。初めての感触に腰の辺りの力が抜けて立っているのがやっとであった。

 うすら汚れたソファに寝転がって下半身を露にしたシスターが上に乗ってきた。覆面をした俺達は1つになった。シスターが腰を振る度に重みを感じて自慰行為とは違った快楽を覚えた。シスターは小刻みに震えながら涎を垂らした。それと同時に俺もイッた…。

「中で出しちゃった…」

「大丈夫だよ…礼次くんの子供だったらあたし喜んで産むよ」

「…」

「初めてだった?」

「うん…初めての相手がタイガーマスク…」

「あ!マスクをとるの忘れてた!」

「レザーフェイスとタイガーマスクのセックスだね」

二人で笑った。


 清水が寝転がる職員室に戻ると隅っこへ清水が移動してうずくまっている。

「まだ動けたんだ」

シスターは清水に近づいて頭部にフルスウイングした。

 青空の中、左中間へ大きく延びていくボール、太陽の中へ消えていく…。

 ホームランー。


 俺達はガラス片を箒で片付けた。ゴミは清水の骸へ集めた。


「…なんかね…」

「ん?」

「清水を殺すって思ったら凄く興奮したのって…あたしっておかしいのかな?」

「シスターがおかしくたって、俺がおかしくたって、集団で苛めてくる奴等の方が異常だよ…俺達は人殺しだけど…あいつらは俺達に殺意を目覚めさせたから自業自得だよ…」

「ゼロツーって頭良いよね」

「良くないよ」

「あたしゼロツー大好き」

「…ほんとはね」

「なに?」

「俺へのイジメを始めたのはシスターの兄貴なんだよ…」

「友和?」

「そう…それで仕返し考えて…カズの妹を血祭りにあげようと思ってゲーセンへ行ったんだよ…」

「あたしを殺そうとしてたの?」

「そう」

「…」

シスターは俺の腰にギュッと力を入れた。

「…ごめん」

「いつでも殺していいよ」

「殺さないよ」

「礼次くんになら殺されても良いよ」

「殺さないよ」

シスターを近所まで送った。


 クラスメイト達が学校を休み始めていて、清水が行方不明になったのと関係があるんじゃないかと話題になり始めていた。他校の不良が絡んでいるとか、暴走族に拉致されたとか、数年前の連続放火魔が通り魔に転職したとか、人面犬の仕業だとか噂は色々であった。

 俺とシスターは毎日のようにクラスメイトを血祭りにあげていった。殺しはしないが重傷を負わしていった。シスターもバットで狙うのを関節部に定めて殴り、致命的な怪我を負わしていった。

 俺達は事が終わると必ずセックスをするようになった。俺のうちは片親で母親は水商売だから、俺の部屋でセックスした。母親が休みの日は母親とシスターと俺とでご飯を食べた。母親はシスターを俺の彼女だと思い込んでいてシスターを可愛がってくれた。


「明日ね…あたしの親が田舎に行って、家に友和しか居ないの…」

「俺達の仕返しを明日で終わりにするか?」

「あたしも友和は殺したい」

「カズを殺したら他の奴等はもうおとなしくなるだろうね…シスターのクラスメイトも殺るか?」

「あたしはもう学校に行かないよ」

シスターの手を握った。


つづく

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