スクール水着はエロ可愛い


著;うしお


 ……死ねなかった。

 真っ赤に染まるはずだった包丁を見つめながら呟いた。反射する顔は靄がかかったようで、はっきりと自分がどんな顔をしているかは分からない。

 ずっとそうしているわけにもいかず、包丁を元の位置に戻す。別に前から死ぬ決意があったわけではない。ただ、そう思い立って行動を起こしてみたものの、固くない意思はすぐに断たれてしまった。まあ、怖くなってしまったんだ。生きる事が辛く消える事の方が楽だと思っていた自分が情けないし恥ずかしく思える。さっきまでのバカは死んだ方がいい。いや、本当に。

 冷える寝室を温める為に、エアコンのスイッチを入れる。自動で切れるようにタイマーもセットを忘れない。つけっぱなしにしていたら多分起きない。自然に目が覚めるとしたら昼を過ぎた頃になる。布団の中で自然と睡魔がいなくなるのを待つまで、囚われの身になってしまう事だろう。

 ベッドに入り考える。このまま寝て死んでしまえたら、幸せなのだろうか。




 瞼がゆっくりとだが開く。ぼんやりとした意識の中で、身を起こしベッドを出る。記憶が正しければ、今日は金曜日。会社に行かなければいけないし、華の金曜日という訳でもない。明日もまだ出社しなければいけない。

 洗顔と水を飲むささやかなルーティンを済ませ、リビングのテレビを点ける。間違いない、今日は金曜日だ。……行きたくない。行きたくないが、行かなきゃいけない。

 最近は見ていなかったコーナーがやっている。いつもよりも早く目が覚めたみたいだ。こんな朝に輝く笑顔を振りまくアナウンサーの女の子が可愛い。鹿野アナ天使、マジ推せる。ちょっとした幸せをふわふわする頭で噛み締める。

 少しばかりこうしていてもいいが、済ませられる事はさっさと済ませてしまおうと、キッチンへ向かう。動画サイトで見るような朝食は用意できないが、午前中を乗り切るぐらいのものなら何とか出来る。ごはんと納豆とみそ汁があれば人は生きていける……はずだ。

 キッチンへ向かって、そこで滑った。さっき洗顔を済ませた後に碌に拭きもせずに移動したのがまずかったのか。水滴に足を取られて、背中側に倒れる。ああ、天井だ。強い衝撃と痛みが僕を襲った。



 1



 瞼がゆっくりとだが開く。夢を見ていたようだが、碌な夢じゃなかった。ぼんやりとした意識の中で、身を起こしベッドを出る。記憶が正しければ、今日は金曜日。会社に行かなければいけないし、華の金曜日という訳でもない。明日もまだ出社しなければいけない。はあ。

 洗顔と水を飲むささやかなルーティンを済ませ、リビングのテレビを点ける。間違いない、今日は金曜日だ。……間違いないよな。行きたくないが、行かなきゃいけない。行きたくない。

 最近は見ていなかったコーナーがやっている。いつもよりも早く目が覚めたみたいだ。こんな朝に輝く笑顔を振りまくアナウンサーの女の子が可愛い。鹿野アナマジ天使、マジ推せる。ちょっとした幸せをふわふわする頭で噛み締める。

 少しばかりこうしていてもいいが、済ませられる事はさっさと済ませてしまおうと、キッチンへ向かう。動画サイトで見るような朝食は用意できないが、午前中を乗り切るぐらいのものなら何とか出来る。ごはんと納豆とみそ汁があれば人は生きていける……はずだ。

 キッチンへ向かって、そこで滑った。さっき洗顔を済ませた後に碌に拭きもせずに移動したのがまずかったのか。水滴に足を取られて、背中側に倒れる。ああ、天井だ。強い衝撃と痛みが僕を襲った。



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 目が覚めた。同じ夢を見た。はっきりとした夢だ。明晰夢というものがあるがそんなものじゃない。夢の中でも夢を見ていて、夢も夢の夢も同じ内容だった。しかも、どちらも頭を打って夢が途切れ、目を覚ましている。いや、まさか。まだそうと決まって訳ではない。世の中には奇跡というモノがある。それは人を蘇らせたり砂漠に森を生んだり海を割るようなものではないが、ラッキーだと思わせてくれるモノならある。これはそんな奇跡に過ぎない。夢の中で同じ内容の夢を見る、なんてことがあっても可笑しくない。ははは。

 そうと決まれば、やることは変わらない。眠気の去った意識でベッドを出る。金曜日なら会社があるし、明日も同じように憂鬱な気持ちになりながら部屋を出る。洗顔と水を飲むルーティンは欠かさず済ませ、リビングのテレビを点ける。夢で見たコーナーに女子アナの笑顔が映る。彼女の可愛さは現実でも変わらない。あんな苦痛が浄化されていくのを感じる。しばし彼女の余韻に浸る。好き。

