宇宙の光

著;ミルキィ


5月10日

 僕は今日、故郷の地球を離れ、生まれて初めて宇宙に飛び立った。全身にすごい重圧がかかり、意識が飛びそうになるが耐える。今までたくさんの訓練を行ってきたが、そんなものとは比べ物にならなった。この苦しみが永遠に続くのかと思ったとき、重圧が消え去り一瞬で体が楽になる。どうやら大気圏を通過し、無重力空間に入ったらしい。そのまま国際宇宙ステーションにドッキングする。自分の体を固定していたベルトを外すと、体がふわりと浮き上がる。ああ、幼いころからの夢が今かなった。感動で言葉が出ない。


5月22日

 宇宙にも慣れてきた。けれど今でも起きたときに体が浮き上がるのに喜びがある。今日は宇宙空間に出て、ステーションのメンテナンスを行う。君がいる地球はどんな青色何だろう? 宇宙服を着てステーションの外に出る。真っ先に目に留まったのは、真っ青な光り輝く地球。周りが真っ暗なのでその青色が特に際立っている。きれいだ。スカイツリーからの夜景は、ギラギラした丸い地球が少し見えていた。だからもっと地球はギラギラしているのかと思ったけど、海の美しい青とあたたかな白い光が調和された星だった。君にも見せてあげたいなあ。


6月15日

 日課の筋トレを行う。宇宙にいると筋肉を全く使わないので、やらなくてはいけないことだ。それに、君のもとに帰った時、昔みたいにひょろひょろだったら嫌だしね。幼いころ君と眺めた真っ暗夜空に浮かぶ星を思い出しながら柱につかまり懸垂を行う。

 

6月30日

 今日は、物理の実験を行う。宇宙空間でしか行えない実験だ。宇宙飛行士は、なるのも大変だし、なったとしても宇宙に行けるかどうかもわからない。僕は宇宙にいけて幸運だな。けど君に会えないことだけが不幸だ。今日も1日頑張るよ。


7月3日

 君の写真を眺めていたら、同僚からからかわれた。僕にはもったいない美人だってさ。そうだね、僕の美人な彼女だと自慢したよ。他の同僚も奥さんや恋人の写真を見せて、自分の愛しい人が世界一美人だと言い争ったよ。もちろん君が世界一の美人だけどね。


7月19日

 今日は君と何度も歩いた通学路の夢を見たよ。春の雲一つない見事な水色の空、映画のように大きな入道雲が広がった海のような深い青色の空、トンボが顔に当たりそうなくらい何匹も飛んでいたオレンジ色の空、まっ白な雪が紺色の空に浮かぶ月が反射していた銀世界の冬など、毎日毎年違う空を君と見続けた思い出が夢に現れたよ。また君とあの通学路を歩きたいな。


8月9日

 今日は、機体のトラブルが発生した。無事に解決するといいけど…


8月10日

 なかなかトラブルが解決しない、どうやら機体を交換しなくてはいけないそうだ。しかも地上の方もどうやらトラブルがあるらしい。こうもトラブルが続くと不安になるよ。


8月15日

 今日は、トラブルを起こした機体の交換作業を行う。長時間ステーションの外にいなくてはいけないかなり危険な作業だ。君の笑顔を思い出す。大丈夫だ。きっと成功する。

 良かった! 無事に成功した! これでもう大丈夫だ。


9月4日

 あと1月で、宇宙での生活も終わる。もう起きたら浮き上がるようなことも、窓から青い地球や太陽が見えることもなくなる。悲しいが、それよりも早く君に会いたい。会って君を抱きしめたいよ。


10月7日

 今日は、地球に帰還する。ようやく君に直接会うことができる。帰りの機体が大気圏に突入する。今まで忘れていた重力が一気に全身にかかる。自分の体ってこんなにも重かったのか。海に落ちて回収される。衝撃は無くなったけど、体が重くて仕方ない。きついな。けど、ようやく君にいうことができるよ。

ただいま

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宝来文学221号 新入生歓迎号「桜東風」 奈良大学 文芸部 @bungeibu

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