第15話 しゃべれないからしょうがない

パチッと目を開けると、いつもの僕のベッドの天蓋が見える。

母が横でまだ寝ていた。そりゃあそうだよね、向こうでの時間は経過してないんだから。

全く、鉱山も見てみたかったのに、強制送還かよ。しょうがない、次に箱庭に入った時の楽しみにしよう。

鉱山を確認したら、調合関係を進めよう。初級の薬草だけじゃなくて、魔力草や毒草も調合して、僕がこっちにいる時の救急箱を作っておけば安心だろ。問題はどこに置くかと、どうやって隠しておくかだけど・・・

後で考えるか。

とりあえずウインドウを出して、リョクに収穫物の指示をして、鉱山はまだ我慢。

鉱石類がとれたらなにを作ろうかな。前世での僕はゲームで基本生産職だったんだ。MMORPGだと生産が主で、農場系のゲームもよくやってたからこの世界での箱庭はすごく楽しい。

そう言えばさっき作ったポーション、調合室の机の上に置きっぱなしだった。

あった、棚に仕舞っておけばよかった。

と、ポーションを見つめると、何故か手元にポーションが現れた。

グフォッ。

赤ちゃんの僕が持つには大きなポーション瓶が僕のお腹の上に落ちてきた。

大人なら10cmもないポーション瓶はたいしたことないだろうけど、僕には重すぎるし大きすぎる。

なんで、急に瓶が・・・


―マスターが潜在意識で自分で持つイメージをしてしまったので、手元に来てしまったんですよ。

最初に言いましたよね。箱庭の物を持ってくることができると。


まさか急に現れるとは思ってなかったよ。というか、箱庭から

出る時のみに、持って出ることができるんだと思ってた。


―マスターのスキルですので、それくらいはできます。


・・・認識の違いということで、今回は僕の手落ちだ。

でも、この僕の上に乗っかっているポーションは母にどう説明しようか。


―説明も何も、しゃべれませんよね。マスター


っぐ。どうごまかそうかってことだよ。


―可愛くしてれば何とかなるんじゃないですか。


まさか、そんな母はチョロくないだろ。しかし、方法がないか。兎も角、この瓶は横に置いておこう。

あれ?僕がこっちにいても箱庭の物を取り出せるなら、あの特定品種のイチゴとかも食べたい時に食べれるってことか。でも、まだこっちにあってもかぶりつけるわけじゃないから、歯が生えてからにするか。

やっぱり赤ちゃんの身体は不便だなぁ。

リョクにメッセージを送ったりしていると、隣の母がモゾモゾ動き始めた。


「んむ。ふぁぁぁ。」


おっと、母が起きてしまった。

ウインドウ画面を閉じて、母に何をされても良いように少し構える。


「イシュちゃんおはよ」


隣に寝転がっていた僕に頬へナチュラルにキスをした。

そして、その隣に転がっているポーションに気づくと、手に取り不思議そうに頭を傾げた。


「なんでこんなところに瓶が?ほんのりピンクの液体・・・ポーションにしては色がおかしいわね。何かしら?」

「あー」


ニコニコしながら、母にそれをちょうだいという動作をしてみたが危ないからダメだと言われてしまった。


「これはおもちゃじゃないのよ。ママが調べておくから、イシュちゃんにはこっちの音が鳴るボールをあげるわね」


どこから出したのか、母が転がすとリンリン鳴る柔らかいボールを僕にくれた。


仕方ない。ポーションはいつでも作れるからよしとしよう。母が常飲すればイチゴの香りの体臭になれるのだが、伝えられないので鑑定できる人に鑑定してもらってくれ。


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