無軌道

著;ソルティ


 



 ひとの手は なにかを隠す ために在る 例えば私の こんな気持ち


 いつからか 私は「わたし」を 失へり 鏡の向こう もう映らない


 ゴロゴロゴロ 配達員か 雷鳴か ゆめかうつつか 秋のゆふぐれ


 きみにふる 全ての痛み 遮れる ような銀色 傘を渡しに


 蹴るのには おあつらえむきな 石ころを 跨いで歩いた あれが最後だ


 融けちゃった ミルクチョコレート 誰のせい 私のせいか、 そうか私か


 スポットライト バスの座席に ふる雪が わたしだけの 体温で溶ける


 信号の 〈赤〉が〈青〉へと 変わるたび 寝起きのバスは のそっと走る


 春に咲く 名をまだ持たぬ 一輪の 命名権は 君だけにある

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