 二度寝の心配はないだろうが、もしもの為に出来る事はしようと、キッチンへ向かった。ご飯と納豆とみそ汁と、画面の向こうの輝きよりも日常の安心を取る。今日は卵もつけようかと考えて、滑った。ああ、知ってる天井だ。



 3



 ベッドから跳ね起きる。草を超えて森だ。僕はモーゼと肩を並べる男のようだった。

 何故か分からないが、僕は同じ場面で同じように夢の中、いや実際に死んだ。そして、ベッドで目が覚める。……何の冗談か。このままいけば、僕は一生(いや数回死んでいるが)この家から出る事も朝ごはんを食べる事も出来ないのではないか。いや、前もその前も行動はほとんど変わりなかったが、考えている事には違いがあり、完全に一緒というわけではないのかもしれない。

 となれば、やることは簡単だ。先程の死因を回避すればいいだけだ。これまで死んだのは、洗顔した後にそのまま移動して、床を濡らしていた事が原因のはずだ。しっかりタオルで拭くか、そもそも洗顔をしなければいい。

 僕が選んだのは前者だった。洗顔をしないなんて考えられない。洗顔を終えタオルでしっかりとふき取る。

 テレビは点けても問題はない。関係はないし、彼女の顔が折角見られるのだから勿体ない。……と思ったら、洗顔に時間をかけすぎたのかコーナーは終わっていた。

 落ち込む気持ちを奮い立たせながら、朝食の準備に移る。ご飯は冷凍の作り置きをレンチンで済ませ、みそ汁はレトルトの物を使う。突破記念に卵も忘れない。いい朝だ。

 その後は何の問題もなく仕事に行く支度を済ませられた。第一、家の中で死ぬ事の方が少ない。いや、行動によってはそうでもないかもしれないが、僕の朝においてはほとんどない。

 意気揚々と家を空ける。アパートの三階に住む僕はいつも階段を使っている。六階建てのアパートにはエレベーターもあるが三階程度だし、軽い運動もかねてそれを使う事はほとんどない。だから、これもいつもとなんら変わらない行動だ。



 4



 そんな事を考えていた時期が僕にもありました。なんで結んだばかりの靴紐を踏んでいて、うまく踏み出せなくて階段から落ちてしまうのか。僕は馬鹿なのか? 馬鹿なんだな!?

 落ち着いて考えよう。もしかして、僕はこの先様々な危機を一つ一つ潰して生活しなければいけないのか? そんな危険な目に合うなら家から出なければいいのではないかと思うが、それが出来たら苦労しない。買い物したり運動したり、生活をするだけなら家で解決できる。でも生活するには収入は必要だ。僕には家にいるだけでお金を稼げるほどの能力はない。どうあがいても外に行かなければいけない。いや、家にいても死ぬことは立証済みだから意味ないか……。

 はあ。やるしかないのか。




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 会社にすら辿り着けないなんて。しかも交通事故が多すぎる。日本は安全な国じゃなかったのか? いや、外を移動するのを工夫すれば……。




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 会社はまだ良かった。二、三回しか危機はなかった。けど帰るのも一苦労なんて。出勤を考えれば当然かも知れない。行き帰りで僕も学習はする。どんどんリスクを減らしていけばいいだけだ。




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 死ぬことってこんなにもあっさりしたものだったのか。同じような生活を繰り返して何度目になるのかな。細かい事は違うけど、大まかな事は変わらない生活は退屈すぎる。いや、どんなに頑張っても死んでしまうならそれを逆手にとってもいいのか? 数日しか生活を送れないのならしたい事をすきなだけやればいいんじゃないか。死ねば戻れるんだ。僕は疑似的に不老不死になったと考えればいい。死ぬことなんて怖くないじゃないか。ほんの少し我慢すればいいだけなんだから。




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 ……楽しかったな。もうやりたいこともなくなってきた。もてるモノは全部使ったし、あの時は酷い無茶をしたものだ。それに犯罪は良くなかったな。いくら死ねば解決できるとはいえ、死ぬにも久しぶりに苦痛に悩まされた。すぐに死ねないのはこりごりだ。

 ベッドから起き上がる。これまでも何回も繰り返した行動をとっていく。




 427



 鏡に映る僕の顔は死んでいた。いや、生活は良かったから血色は良いし隈もない。

 それでも死んでいた。

 僕はなんのために生きているんだ?

 僕はどうしてこんな生活を送っているんだ?

 僕はいつから「死」を気にしなくなったんだ?

 僕はいつから変わってしまったんだ?

 僕はこの先幸せが待っているのか?

 僕は……。

 キッチンへ向かった僕は包丁を手に取る。あの時出来なかった行為を想像する。乾いた笑いが漏れた。


 これも夢だったらよかった。どうせ夢だ。夢から覚めないと……。




 ―――。


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